「ジャパン半端ないって」。サッカーのワールドカップの「熱」が伝播する。23日、ラグビーの日本代表が屈強なジョージア代表に28-0で完勝した。



世界屈指のスクラムを誇るジョージア相手でも、五分以上に渡り合った日本代表FW陣

 競技は違っても、代表の活躍は刺激になるのだろう。5月にサッカーの本田圭佑と食事を共にしていたラグビー日本代表のウイング山田章仁は試合後、言った。

「もちろん、(本田に)お会いしていたので、活躍を見入ってしまう。日本を代表して戦う同じ仲間として、世界で戦っていくうえで、勇気をもらっています」

 日本の世界ランキング11位に対し、ジョージアは12位。世界屈指のスクラムを誇るジョージアは日本のフォワード陣にとって、世界での「現在地」を確認するには格好の相手だった。まさにテストマッチである。

 来年のラグビーワールドカップの開催地となる豊田スタジアム。雨、この日は日本が不得手とされてきた雨中戦となった。じつは午前中、リーチ マイケル主将は自主的に選手を集めて、ミーティングを開いた。ジェイミー・ジョセフヘッドコーチ(HC)の言葉を借りると、「”大人の男”として、テストマッチに勝つために何が必要かの意思統一をした」という。

 天候に合わせて、全員がゲームプランを理解する。どうしてもハンドリングミスが多くなる雨中戦の鉄則はエリア勝負、敵陣勝負である。プレッシャーである。キック多用の基本プランは同じでも、キックの距離や深さが変わってくる。キーワードはこれだった。

「プレッシャー」
「ディシプリン(規律)」

 全員が鋭く前に出る。高速のディフェンスシステムは機能してきた。それぞれが自分の役割を理解し、互いの連係を意識しながら、プレッシャーを相手にかけ続けた。危ない場面でもよく、我慢した。

 とくに接点での健闘である。ディフェンスコーチ、ジョン・プラムツリーの細かい指導のもと、この1週間、最初のヒットには誰がいく、相手の内側・外側には誰がいく、と決め事をつくって、反復練習をしてきた。

 相手をノートライに封じることができたのは、もちろんジョージアの攻めが一辺倒だったこともある。ポイントの近場に2人で突っ込んでくる。その繰り返し。バリエーションは少なかったし、ミスも多かった。

“タフガイ”のロック真壁伸弥は「練習の成果が出た」と満足そうな表情で漏らした。笑顔の額に汗が浮かぶ。

「ジョージアに対しては、そこ(ブレイクダウン)で勝負しないといけない。マインドセット(心構え)のところでもしっかりやりました。すばらしかったのは、僕らがフィジカルで普通に勝っていたことです」

 惜敗したイタリア第2戦ではマインドセットで後手を踏んだ。だから、この日はより、アグレッシブに。フィジカル強化の成果だろう、タックルではしっかりポジショニングして、相手の芯に強く当たっていく。タックル成功率は104本中97本の93%(相手82%)の好数字を残した。

 勝因が、加えてスクラムである。これまでジョージアにはスクラムからやられていた。でも、この日はスクラムで、まったく危なげなかった。相手の駆け引きに困惑した部分はあったが、きちっと修正できた。

 後半8分、相手の22mラインを越えた辺りの左側のスクラムだった。ジョージアボールだったが、堀江翔太は勝負に出た。32歳のベテランフッカーが述懐する。

「いいエリアでチャンスがきたので仕掛けようと考えて、押しにいきました。いきなりプレッシャーをかけたので、対応はしてきたんですけど、向こうは崩れましたね」

 それまで、日本の右プロップ、23歳の具智元(グ・ジウォン)は相手の引いてくる組み方に戸惑っていた。が、その時は、フッカー堀江とのバインディングをより強め、グイと内側に押した。そのまま押すと、相手はずらしながら頭を上げた。スクラムが反時計回りにばらけた。

 苦しくて、相手はボールを出した。パスが乱れる。ノックオンしたボールをセンター立川理道が拾い、センターのラファエレ ティモシーが前進する。ラック。代わったばかりのロックのヴィンピー・ファンデルヴァルトが左サイドに持ち出し、インゴールに飛び込んだ。

 この瞬間、ベンチでは長谷川慎スクラムコーチが両手を突き上げた。そりゃそうだ。スクラムで獲ったトライのようなものだった。ゴールも決まって、16-0となった。勝敗の帰趨(きすう)は見えてきた。

 この日、スクラムは18本あった。マイボールスクラムが10本、うち1本はペナルティーをとられてしまったが、残る9本は余裕でコントロールした。イタリア代表との2試合を合わせると、マイボールスクラムは22本、うち21本の成功となる。いい数字だ。

 2015年のラグビーワールドカップ戦士の真壁が言葉に実感を込めた。

「ジャパンのレベルがすごく上がったなと感じた試合でした。4年前とはレベルが違う。これまでは、ジョージアに対し、スクラムがイヤだなという感覚になっていた。いまは、全然問題ない。むしろこちらから仕掛けていこうという気持ちですから」

 テストマッチ3連戦の最大の収穫はスクラム、ラインアウトの安定である。記者から、「半端ないスクラムを」と水を向けられると、堀江は愉快そうに笑った。

「ああ。そう書いておいてください。『ジャパン、半端ない』って。『めっちゃ、プレッシャーかけるやん』って。『そんなん普通できひんやろ』って」

 スクラムでいえば、とくに右プロップの23歳、具の成長が大きい。駆け引き、経験値が課題だが、イタリア、ジョージア相手に押し負けなかった。具も「自信がつきました」と少しだけ笑った。

 大分から神戸、そして豊田。強化の進捗を確認する日本代表のテストマッチシリーズは2勝1敗で終わった。環境が整備され、ジョセフHCら首脳陣が、今季はほぼ同じ陣容でスーパーラグビーのサンウルブズを指導してきた。共有する時間が多ければ、戦術の落とし込みもコミュニケーションもチームワークも格段にアップされる。

 1敗したのは残念だが、代表強化の方向性が間違ってないことを確認できた。選手個々の力も把握できたはずだ。また課題も浮き彫りになった。ゴールキックの安定性、キックやキックチェース、アタック、ディフェンス、連係の精度など、である。

 ジョセフHCは「非常に誇らしく思います」と感慨深そうに漏らした。

「昨シーズンから成長が著しくて、トップリーグで戦っていた選手が、強豪相手にここまでチャレンジできるまでに成長できたことを非常にうれしく思います」

 タフな試合を経て、チームはひとつに固まっていく。チームスローガンの「ONE TEAM」になる。会見中、リーチ主将の顔はずっと硬いままだった。

「ひとつ、自信になりました。これから勢いつけて、11月の2試合に向けて、いい準備をしていきたい」

 11月には世界ランキング1位のニュージーランド、6位のイングランドとのテストマッチが待っている。正しい準備とハードワーク。来年のラグビーワールドカップでの栄光(ベスト8入り)に向けて、日本代表のチャレンジングな旅は続くのである。

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