全17戦のインディカーシリーズの第12戦がカナダのトロントで開催され、ポイントリーダーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が、予選2位から完璧なレースで優勝。これで今シーズン3勝目となった。インディカーシリーズで今シ…
全17戦のインディカーシリーズの第12戦がカナダのトロントで開催され、ポイントリーダーのスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)が、予選2位から完璧なレースで優勝。これで今シーズン3勝目となった。
インディカーシリーズで今シーズン3勝目を挙げたスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)
最終戦がダブルポイントになるという、いかにもアメリカなルールがあるため、現在のランキング3、4番手どころか、もっと下位のドライバーたちまで、逆転タイトルのチャンスは残されている。しかし、ここまでの12戦の各ドライバー及びチームの戦いぶりを見ると、ディクソンがキャリア5度目の王座に就くチャンスはかなり大きくなったといえそうだ。
ディクソンを止められるライバルの筆頭は、昨年度チャンピオンのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)だろう。残り5レースで、ディクソンとのポイント差は62点。優勝すれば50点なので、2レースで逆転は可能だ。
ディクソンより先にシーズン3勝目をマークしているニューガーデンは、ポールポジション獲得数が誰よりも多い4回。ドライバーとしての完成度は昨年より明らかに高くなっている。シーズン終盤の残り5戦は、彼とディクソンがチャンピオン争いの一騎打ちを行なうのではないだろうか。
トロントでのニューガーデンは、突然の雨に見舞われた予選で判断力と洞察力の高さを発揮。思い切りのよさも加わって、見事なポールポジション獲得を果たした。ところが、レースでは”らしくない”ミスを犯す。スタートではトップを守ったが、フルコースコーション明けのリスタートで壁にヒットし、優勝のチャンスを失ったのだ。
スタートから、ディクソンがその背後にピタリとつけ、プレッシャーをかけ続けたのが効いたようだ。ニューガーデンはリスタートでパスされるのを嫌い、少々焦り気味にアクセルオン。走行ラインがわずかにワイドになってタイヤ滓(かす)を拾い、コントロールを失った。
ただし、これでタイトル争いからも脱落……とはならないのがニューガーデンのしぶとさであり、幸運なところだ。かなりの痛手を負ってもおかしくないミスを犯したというのに、サスペンションへのダメージは小さく、粘り強くゴール。ライバル勢のミスもあって9位をキープすることができた。
残されたレースは、テクニカルなロードコースのミッド・オハイオ、スーパースピードウェイのポコノ、ショートオーバルのゲートウェイ、復活開催となったフラットで高速のロードコース、ポートランド、そして最終戦はアップ&ダウンが激しいロードコースのソノマとなる。
若いニューガーデンとしては、昨年のようにシーズン終盤戦に複数の優勝を飾り、大逆転を実現したいところ。対するディクソンは、優勝を狙いながらも、勝てないレースでもクレバーに戦って確実に上位フィニッシュし、ポイントを伸ばす戦いを見せるだろう。ダブルポイントの最終戦ソノマは、ディクソンも得意(過去3勝)だが、ニューガーデンを走らせるチーム・ペンスキーも毎年のように強い。昨年のウィナーはシモン・パジェノーで、ニューガーデンは2位だった。
ランキング3番手、4番手につけるアンドレッティ・オートスポートのアレクサンダー・ロッシとライアン・ハンター-レイは、ロードコースのミッド・オハイオやポートランド、ソノマで優勝争いに絡んできそうだ。
また、ランキング5番手につけている今年のインディ500とインディカーGPウィナーのウィル・パワー(チーム・ペンスキー)には、特にポコノで3勝目の可能性がある。さらに、アイオワで優勝したジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)は、ゲートウェイで速いだろう。
その他、ここ数戦は不振が続いているものの、開幕戦で勝っているセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン・レーシング・ウィズ・ヴァッサー・サリヴァン)、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨とグレアム・レイホール、ルーキーながらトップ3フィニッシュを3回記録しているロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)らが上位を狙う。今シーズン未勝利のパジェノーも、初勝利をモチベーションに全力を投入してくるだろう。
さまざまな思惑が入り乱れるなかで、ポイントバトルを制するのはディクソンか、ニューガーデンか。あるいは2人以外からチャンピオンは生まれるのか。
どのドライバー、チームも、今年から採用されたユニバーサル・エアロキットに対する理解度を深めており、シーズン後半戦に入ってからのレースはどれも驚くべき激戦になっている。トロントを戦い終えたチームは、休む間もなくミッド・オハイオ、あるいはゲートウェイへとテストに向かった。あと2カ月、熱戦は続く。
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