全米オープン3日目が終わった。とはいえ、予選通過した全選手が第3ラウンドを終了できたわけではないが、初日は暫定首位、現時点では暫定2位に付けているアンドリュー・ランドリーに興味を覚えずにはいられない。

下部ツアーを経て、今年から米ツアーに出始めた米国人選手だが、今のところは予選通過と予選落ちが半々ぐらいの割合で、世界ランキングは624位だ。全米オープンは初出場。テネシー州の地区予選でわずか10人の出場枠を手に入れ、自力出場を果たした。

そんな無名の新人が史上最難関と言われるオークモントでいきなり首位に浮上し、「すぐに崩れて後退するさ」なんて陰口を米メディアから叩かれながら、サスペンデッドの繰り返しで大荒れになったこの3日間、ずっとリーダーボードの上段に名前を載せ続けているところが、なんとも素晴らしい。

アーカンソー大学時代はオールアメリカンに選ばれるなどして活躍していたが、プロ転向後はミニツアーやウェブドットコムツアーで7年もの下積み生活を経験してきた。

巷で「売れないプロ」「食えないプロ」と呼ばれるランドリーが、いまなお崩れず、上位を保てている秘訣の1つは、たとえ下位のプロであっても、周囲のスーパースターたちに流されたり影響されたりすることなく、自分らしさやスタイルをしっかり保っていることであろう。

雷雨中断による待ち時間。「携帯はずっと切っていた」。メンタル面が揺れ動くことがないよう、余計な情報をシャットアウトして平常心の維持を心がけた。スマホもタブレットもシャットオフ。そんな中で何をして過ごしていたのかと問われると「ちょっと洗濯して、あとは寝ていた」。

洗濯でも掃除でも買い出しでも、何から何まで自分自身で行なうのは、下積みが長かった米ツアー選手にとっては当たり前。そのぶん日常生活や健康維持のための細かいことにも気を配り「冷たいビールは飲まない」といったこだわりもある。貧しい時代も長く、倹約にも努める。

しかし、だからと言って卑屈になることは決してなく、プロとしてのプライドはびっくりするほど高い。世界ランキン624位の下位選手がいきなり全米オープンのリーダーボードの上位につけても、それを「まぐれです」などとは決して言わず、「僕にとって、とても快適な位置。そうあるべきです」と胸を張り、笑顔を見せていた。

初出場の選手には、初出場だからこそのアドバンテージがある。最大のアドバンテージは、この場で戦えていることが「うれしくてたまらない」という気持ちと笑顔だ。日本勢で決勝進出を果たした宮里優作、谷原秀人はどちらも初出場だが、どちらにもそんな前向きな気持ちと明るい笑顔が見て取れる。

第3ラウンドを終え、暫定21位タイと健闘している宮里は「このオークモントで回れるのがうれしい」。

聞けば、これまで全米オープンをテレビ観戦してきた中で、「寝ないでちゃんと全部見ることができた最初の全米オープンが2007年のオークモントだったんです」。全部覚えているオークモントは、だから特別。そのオークモントで今はアンヘル・カブレラではなく自分が戦っている。それが宮里のモチベーションになっている。

谷原は米ツアー参戦経験もあるベテランだが、「史上最難関のこのコースでやれれば、もうあとは恐いものないじゃないですか!」。その思いが谷原のモチベーションになっている。

「前進、前進。前へ進めーって感じです」

初出場者たちだからこその新鮮で前向きなパワーを糧に、悔いのない最終日をプレーしてほしい。

文・写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)