7月6日に新横浜スケートセンターで開催された『ドリーム・オン・アイス2018』。躍動感のある滑りを見せたのは、第2部のトリで登場した18歳の坂本花織だった。「アイスショーの後半の部で滑ることはこれまでなかったですし、しかもトリだったの…
7月6日に新横浜スケートセンターで開催された『ドリーム・オン・アイス2018』。躍動感のある滑りを見せたのは、第2部のトリで登場した18歳の坂本花織だった。
「アイスショーの後半の部で滑ることはこれまでなかったですし、しかもトリだったのですごく緊張しましたけど、今日は上出来でした」
笑顔でこう話す坂本が演じたのは、新フリープログラムの『ザ・ピアノ』。振り付けは、昨季のフリーの『アメリ』と同じブノワ・リショーで、曲は「いつものようにお任せでした」。
ショーのトリを務めた坂本花織
冒頭は、「絶対に決めたいので最初に持ってきた」という3回転フリップ+3回転トーループを若干の不安定さを見せながらも決めると、その後、ダブルアクセルと3回転ルッツをしっかり跳んだ。
また、「ここが私の稼ぎどころなので得点が高くなる後半に入れました」というダブルアクセル+3回転トーループ+2回転トーループもきれいに成功。『ファンタジー・オン・アイス』神戸公演ではジャンプが不安定で、転倒をしていたのがウソのような上々の出来だった。
「曲が去年に比べて大人っぽくなったし、もう18歳なので心も表現も大人っぽくなれたらいいなと。最初は柔らかい感じですが、最後はすごく力強い演技になってくるので、そこが見どころと思います。ルールが変わったので、ジャンプのあとのトランジションが大事と言われて、やったことのない振り付けをして大変だったけど、だいぶ慣れてきました。去年の振り付けは氷の上だけだったけど、今年はオフアイスでも時間をかけてやってきたので、しっかりやらないとブノワさんに怒られてしまうと思っています」
こう話す坂本の滑りは、大きさと力強さの中にもしなやかさがあるダイナミックなものだった。昨季、五輪まで駆け上がった自信がその演技に表われている。
「去年の国際大会での表彰台はスケートアメリカだけでしたけど、今年はグランプリ(GP)シリーズで2戦とも表彰台に上がればGPファイナルも世界選手権も見えてくると思う。まずはGPシリーズをしっかり戦いたいと思います」
昨季の『アメリ』とはテイストの違うプログラムだが、彼女のダイナミックな滑りを今季も楽しめそうだ。
第2部2番手で登場した18歳の三原舞依は、新ショートプログラム(SP)の『イッツ・マジック』を披露した。昨季はタンゴに挑戦したが、今季は彼女の持ち味である滑らかさを生かせるプログラム。昨季フリーの『ガブリエルのオーボエ』と同じデヴィット・ウイルソンの振り付けだ。
今季、世界選手権出場を目指す三原
後半のジャンプにミスは出たが、前半の3回転ルッツ+3回転トーループとダブルアクセルは伸びのある滑りできれいに決めた。また、終盤のステップシークエンスでは、曲のテンポを生かしながら大きさとメリハリを感じさせる滑りを披露した。
「曲を聴いた時、ヨーロッパの上品な女性のイメージが浮かんだので、それを表現したいなと思います。この曲はデヴィットさんがずっと温めていた曲で、ピタリとあう人を探していたそうです。私の雰囲気や仕種を見て選んだと言われたので、それに応えてしっかり表現したいと思います」
三原には、「少し考え過ぎてしまった」という昨季の反省があるという。だから今季は、「スケートができる喜びを感じながらノビノビ滑りたい」と言う。ルール変更に対しても「私のジャンプは高さだけでなく流れもある。中野園子先生にも全体を通して力まないジャンプを褒められるので、それを生かしていきたい」と決意している。
目標は世界選手権出場。「昨季の悔しさを晴らすためにも、ひとつひとつをしっかりやっていきたい」と穏やかな表情で話した。
新しいSP『月の光』を披露した15歳の紀平梨花は、前半のジャンプのミスが目立つ滑りになってしまった。曲調はスローで、本人は「もっと柔らかな表現ができたら」と臨んでいて、それは『ファンタジー・オン・アイス』でも滑っていた『ラビアン・ローズ』のしなやかで繊細な滑りにつながるもの。この日はジャンプの失敗もあって、しなやかさを出せない滑りになったが、「もっと滑り込んでいけば」という期待も膨らむプログラムだった。
今季からシニアに参戦する紀平
また、男子では、20歳の友野一希がミーシャ・ジー振り付けの『ニュー・シネマ・パラダイス』を大きな滑りで演じて、長野で開催された『ヒーローズ&フューチャー2018』での『ワン・モア・タイム』とはまた違う方向の滑りを披露した。
「このプログラムでは、これまでのフレッシュさとは違う心のこもった表現をしていきたい」
こう話す友野の滑りは、本人が「メリハリの付け方を特に重点的に」と言うように、しっかりメリハリをつけつつ、力強さを感じるものだった。今回は新プログラムの初披露で少し荒さはあったが、昨季の世界選手権の公式練習で見せていた体や手、指先のしなやかさなどが加わってくれば、洗練されたプログラムになってくるはずだ。
「今季はしっかり代表権を自分で勝ち取って、世界選手権に出たい」と宣言した友野も、新シーズンで楽しみな存在になってきた。