史上最難関の全米オープンになると噂され、グリーンの硬さと速さを誰もが警戒していたオークモントだが、開幕を控えた練習日の数日間に実際に聞こえてきた声はグリーンよりバンカーに集まっている。

昨日の火曜日には地元ペンシルベニア出身のアマチュア、クリス・クロウフォードのキャディがバンカーで足を滑らせ、足首を負傷する事故が起こった。動けなくなったそのキャディに肩を貸し、近くの芝生の上まで運んだのは、驚くなかれ一緒に練習ラウンドしていた世界ナンバー1のジェイソン・デイ。そして、ロープの外をたまたま歩いていたピッツバーグ・スティーラーズのチーム・ドクターが走り寄って応急処置。即席の救助隊は不思議な取り合わせだったが、それはさておき、オークモントのバンカーは、ときに深く、ときに縁が滑り、ボールは止まらず、足場も取れず。そんな“危険"を漂わせている。

2007年の前回大会は優勝スコアが5オーバー。今年もそんな驚きの数字になるのかどうか。スコアも各ホールの距離設定もスティンプメーターの数字も。すべては蓋を開けてみるまでわからない。

いやいや、そうした数字以外の面を見ても、オークモントは謎だらけだ。練習ラウンドの真っ只中でも、メンテナンススタッフたちは1日数回、プレーを止めては芝を刈り、バンカーをならし、グリーンに水を撒いていた。バンカーの縁は大小数種類の芝刈り機を駆使。砂をならすレーキも2種類を使い分けている。だが、実際にコース上のバンカーに置かれるのは、ごく一般的なレーキのみ。そのあたりにメンテナンス上の秘密が隠されていそうだが、「明かすことは禁じられている」とメンテナンススタッフたちは口をつぐみ、どの謎も謎のままだ。

「どうなるんですかね?」「わからないです」「出たとこ勝負」と語った松山英樹の言葉は、そんな謎だらけのオークモントに対する率直な感想だ。

一方、日本予選を勝ち抜いてやってきた4名の日本人選手たちの感想は、むしろ楽観的に感じられる。全米オープン初出場の宮里優作は「ちょっとずつロケーションやグリーン上のタッチ感がつかめてきた感じ。行く前のほうが不安だったけど今はどっちかというと楽しみ」と目を輝かせている。

2度目の出場の池田勇太も「グリーンは硬いけどスピードはちょっと落ちたかな。パターを1インチ短くして調整して、いいストロークができている。あとは自信を持ってできるかどうか。明日からが楽しみ。早く明日になってほしい」と開幕を心待ちにしている。

初出場の谷原秀人も「フェアウエイをキープすればスコアは作りやすい。フェアウエイにいったときにどれだけバーディーを狙える位置に付けられるかですね」と前向きだ。

10回目の出場となる谷口徹は「明日が雨だと厳しい戦いになると思う」と若干クールだったが、みな「どうにか戦えそうだ」という感触を抱いている。松山と日本ツアーからの4選手のトーンの違いは、オークモントに潜むグリーンの謎、バンカーの謎、さまざまな数字の謎をどこまで警戒し、どこまでをどんなふうに想定するか。その差なのだと思う。

明日からの4日間、オークモントは間違いなく練習日までには見せなかった姿で選手たちの前に立ちはだかる。松山を含む世界のトッププレーヤーたちは豊富な経験値をフル活用して攻略を図る。経験値が少なく、想定するものがあまりない他選手たちは前向きな気持ちを糧に体当たりするしかない。

突き詰めれば、やっぱり誰もが出たとこ勝負。しかし、一つだけ言えるのは、そこに我慢比べの勝負も加わってくるということ。

いよいよ明日、その勝負が幕を開ける。

文・写真/舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)