ラグビー日本代表は6月18日、愛知・豊田スタジアムでスコットランド代表と激突する。相手は世界トップクラスの力勝負が見られる欧州勢にあって6強の一角。体格差に劣るジャパンは鋭い出足でぶつかり合いに挑みたい。もっとも身体を当てるLOの位置には…

 ラグビー日本代表は6月18日、愛知・豊田スタジアムでスコットランド代表と激突する。相手は世界トップクラスの力勝負が見られる欧州勢にあって6強の一角。体格差に劣るジャパンは鋭い出足でぶつかり合いに挑みたい。もっとも身体を当てるLOの位置には、東芝の14歳差コンビが並ぶこととなった。

 1人は大野均。身長192センチ、体重106キロ。日本歴代最多の96キャップ(国際間の真剣勝負への出場数)を誇るシニアプレーヤーだ。

 全国的には無名とされる日大工学部で楕円球と出会った福島県出身の38歳で、4年に1度のワールドカップには3度、出場してきた。3勝を挙げた昨秋のイングランド大会では唯一敗れたスコットランド代表について、「まずは、レイドロー。彼を自由にさせない」。SHグレイグ・レイドロー主将を相手の攻めの起点と見据える。

 先発の平均身長と体重でそれぞれ約5.4センチ、約3.5キロも上回られているFW陣同士の戦いに触れ、こんな意識も明かす。

「相手のFWは大きくて、力強い。一番怖いのは、ペナルティを犯して(ペナルティキックからラインアウトを獲得されて)モールを押し込まれたりすること。ペナルティをしないよう、ディシプリン(規律)を保とう。チームではそう話しています」

 もう1人は小瀧尚弘。身長194センチ、体重110キロ。いまも大学選手権7連覇中の帝京大から東芝入りした昨季は、日本最高峰のトップリーグで新人賞に輝いた24歳だ。

 初キャップを取得したのは今年の4月30日(アジアラグビーチャンピオンシップ・韓国代表戦/神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場/○85-0)になってからだが、大野によれば「去年からジャパンにいてもおかしくなかった選手」である。

 遡って11日、カナダ代表戦(バンクーバー・BCプレイススタジアム/○26-22)で5キャップ目をもらった。ここで先発した際は、「相手の腰の位置」に入らねばならないと感じた。ボールを持ってタックルとぶつかる瞬間、自らの体勢を沈めてぶつかりたい。

 スコットランド代表戦でも、同じイメージを持ちたい。さらに、くぐもった声で言い残す。

「フィジカルな試合になる。接点で負けないように、前に出る気持ちを出す。でかくて力強い相手に、少しでもビビったら負けなので」

 2人には縁がある。

 小瀧が鹿児島実高の2年生だった頃、年代別の代表に呼ばれた際に周囲のレベルの高さに愕然。自信を失いかけていたところ、同県協会を通じて大野と出会っている。

 東芝の合宿地としてよく鹿児島を訪れていた大野は、小瀧にラグビーを続けて欲しい旨を伝え、日本代表の練習着もプレゼント。「あいつは当時からでかくて、渡したやつもぴったり着ていました」。帝京大で注目された小瀧が東芝入りを希望するのは、自然な流れだった。

 試合のメンバーが固まって来たように映った16日の練習後は、2人の関係にまつわる質問が多く飛んだ。大野は言った。

「感慨深いですね。高校生の頃から知っている選手と一緒に(日本代表の)桜のジャージィを…。この年にならないと、経験できないことです」

 対するスコットランド代表のLOには、同国で最も有名かもしれぬ兄弟が屹立。兄・リッチーと弟・ジョニーのグレイ兄弟だ。

 特に身長207センチ、体重126キロの体躯で56キャップを持つ26歳のリッチーは、甘いマスクや金髪と相まって日本のラグビーファンの間でも知名度は高い。

 小瀧は強靭な上腕で相手を締め上げるチョークタックルを得意とし、周りから「小瀧上げ」というネーミングを頂戴している。リッチーへの「小瀧上げ」にも「行きたいですね…」と静かに意欲を示していた。

 一方、リッチーは豊田市内のホテルでの会見に出席。対面の大野が38歳で自分と同じポジションを務めることについて「(自分には)ノーチャンスだ」と応じつつ、自らのタスクを「セットピースをしっかりさせることで、持っているスキルを発揮できる。逆にそこが上手くいかないと、日本代表のやりたいようにやられる」。スクラムではフロントローを押し込むエンジンとなり、ラインアウトでは主要ジャンパーとしてチーム内のベーシックスキルを徹底したい。

 かたや大野は言った。

「動き出しを速くする。相手はセットプレーが得意で、中盤からでもモールを組んだりして来る。いろんな駆け引きを駆使して、そうはさせない。向こうがスクラムをずっと押してくるんだったら、こっちだって押し返す。その心構えでやろう、としています」

 スコアボードが動く前には、かような意地の張り合いがある。(文:向 風見也)