6月25日、東京・味の素スタジアムでスコットランド代表とのテストマッチ(国際間の真剣勝負)をおこなうラグビー日本代表は、都内で調整中。メンバー発表を23日に控え、注目されるのがグラウンド最後尾にあたるFBの人選だ。 18日、愛知・豊田スタ…

 6月25日、東京・味の素スタジアムでスコットランド代表とのテストマッチ(国際間の真剣勝負)をおこなうラグビー日本代表は、都内で調整中。メンバー発表を23日に控え、注目されるのがグラウンド最後尾にあたるFBの人選だ。

 18日、愛知・豊田スタジアムでは松島幸太朗が先発した。もっとも13-26で敗れたこの日、痛めていた左足太ももをさらに悪化させた。味方防御のカバーに駆けだした際に痛みを覚え、「嫌な予感。肉離れなどの大きな怪我につながるかもしれない」と本人。前半15分に退いた。

 20日以降、都内での練習にはほぼ不参加。「痛みは引いていて、あとは違和感との戦いです。ただ、無理はできない」と現状を明かしていた。

 身長178センチ、体重87キロの23歳。3勝を挙げた昨秋のワールドカップイングランド大会ではタッチライン際のWTBとして躍動も、「FBが一番、自分の持ち味を出せる」。過去4年間のジャパンで正FBだった五郎丸歩が故障したことなどから、念願のチャンスをつかんでいた。

「万全な人が出たほうが…。(悪いコンディションで試合に出て)チームに迷惑をかけたくない。落ち込んだりはしていないですけど、怪我をして一番イライラしているのは自分です。大事な時に怪我をしてしまって悔しいというのは、ありますね」

 複雑な心境を明かすが、負けじ魂は消さない。

「(本当は試合に)出たいです。とりあえずいまは治療を優先することです。(出場が叶ったら)キックの処理については100パーセントに近い数字を出したいです」

 かたや、18日の試合途中から松島に代わってFBを務めたのは松田力也だ。大学選手権7連覇中の帝京大で副将を務める身長180センチ、体重90キロの万能型である。現地時間11日にバンクーバー・BCプレイススタジアムであったカナダ代表戦(○26-22)に続き、2度目のテストマッチに挑むこととなった。

 前半37分には自陣ゴール前でインターセプトを狙ったプレーを「悪質な落球」と認定され、一時退場処分を食らった。「反省しなくてはいけない」。それでも持ち味である「強気のラン」で、ワールドカップ8強のスコットランド代表を何度も苦しめた。守備網の間隙をえぐった。

 相手と大きなキックを蹴り合う際に一転、弾道をゴロに切り返るなど、冷静な状況判断も覗かせた。「周りは、見えていたと思います」とし、次戦での先発も見据える。

「全然、落ち着いてはいなくて、まだまだ緊張している部分はありましたが、カナダ代表戦に比べたらいい状態で試合に臨めている」
 
 折り目の正しい口調で、こう言い切った。

「自分自身は納得していないですけど、周りに落ち着いていると評価してもらえたのはすごくいいことだと思うので、次はもっとさらに余裕があるなと言ってもらえるように、いいプレーをしていきたいです」

 万全の復帰を虎視眈々と目指す松島と、新たな世界に足を踏み入れた松田。桜の「15」を着るのはどちらか。(文:向 風見也)