頼れる戦士が帰って来た。この季節は名キッカーとして注視されるSOの田村優にも、こんなふうに歓迎される。「ラインブレイク(突破)もしてくれるし、ディフェンスも強い。ワークレート(仕事の質と量)を高く保ってプレーしてくれる。ずっと一緒にやって…

 頼れる戦士が帰って来た。この季節は名キッカーとして注視されるSOの田村優にも、こんなふうに歓迎される。

「ラインブレイク(突破)もしてくれるし、ディフェンスも強い。ワークレート(仕事の質と量)を高く保ってプレーしてくれる。ずっと一緒にやってきたから、やりやすい」

 6月25日、東京・味の素スタジアム。スコットランド代表との2連戦の最終戦に挑むラグビー日本代表にあって、仕留め役のWTBへ新たに入ったのはマレ・サウだった。

「チャレンジが楽しみ。コーチに求められている仕事をしていきたいです。また、いままでのジャパンのWTBが任されてきたように、(攻撃の)フィニッシュまで持って行くことも意識します」

 ニュージーランド人CTBとして、日本代表入りする2013年以前は、ルーツを持っていたサモアの代表候補にもなっていた28歳だ。身長183センチ、体重98キロの体躯で鋭い突破を繰り出す。今回は2014年に在籍したスーパーラグビー(国際リーグ)のレベルズで挑戦したWTBでの出場だ。

 マーク・ハメット ヘッドコーチ(HC)代行は、18日に13-26と敗れた第1戦を振り返り、こう語っていた。花形に黒子を任せるイメージか。

「先週は相手にキックを蹴られた時にカウンターアタックを仕掛ける際、(ボールの落下地点の周辺に)全員が揃いきれていなかったことでチャンスをものにできていなかった。ここで相手のチェイス(キックを追う動き)をするスペースを消しながら(落下地点へ)戻るなど、ボールから離れたところでの取り組みに期待しています」

 今季はスーパーラグビーのブルーズでプレー。「母国で、友人や親族の前でプレーできてよかった」。地元ニュージーランドはオークランドの名門クラブに加われたとあって、喜びに浸った。ジャパンからの招集オファーに対しては、家族との時間を確保したうえで受諾。このゲームの週から合流した。

「スコットランド代表は強いチームですが、先日のジャパンもいい戦いをしている。対戦相手にではなく、自分たちのパフォーマンスにフォーカスしたい」

 昨秋のワールドカップイングランド大会まで約3年間一緒にプレーしてきた田村だけでなく、今回初めてジャパン入りしたFBの松田力也にも「今週合流していただいたばかりなのに、コミュニケーションのレベルが高くてやりやすい」と驚かれていた。

「新しいメンバーも、過去に一緒だったメンバーもいる。久しぶりの日本代表での活動ができてうれしい。楽しみです」

 ワールドカップで唯一勝てなかったスコットランド代表との邂逅(かいこう)。くしくも対面に屹立するショーン・マイトランドは、10代の頃からの友人でもある。ここまでジャパンの一員として26のテストマッチに出場したサウは、「彼とは仲が良くて、対面するのは興味深い。(求められるのは)あくまで、自分が基本のプレーをすることです」と笑みをこぼす。左腕に桜のタトゥーを刻む男は、心身ともに充実の面持ちか。(文:向 風見也)