フェルナンド・トーレスは、J1サガン鳥栖に入って活躍できるのか? 7月18日、鳥栖は湘南ベルマーレとの試合を戦っている。トーレスは登録の関係上、この日はプレーしていない。練習に合流してまだたったの2日。最後にボールを触ったのは5月だっ…
フェルナンド・トーレスは、J1サガン鳥栖に入って活躍できるのか?
7月18日、鳥栖は湘南ベルマーレとの試合を戦っている。トーレスは登録の関係上、この日はプレーしていない。練習に合流してまだたったの2日。最後にボールを触ったのは5月だっただけに、ゲームでプレーするコンディションでもなかった。
アトレティコ・マドリード、リバプール、チェルシーなどでゴールを量産してきたフェルナンド・トーレス
はたして、鳥栖は”大物”トーレスをどのように受け入れるのだろうか。直近の一戦は検証に値した。
BMWスタジアム平塚。鳥栖の立ち上がりは重かった。ロシアW杯による再開後、初のゲームということはあったし、記録的な猛暑と湿度のせいもあったか。湘南が捨て身とも思えるほどのハイプレスを仕掛けてきたことで、押し込まれたのもあるだろう。48分には、バックラインの裏に走り込まれ、クロスを合わされ、あっけなく失点を喫している。
しかし、0-1になって湘南がラインを下げたことで、鳥栖は息を吹き返した。
鳥栖のマッシモ・フィッカデンティ監督は4-3-1-2という変則システムを用いているが、3年目でその練度は高い。右インナーの福田晃斗がスペースに走り込むことで、マークが外れ出し、アンカーの高橋秀人が大きく早い展開を見せられるようになり、右サイドバックの小林祐三がじわじわと攻め上がる。また、チーム内で最も高い技術を持つ小野裕二が存在感を出すようになった。
そして81分、左サイドの吉田豊のクロスを相手ディフェンダーがクリアしきれず、オウンゴール。鳥栖は1-1に追いつき、そのまま引き分けた。
「前半は予想どおり、両チームがハイプレスを掛け合い、ロングボールの奪い合いになった。後半は全体としてはよかったと思う。失点後は湘南が高いラインを保てず、つなげなくなったことで押し込んだ。得点するのが遅く、逆転する力は残っていなかったが……」
フィッカデンティは試合後にそう語っているが、どのようにトーレスを用いるつもりなのか?
「FWはケガ人が目立つが、優れた選手は多い。ただ、なかでもトーレスは高いレベルでプレーしてきたし、ありとあらゆるタイトルを取っている。それだけに、戦術的にも変化があるだろう」
指揮官は明言を避けつつも、トーレスが新たな戦術軸になることを示唆した。少なくとも、トーレスを今の戦術でがんじがらめにすることはないだろう。もしそれをやろうとしたら、トーレスは宝の持ち腐れになる。
この酷暑で、トーレスに守備の負担を負わせるのは得策ではない。2トップの一角にはとにかく走れて、潰れることができる選手を用いるべきだろう。トップ下は、現メンバーなら決定的パスを出せる小野が当確か。アンカーの高橋から出るカウンターを可能にするロングボールの質も、トーレスのプレーを左右するかも知れない。いずれにせよ、「トーレス・シフト」を敷かざるを得ないだろう。
「体とかはバキバキで、見たことないです。さすがプレミアリーグとかでやってきた選手なんだなぁって」
Jリーグで数々の選手とプレーしてきた小林は、そう感嘆している。
「まだゲーム形式はやっていないのでわかりませんが、ショートダッシュとかでも初速がすごい。それに、基本的な練習からとにかく手を抜きません。リフティングとかは意外にうまくないんですが、ストライカーってそういうモノなんでしょうね。今日みたいな試合だったら、1点獲って決着つけてくれるのかもしれません」
論理的にいえば、トーレス加入はプラス要素しかないだろう。「熟練したゴールゲッターがいない」。それが今シーズン、鳥栖の不振の原因にもなっていたからだ。
鳥栖は現在18チーム中17位と、J2降格圏内に沈んでいる。トーレス入団で沸き返ってはいるものの、実はデリケートなチーム状況ともいえる。インパクトが大きく、大幅な戦術変更も余儀なくされるだけに、博打的な部分もある。
しかし、リスクを補ってあまりある期待感があるのも間違いない。
「これほどのレベルの選手がJリーグに来ることはなかなかないですから」
鳥栖の選手たちがそう口を揃えるように、この機会にチーム力をアップさせるしかないだろう。
「トーレスは、経験もパーソナリティもある選手。チームも彼を必要としている。これから数日間のトレーニングで、コンディションを見ながら、(7月22日のベガルタ仙台戦に向けて)どう使うかを決めたい」
フィッカデンティ監督はそう話し、次節のメンバー18人に入れることだけは明言している。