覇気は失っていない。 スーパーラグビーに参加するサンウルブズの坂手淳史は「(出番が)来るように準備はしていたので、問題ないと思います」。6月25日は、強い日差しの降り注ぐ東京・辰巳の森ラグビー練習場で戦術確認のセッションへ参加していた。「…

 覇気は失っていない。

 スーパーラグビーに参加するサンウルブズの坂手淳史は「(出番が)来るように準備はしていたので、問題ないと思います」。6月25日は、強い日差しの降り注ぐ東京・辰巳の森ラグビー練習場で戦術確認のセッションへ参加していた。

「出た時はアピールしないと。まだまだこれから」

 思い浮かべるのは、2019年のワールドカップ日本大会だろう。やみくもにメンバー入りを目指すのではなく、メンバー入り後に活躍しうる力をつけたい。言葉に力を込める。

「ワールドカップ、テストマッチで勝っていける選手にならないと、残っていても意味がないので」

 身長180センチ、体重104キロの25歳。強烈なタックルを長所に、帝京大時代は2015年度の主将として大学選手権7連覇を達成するなど活躍してきた。2016年には日本代表デビューを果たし、2017年にはサンウルブズへ追加招集されていた。2019年のワールドカップ日本大会に向け、将来の主軸候補として期待されてきた。

 坂手がプレーするHOは、層が厚いポジションだ。日本代表、サンウルブズ、現国内所属先のパナソニックでは、2015年のワールドカップイングランド大会で日本代表副将だった堀江翔太が君臨する。サンウルブズに限れば日本代表の庭井祐輔、ジョージア代表のジャバ・ブレグバゼも力を発揮している。それ以外の場所では、ヤマハで存在感を示す日野剛志、帝京大の2学年後輩で現サントリーの堀越康介も代表定着を狙う。

 ところが坂手本人は「この状況も楽しい」と言い切る。

 今年6月、日本代表ツアーでは、スコッドに選ばれながらイタリア代表、ジョージア代表とのテストマッチには出られなかった。組まれた3試合すべてで堀江が先発し、庭井がベンチスタートだった。

 雌伏の時、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチとはどんな会話がなされていたのだろうか。坂手本人はこう振り返る。

「今回、HOは3人いて、翔太さん、庭井さん、僕と、各個人のアピールポイントが違う。ただ翔太さんがいいパフォーマンスをしていたので、継続してゲームに起用されていると。僕のパフォーマンスが低いとか、見てくれていないというわけではなかった。チャンスはもらえなかったですが、これからのサンウルブズ、トップリーグでアピールする場面はたくさんある。そこでいいプレーを、という話はしました」

 他者に落ち込むそぶりを見せない。それが坂手という選手だ。

 大目標へは、「まだまだ自分のパフォーマンスを上げていかないといけないのですが、(代表入りが)決まっている人は誰もいないと思うので、アピールする」。堀江やブレグバゼといった世界的HOを手本にしつつ、ワールドカップで戦うアイルランド代表やスコットランド代表を倒せる選手を目指す。結果的にワールドカップに出たい。

 日本代表もしくはワールドカップの舞台を「そこ」として、決意を新たにする。

「そこで残るというより、そこで戦える身体とメンタリティーを身につけないといけない。そこにいるだけでは意味がないので、目標を達成するワンピースになれるように頑張りたいです」

 日本代表と連携を図るサンウルブズは、一時中断後初の試合を6月30日におこなう。南アフリカのブルズを迎え撃つ、シンガポール・ナショナルスタジアムでの第17節だ。坂手は今季のスーパーラグビー通算6度目の出場を狙う。(文:向 風見也)