かつてロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウトとして石井一久、黒田博樹、斎藤隆らの獲得に尽力した小島圭市氏。大谷…
かつてロサンゼルス・ドジャースの日本担当スカウトとして石井一久、黒田博樹、斎藤隆らの獲得に尽力した小島圭市氏。大谷翔平(エンゼルス)の高校時代にいち早く目をつけ、NPBスカウトの足が遠のいた時期でも花巻東に通ったという逸話は有名だ。
今春は『AbemaTV』で東京六大学リーグの解説者として登場し、歯に衣着せぬコメントで注目された。そんな小島氏に、今春の全日本大学野球選手権で注目された好投手10名について存分に語ってもらった。

今年春のリーグ戦(駒大戦)で20奪三振を記録した東洋大・上茶谷大河
上茶谷大河(東洋大4年/181cm・85kg/右投右打)
本格的に活躍し始めたのが4年春からと聞きましたが、あと2、3年、しっかりと経験を積めばいい投手になるはずです。クロスステップの面白い角度からボールが来るので、打者は打ちづらいはず。
三塁側のプレートを踏むことは今後も変えないほうがいいでしょう。藤浪晋太郎投手(阪神)はここをプロで矯正されて、バランスが崩れたと私は見ています。少し気になったのは、リリースの際に首が流れること。標的に対して頭が動けば、当然命中する確率は落ちますから。大学選手権では体調不良で打ち込まれましたが、素晴らしい素材であることは間違いありません。

長身から投げ下ろす最速153キロのストレートが魅力の東洋大・梅津晃大
梅津晃大(東洋大4年/187cm・92kg/右投右打)
馬力のある長身右腕ですね。ただ、体に力があることは伝わりますが、腕力に頼って投げている感があり、体感速度があまり速くないのは気になります。技術でかわすタイプでもないので、長いイニングを投げるというよりリリーフタイプでは。
広島の永川勝浩投手のように、ボールの勢いと縦の変化球を生かして短いイニングを抑える投手としてのイメージが湧いてきます。故障もあってリーグ戦での登板経験も少ないようですし、もう少し様子を見たい素材です。

4年春のリーグ戦で自己最多となる3勝をマークした富士大の佐々木健
佐々木健(富士大4年/178cm・80kg/左投左打)
これだけ腕の振れるサウスポーは希少ですから、それだけで十分にドラフトにかかるレベルです。彼もリーグ戦で結果を残せるようになったのは今春からと聞きましたから、晩成型なのでしょう。スライダーも今以上にしっくりくる握りを覚えたら、よりシャープで空振りを奪える球質になるはずです。
フォームは下半身と上半身のバランスがかみ合わないこともありますが、うまく連動させて指先から「パチン」と音がするような力が伝わるリリースを目指してほしいです。いい指導者に巡り合ったら、爆発的によくなる可能性を秘めています。

150キロ近いストレートと多彩な変化球が持ち味の立命館大・山上大輔
山上大輔(立命館大4年/182cm・88kg/右投左打)
この投手は非常に面白いですね。僕がMLBスカウトならレポートを提出して推薦するはずです。彼の長所は体に力があるだけでなく、縦の角度があること。高い位置でリリースして、上から下への角度がある。さらにその真っすぐの軌道から縦に鋭く落ちる変化球をマスターできれば、もっと素晴らしい投手になるでしょう。
無理して角度を作っているのではなく、スムーズに腕が出ているのがいいですね。2、3年でメジャーリーグの支配下40人枠に入ってくるイメージすら湧いてきます。東洋大の上茶谷くんも好素材ですが、僕は山上くんをより高く評価しますね。

2年秋の横浜市長杯で完全試合を達成した東海大の青島凌也
青島凌也(東海大4年/178cm・83kg/右投右打)
今春は体調不良や右肩の不調もあって、大学選手権ではわずか1打者のみの登板に終わりました。それでも、彼の持ち味の一端は伝わってきました。とくに腕の振りが強いという特徴があり、これだけ腕が振れれば武器のカットボールも効いてくるはず。
さらに、勢いだけでなく、投球センスが感じられるのも高ポイントです。もちろん、故障からの回復具合は気になるところですが、NPBでドラフト指名されるレベルにあることは間違いありません。

大学選手権では全4試合に登板し、防御率0.00で最優秀投手賞に輝いた東北福祉大の津森宥紀
津森宥紀(東北福祉大3年/177cm・78kg/右投右打)
大学選手権で優勝投手に輝いたサイドスローですね。投手らしさを感じないシルエットですが、この横からの角度から140キロを超えるスピードボールをコンスタントに投げるのですから、NPBスカウトならほしい存在でしょう。一軍の投手陣10~11人の中で同じようなタイプばかりが並ぶよりは、バリエーションがほしいわけです。
津森くんのボールのキレ、コントロールはまだ物足りませんが、この角度と勢いは大きな武器になります。自信のつく使い方をしてあげて経験を積めば、大きく成長する可能性があります。

リーグ戦では3年秋、4年春と2季連続最多勝をマークした創価大・杉山晃基
杉山晃基(創価大3年/183cm・88kg/右投左打)
体に力がありますし、ボールに角度があって面白い投手です。ただ、大学選手権では初戦の宮崎産業経営大戦で5失点したように、本来の力は出せませんでした。昨年の好調時に比べると下半身が明らかに太くなっており、その反面、腕の振りの勢いは失われているように感じます。
人によって考え方はそれぞれですが、私はパワーを求め過ぎているように見えました。ドラフトの年まであと1年あるので、自分に合ったトレーニングを考えてみてほしいですね。

駒大を中退し、苫小牧駒大に再入学した伊藤大海
伊藤大海(苫小牧駒大2年/175cm・80kg/右投右打)
150キロを超えるスピードで大学選手権を沸かせた速球派。上の世界では先発よりもリリーフが向いているタイプに見えました。常に腕を思い切り振る力投型で、変化球でも置きにいかずに腕が振れるのがいいですね。全体的にボールが高め傾向なので、平均してあと1~2個分ボールが下がると、それだけでかなりよくなるはずです。これから2年間かけて、低めに生きたボールを集めるられるよう取り組んでみてほしいです。

最速155キロのストレートと縦のスライダーで三振の山を築く東海大・小郷賢人
小郷賢人(東海大2年/180cm・82kg/右投右打)
150キロ台中盤の速球を投げると聞きましたが、大学選手権で目立ったのは縦のスライダーです。縦に鋭く落ちて空振りが奪えるので、コンスタントに投げられるようになれば大きな武器になります。逆に真っすぐはフォームに間(ま)がなく、打者から見やすい腕の振りなので合わされやすい。
常時150キロ台が出るようになれば別ですが、もう少し工夫がほしいですね。将来的には西村天裕投手(日本ハム)のように、リリーフとして面白い存在です。

全国的には無名だが小島氏が絶賛した中京大の山本一輝
山本一輝(中京大2年/180cm・81kg/左投左打)
大学選手権で全国デビューした無名の投手だそうですが、素晴らしい素材ですね。まだ総合力は低くても、左投手でこれだけ投げられるなら十分ドラフト上位候補です。ストレートの球持ちがいいので、140キロ前後のスピードでも打者がことごとく差し込まれる。つまり「速く見える」ということ。
1球1球ごとのバランスはバラバラですし、変化球で腕が緩むなど課題は多いですが、すべて修正可能でしょう。あとは本人が自分自身の可能性に気づいているかどうか。欲をいえばもう少ししなやかさが出てくれば、文句なしのドラフト1位候補になるはずです。
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実は、今回は10投手以外にもチェックさせてもらったのですが、私が「これは!」と感じた投手を中心に10投手に絞って紹介させてもらいました。
見た中で素晴らしいポテンシャルを感じたのは山上投手(立命館大)と山本投手(中京大)の2人。とくに山上投手は面白いです。まだ体もできていませんし、体重移動の時間をあと0.1秒でも長くとって投球に間を作れれば、もっと打者のタイミングを外せるはずです。
そして全体を通して気になったのは、下半身が太い投手が目についたことです。決して悪いことではありません。メリットとしては、「強い」、「安定感があるように見える」。デメリットは「重い」、「疲労がくる」といったことがいえるでしょう。
重いものを100回上げるのと、軽いものを100回上げるのでは、疲労度はまるで違います。体が重い投手は、球数を投げれば投げるほど、体のブレが大きくなってしまいます。20年前までは下半身のウエイトトレーニングを積んで太くすることが当たり前でしたが、今はMLBでも「投手はウエイトをやらなくていいよ」と言われる時代です。
もちろん、人それぞれいろんな考え方があっていいと思います。ただ、私としては「下半身を太くする」風潮に違和感を覚えているので、お伝えしました。