「試合が終わった後でも、気持ちがとても高ぶっていたよ。僕にとって長い15ヶ月だったから」。準決勝で王者ラファエル・ナダル(スペイン)を破ったノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、ケガを乗り越えるための長く険しい道を振り返った。「ウィンブルドン…

「試合が終わった後でも、気持ちがとても高ぶっていたよ。僕にとって長い15ヶ月だったから」。準決勝で王者ラファエル・ナダル(スペイン)を破ったノバク・ジョコビッチ(セルビア)は、ケガを乗り越えるための長く険しい道を振り返った。

「ウィンブルドン」(イギリス・ロンドン/7月2~15日/芝コート)男子シングルス準決勝は、ファン待望のBIG4対決。期待通りの激しい、そして素晴らしいプレーの連続だった試合は、ジョコビッチが6-4、3-6、7-6(9)、3-6、10-8でわずかに上回り、自身3年ぶりの同大会決勝進出を決めた。

ジョコビッチはこのステージに戻ってくるまでに、数々の困難や苦悩を経験してきたのだろう。それらを不断の努力で乗り越えてきたことが、試合後のコメントからも伝わってくる。

「自信をなくしたり、フラストレーションを感じたり、落胆したりした瞬間があった。このやり方を続けるべきか、それともあっちのやり方で行くべきか、そのやり方で行ったらどうなるのかと、自問していた」「そういう思考プロセスを辿ることは、誰にでもある。常にポジティブで、常に100%自分を信じて、自信満々の人間なんかいないだろう。これが人生だ。僕らは人間だから、そういう時もある」と語った。

「今になってみれば、困難や障害を乗り越えてグランドスラムの決勝にたどり着いたからこそ、僕にとっては余計に素晴らしくて特別なことだ」とジョコビッチは言う。「このレベルまで戻って来られると本当に信じていたかという質問に関しては、答えはイエスだ。テニスをやっていながら、自分がトップになれると信じないなんてことは、僕にはむずかしい。トーナメントに出場する時はいつも優勝を目指しているから、幸いテニス人生でとてもたくさんのことを達成できた」

一方、ジョコビッチはナダルについて「彼は多分、テニス史上最高のファイターだろう。どのポイントも、まるでそれが最後のポイントみたいに戦う。それがラファのすごいところだ。だからどんなサーフェスでも彼に勝つのはむずかしい」と話した。「彼と対戦する時は、ポイントをもぎ取らなければと分かっていて、それだけですでにエネルギーを消耗している。だから当然、準備を整えておく必要がある。だから練習コートで何時間も準備をし、プロとしてできるだけのことをするんだ。ラファみたいな選手と対戦しなきゃならないから」

ナダルの素晴らしさを振り返ったシーンの一つが、第5セット8-7で迎えたジョコビッチのリターンゲーム。

ジョコビッチは30-40と1度マッチポイントを握ったが、ナダルの見事なドロップショットで凌がれた。そのポイントについてジョコビッチは「まるで時間が止まったみたいな瞬間だった。マッチポイントで、彼が来るのが見えて、僕は割といいショットを打った。ドロップショットにすべきかそれともバックハンドを打つべきか、彼は一瞬のうちに決断した。彼がグリップを変えるのを見た時、僕は走りだしたんだけど、あのドロップショットはすごすぎた」と芸術的とも言えるナダルのショットを振り返った。

続けて「それでも僕は拾おうとした。映画『スペース・ジャム』でマイケル・ジョーダンが手を伸ばした時みたいに。あの時の自分を例えようとすると、『スペース・ジャム』が思い浮かぶよ」と話した。

「試合が終わった後でも、気持ちがとても高ぶっていたよ。いろんな障害を乗り越えようともがいた、僕にとって長い15ヶ月だったから」とジョコビッチは言う。「だから今ここにいられて、とても満足している」

ファンが待ち望んでいた強いジョコビッチが帰ってきた。グランドスラム、しかも"芝の聖地"という最高の舞台で復帰後初優勝を飾り、完全復活をさらに印象づけられるか。そしてジョコビッチ恒例の"芝を食べる"シーンは見られるか。決勝も注目だ。(テニスデイリー編集部)

※写真はナダルを破り決勝進出を決めたジョコビッチ

(Photo by TPN/Getty Images)