ベルギー戦に敗れた直後のミックスゾーンに、香川真司は、穏やかな清々しい表情で現れた。試合終了直後のピッチでは涙を見…
ベルギー戦に敗れた直後のミックスゾーンに、香川真司は、穏やかな清々しい表情で現れた。試合終了直後のピッチでは涙を見せていたが、「報道陣の前なので(泣かない)」と冗談めかした。だいぶ落ち着いたのだろう。香川の見た目は、嘘をつかない。

ベルギー戦のタイムアップと同時にピッチに座り込んだ香川真司
香川は淡々と、ロシアW杯の総括を始めた。
「普通に考えて、2カ月前に監督が解任になる、ましてや僕らみたいに弱いチームが今まで築き上げてきたものがゼロになるというなかで、チームがひとつになるというのは本当に難しいことでした。だけど、年齢が上の選手を含めて、みんながチームのために日々を送っていましたし、だからこそこの結果が生まれたと思う。そういうチームワークが、あらためて僕たちの強みだと感じますし、そこは本当に誇りになります」
香川は自分たちを「弱いチーム」と言い切った。
ベルギー戦で悔いが残ったのは、試合運びだった。香川は以前、「2-0は怖いスコアだと日本で教わるし、その感覚は(ドルトムントのようなチームでも)常識」と、教えてくれたことがある。だが、現実に2-0の恐怖をモロに味わうと、「逆転されてしまったのは自分たちの弱さだ」と振り返った。
「結果論なので、あとではなんとでも言えちゃうんですけど、やはり、2-0になったときに、そういう試合のリズムを、読み取る力がなかった。そういう経験は、本当に厳しいところでやらないとわからないし、2点差というのは、海外だったら確実にゲームを終わらせられる状況なので、僕たちはまだまだ経験が足りなかったのかな、と。チームとしてそれはいい経験になったけど、だからこそ勝ちたかったですね」
日本代表チームに監督交代をはじめ紆余曲折があったのと同様、香川自身も苦境に立たされた時期があった。昨年11月の欧州遠征ではメンバーから落選。その後、ドルトムントで調子を上げていったものの、今度は負傷で3カ月間の戦線離脱。不動の10番として2回目のW杯を目指す選手としては、厳しすぎる時間を送った。
「別に11月の落選とか、僕は悔しくなかったです。悔しくなかった……と言ったら変ですけど、絶対に6月のロシアには出るということしか考えてなかったので。別にそこで外れようが、絶対に俺は6月(のW杯)に出るんだという気持ちしかなかったですし、それが自分自身を支えてくれていた。
外されて、あらためて感じるものはありましたし、だからこそ、もっとやってやるという気持ちになれたのは事実です。厳しい状況に対して、常に前向きに諦めずにやり続けることが本当に大切だなと、すごく感じるようになりました。次のW杯も目指すか? 正直、今はなんとも言えないです。ここで成功することを望んでいたので」
結果は決勝トーナメント1回戦で敗退。それでも日本の10番は、ロシアの地で輝きを取り戻した。
「10番としてどうだったか、それはわからないです。みなさんが判断してください。ただ、やはり10番というのは、最終的に得点するかアシストするかだと思うので、いくらいいプレーをしたとしても、結局はそこで判断されるものだと思う。1得点というのは物足りないです。あらためて自分自身、最後の局面での個の力というのをもっと上げていかないといけないと思いました。
(エデン・)アザールもボールを持つたびに仕掛けていっていたし、そういう姿勢を常に持ち続けないと成長しないのかな、と。日本人はそういうところでうまくバランスを見て、『チームのために』という言葉が前に出ますけど、結局、そういうところで(問われるのは)個の力。僕自身、もっとトライしていかないといけないと痛感しました。こうやってワールドカップに出るなら、ブラジルの10番のネイマールのように、最後まで自分の力を信じて出し切るメンタリティを身につけていかないといけないですね」
本田圭佑、岡崎慎司とともに「ビッグ3」と呼ばれ、「おっさん」扱いされた香川はまだ29歳。4年後はともかく、今回の悔しさと手応えを糧に、どのようなサッカー人生を歩んでいくのか。香川のチャレンジはまだ続く。