13点差を追う後半25分。 自陣中盤右で、日本代表のCTB立川理道副将がスコットランド代表のパスをさらう。敵陣まで進む。 いったんFL金正奎に球を託し、タッチライン際を駆け上がる。 FL金は独走し、CTB立川副将へ折り返す。 球は…。 白…

 13点差を追う後半25分。

 自陣中盤右で、日本代表のCTB立川理道副将がスコットランド代表のパスをさらう。敵陣まで進む。

 いったんFL金正奎に球を託し、タッチライン際を駆け上がる。

 FL金は独走し、CTB立川副将へ折り返す。

 球は…。

 白線の向こうへ飛んで行った。

 金はただただ後悔する。

「後ろから追いかける選手が見えて放ろうと…。立川さんと観ている画が違って、申し訳ない」

 この日のジャパンには、欧州6強の一角を迎えるにはややリスキーな要素が重なっていた。全先発中4名は5日前に合流で、参加見合わせ組も続出していた。それでもいざ開戦すれば、走り合い、ぶつかり合いでジャパンは見劣りしない。昨秋のワールドカップイングランド大会、スーパーラグビーなど海外リーグを経験した面子は、巨躯とのコンテストに免疫がついていた。

 PR稲垣啓太いわく、「ボール保持者にも、タックルにも、密集で相手をはがすのにも2メートルゲインを、と」。スーパーラグビーのサンウルブズや現ジャパンで指揮を執るマーク・ハメットの合言葉を遂行するなか、国際試合への耐性を高めた。

 前半30分過ぎには、2人の一時退場者を出した。この時間帯に10-23とされたことが最終結果を下支えするが、CTB立川副将は「13人であれだけ戦えたのは自信になる」。献身的なカバーは貫かれた。

 ずっと国内でプレーした「非ワールドカップ組」のFL金も魅せる。

 3点差を追う前半8分、ハーフ線付近で自身のタックルなどを受け孤立したランナーの懐へ突っ込む。低い前傾姿勢で球に絡む。両軍FW陣にあって最も小さな身長177センチのFL金が、「2人目(相手の援護役)との競争に勝った。自分の強みが活かせた」のだ。

 以後、相手がボールを離さないことでペナルティキックをもらい、SH茂野海人が電光石火の速攻を仕掛ける。HO堀江翔太主将のトライなどで7-3とした。

 スコットランド代表は、「チャンスで反省すべき点があった」とSHグレイグ・レイドロー主将。蒸し暑い芝の上で落球や反則が続いた。「いいコンディションで臨めた」とSHレイドロー主将は言い切るが、ヴァーン・コッター ヘッドコーチは「まだ時差ボケがある」と認める。

 天の配剤もあっただけに、健闘した側が負けて悔しいのは自然である。

 ジャパンも、攻め込んでのミスに泣いた。

 特にラインアウトではしばし競られ、LO小瀧尚弘は「リフトとジャンプのスピードを意識しないと…」と反省するほかない。

 突破役として再三魅せたNO8アマナキ・レレイ・マフィが激しいマークにさらされた際も、スタンドからため息が漏れた。

「プレッシャーがかかるなかでも、確実なプレーをしないと。きょう何が悪かったのかを考え、修正したい」とHO堀江主将は語る。急造チームに与えられた時間は多くない。選手とコーチの適正なレビュー、効果的な時間管理が問われそうだ。(文:向 風見也)