プロボクシング元3階級王者・八重樫東選手(35歳)は8月17日、東京・後楽園ホールで向井寛史選手(32歳)と進退をかけてノンタイトル戦を行います。試合まで1カ月を切り、競輪でG1レース優勝3度の後閑信一氏(48歳)と試合直前のコンディショ…

 プロボクシング元3階級王者・八重樫東選手(35歳)は8月17日、東京・後楽園ホールで向井寛史選手(32歳)と進退をかけてノンタイトル戦を行います。試合まで1カ月を切り、競輪でG1レース優勝3度の後閑信一氏(48歳)と試合直前のコンディショニングや独自の調整理論、ルーティーンについてたっぷり語ります。

 

「計量後に2000キロカロリーくらいあるカップやきそばを食べてみた(笑)」

 

後閑:8月の試合が近づいていますが、減量は大変じゃないですか。

八重樫:20年以上、減量と向き合っているので作業のようにやっています。メチャメチャきついと思ったことはないです。減量よりも、リカバリーの方が大変。試合前日に計量をパスした後、どう食べて、どう回復させるか。体と会話している時間が長いですね。

後閑:リカバリーはどうやるんですか。

八重樫:計量パスしたら、最初に水分を入れます。減量で3.5~4リットルくらい、体から「水抜き」しているので、ゆっくり戻します。一気にではなく、経口補水液200CCを10分おきに飲む。これを繰り返して、点滴もします。点滴は体に一番、水分の戻りが早いので。

後閑:最近よくあるプロテイン系は使わないんですか。

八重樫:やらないですね。エネルギージェルをたくさん入れても体の吸収が追いつかない。いろんなことを試しました。カロリーの高いものを摂取すれば良いかと思って、計量後に2000キロカロリーくらいあるカップやきそばをたくさん食べてみたり(笑)、ケーキをすごいたくさん買ってきてメチャクチャ食ってみたり。大失敗でしたけどね(笑)。

後閑:カロリーを摂取できれば、何を口にしてもいいんですか。

八重樫:やきそばとかケーキもエネルギーになるけど、体への吸収率が遅いんです。いま、リカバリー食のメーンはおかゆ。味付けを全くしない水から炊いた重湯(ごはんつぶがないおかゆ)ですね。最終的には吸収率、体の浸透率を考えて、そこに落ち着きました。トータルで、体に負担をかけず、ゆっくりなじませることができるのは、日本人はおかゆが一番。

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【対談】コンプレックスを強みに変えて強い者を倒す楽しさ 競輪・後閑信一×ボクシング・八重樫東(http://cocokara-next.com/athlete_celeb/akirayaegashi-shinichigokan-conversation-02/)

日本人選手が外国人選手のマネばかりしていると壊れる

後閑:すばらしい。「日本人は」という言葉が大好きなんですよ(笑)

八重樫:欧米人は肉をガンガン食べます。それをやる若い子もたくさんいる。井上尚弥(WBA世界バンタム級王者)は計量が終わって焼き肉を食べるんですけど、それでボクシングが強いからいいんです。

後閑:そこですよね。競輪にも外国人選手が短期登録で入ってきて、一緒に走ることが多くなったんですよ。世界チャンピオンもくるので、強いからマネをする子がいる。いいこともあるけど、故障もしてしまう。ある外国人選手に聞いたら、自分の国で稼ぐ1年分を日本では2カ月で稼げると言っていた。ちょっと無理してもいいわけです。対して、日本の競輪選手はある意味、365日オフがない。自分が外国人になった気でいると、ペースが崩れる。外国人選手が帰っちゃうと、燃え尽き症候群のように別人のようになる子もいる。日本人の良さをわかったうえで、外国人の良さを取り入れないといけないんですよね。

八重樫:外国人選手と同じくらいの体型、筋量ならいいけど、そうじゃないと、体のどこかに代償が出ちゃうんですね。情報社会なので、ネットでも外国人選手の減量方法がいっぱい出ているので、マネする人も出てくる。減量で落とす体重が12キロとか、簡単にできるように書いてある。科学的に証明されているんでしょうけど、プロにはメディカルチームがついていることが前提。それをマネしようとしても痛い目にあうだけです。

後閑:本当にそのとおり。かけ離れている日本人がやろうとするから故障する。

八重樫:最近ボクサーの体重オーバーが話題になっていますけど、準備段階が足りない。ネットの情報を信じて、最後の水抜きを1日半で5キロとか6キロとか無理にやろうとする。あれ、ネットには書いていたのに、体重が落ちないぞ、となる。物事を順序よくやってから「水抜き」をすると倒れない。失敗しながら自分のことを知って、自分の体と相談してやらないといけない。

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]

八重樫 東(やえがし・あきら)

1983年(昭58)2月25日、岩手県北上市生まれの35歳。拓殖大学在籍時に国体でライトフライ級優勝。卒業後、大橋ジムに入門。元WBA世界ミニマム級王者、元WBC世界フライ級王者、元IBF世界ライトフライ級王者と世界3階級制覇を成し遂げる。スーパーフライ級で日本人初の4階級制覇を目指す。プロ通算32戦26勝(14KO)6敗。162センチ。右のボクサーファイター。

後閑 信一(ごかん・しんいち)

1970年(昭45)5月2日、群馬県前橋市生まれの48歳。前橋育英高校卒業後、65期生として日本競輪学校に入学。在校成績5位で卒業。90年4月に小倉でデビュー。96年G2共同通信社杯(名古屋)でビッグレース初V。GⅠ優勝は05年競輪祭(小倉)、06年寛仁親王牌(前橋)、13年オールスター(京王閣)。通算2158戦551勝。愛称は「ボス」。獲得賞金12億6420万4933円。176センチ、93キロ。