「星稜(石川)の1年生ショートがすごい!」という話は、今年の春から聞いていた。いや、正確に言えば、昨年の今頃から「星…
「星稜(石川)の1年生ショートがすごい!」という話は、今年の春から聞いていた。いや、正確に言えば、昨年の今頃から「星稜中の内山壮真(そうま)はモノが違う」と、何人もの野球通から伝え聞いていた。
入学してすぐにショートのレギュラーを獲得したという内山は、身長172cm、体重72kgの右投右打の内野手。頭のなかで勝手に描いていたイメージは、野球上手の俊足・好守でミートのうまいセンス抜群の選手。タイプとしては1、2番……。高校卒業後は大学、社会人に進み、いずれはアマチュア球界の指導者やリーダーになっていくのかなぁ……と、ざっとこんな感じだった。

中学時代もU15侍ジャパンのメンバーとして活躍した星稜の1年生・内山壮真
ところが、6月の北信越大会で初めて彼のプレーを見て、ひっくり返るぐらい驚いた。
内山のバッティングを見て、まず頭のなかに浮かんだ選手が中田翔(日本ハム)だった。
ポイントを前に置き、コツコツとミートして……そんなこちらの勝手な想定は、見事に吹っ飛ばされた。
バッターボックスの一番うしろ(捕手寄り)に立って、最初から軸足(右足)に全体重を乗せて投球を待つ。耳の高さに掲げたグリップは、左足を踏み込んでいってもピクリとも動かず、上半身と下半身の”割れ”をこんなに大胆につくれる高校生など、3年生でもそういるものではない。体の強さ、スイングスピードによほどの自信を持っているのだろう。
そのままやや軸足に体重を置き、豪快に振り抜くと、打球は雄大な放物線を描いてレフトポール際上空をはるかに越える大ファウル。そしてその次の球を、今度はコンパクトに振り抜き、ライナーでレフトポール際のフェンスを直撃した。
「やっぱり、中田翔だ」
翌日の試合(対高岡商)での打席には、もっとうならされた。
この試合、内山は結果的にほとんどスイングさせてもらえなかった。前日の打ちっぷりを目の当たりにしたからだろう。高岡商バッテリーは芯を外そうとストライクからボールになる変化球で攻めてきた。バッテリーの狙いをあざ笑うかのように、内山は平然と見送った。
これだけ打てるバッターなら、スイングしたいに決まっている。まして上級生を差し置いてレギュラーとして試合に出ている1年生。その上、3番という大役も担っている。「打ちたい! 打たなきゃ!」と気負い、ついつい誘い球に引っかかってもおかしくないのに、この泰然自若とした態度はなんなんだ。
いつの間にか四球が4つ続いて、あの松井秀喜の3年夏の甲子園での5敬遠を思い出してしまった。ある意味、敬遠以上に価値のある4四球だと思った。しっかり見極め、もぎ取った”出塁”である。
四球が4つ続いたあとの5打席目。ようやく打てそうな球が来ると、ひと振りで仕留め、左中間の一番深いところにフェンス直撃なのだから頭が下がる。
バッティングが一流なのはわかった。あとは守備だ。”遊撃手”というポジションを守っている以上、守備でも魅せないと”本物”とはいえない。
高岡商戦では強烈な打球をさばき、体勢が崩れながらも一塁へ矢のような送球でアウトにすると、その直後、今度は緩いゴロに猛然とダッシュしてきて、イレギュラーするもサッと反応して一塁で刺せるフィールディングのバリエーション。
決勝の佐久長聖(長野)戦では、カットプレーでこんなシーンがあった。左中間を破られ、最深部のフェンスに届いた打球を追いかけていったセンターのすぐ近くまで距離を詰めた内山は、ボールを受けるとそのまま体を切り返し三塁へ。ボールはワンバウンドのストライク送球となった。
ボールを受けてから送球するまでのスピードと精度の高さ。肩の強さはもちろん、体のバランス、鋭敏な野球勘……すべてがパーフェクトだった。
かれこれ50年近く高校野球を見ているが、このサイズの遊撃手で彼ほどのスケールの大きさと迫力を感じさせる選手はほかにいただろうか……。いくら振り返っても、内山のような選手は見当たらない。
明豊高(大分)1年の今宮健太(ソフトバンク)を初めて見たときも、プレーのスピードと瞬発力に驚愕したが、バッティングに関しては内山ほど圧倒的な迫力はなかった。
もしかしたら、高校野球で内山のようなタイプの遊撃手は初めてかもしれない。そんなことを考えていると、「アッ!」とひとりの選手の顔が浮かんできた。
メジャーでプレーするホセ・アルトゥーベ(アストロズ)だ。170センチに満たない身長ながら、一昨年、昨年と24本塁打を放ったメジャー屈指の”ハードパンチャー”。守れて、走れて、ちょっとでも甘く入れば軽々とフェンスの向こうまで飛ばしてみせる。こんな痛快な選手は、メジャーでもそういるものではない。
この先、どんなプレーヤーになるのかを想像するだけでもワクワクする。甲子園100回大会の夏、どんでもない選手が現れたことだけは間違いない。