ロシアW杯を彩る3人のスター、リオネル・メッシ、ネイマール、クリスティアーノ・ロナウド。その初戦の出来は三者三様だった。彼らの戦いぶりを採点してみよう。 まずはクリスティアーノ・ロナウド。彼には100点満点で90点をあげたい。それくら…
ロシアW杯を彩る3人のスター、リオネル・メッシ、ネイマール、クリスティアーノ・ロナウド。その初戦の出来は三者三様だった。彼らの戦いぶりを採点してみよう。
まずはクリスティアーノ・ロナウド。彼には100点満点で90点をあげたい。それくらいスペイン戦でのプレーは完璧だった。C・ロナウドのチームへの貢献はハットトリックだけではない。彼は90分間常にチームのために戦っていた。またリーダーにふさわしく、チームメイトを鼓舞し、自ら率先して闘志あふれるパフォーマンスを見せることで、チームを引っ張っていた。
スペイン戦でハットトリックを達成したクリスティアーノ・ロナウド photo by JMPA
試合を見た人は気がついたかもしれないが、スペインの攻撃の際、C・ロナウドの姿はしばしばゴール近くにあった。もしC・ロナウドがいなかったら、スペインはもっと多くのゴールを決めていたことだろう。
ただ、これは言い換えれば、彼は自分のチームの限界を知っていたということになる。どんな場面でも自分が奮闘しなければいけないことをロナウドは知っている。自分がやらなければ誰もいないのだ。
そのことは重圧にもなっているはずだ。初戦を迎えるまで、合宿地でのC・ロナウドは相当ピリピリしていた。練習に現地の200人ほどの学生が招待されたときのこと。彼らの「ロナウド!」という声があまりにもうるさかったため、最後にはキレたC・ロナウドがボールを観客席に蹴り込む場面も見られた。
すべての責任がその双肩にのしかかっていたのは、メッシも同じだ。
ポルトガルとは異なり、アルゼンチンにはメッシ以外にも優秀な選手は数多くいる。しかし今はそれらがほとんど機能していないのが現状だ。セルヒオ・アグエロもハビエル・マスチェラーノもゴンサロ・イグアインも、誰もがいいプレーができていない。期待されていたマヌエル・ランシニはケガでメンバーに入ることもできなかった。
アイスランドに引き分け、自身もPKを外したリオネル・メッシ photo by JMPA
しかし両者が異なったのは、こうしたプレッシャーを受けながらも、ロナウドは奮起したが、メッシは後ろを向いたことだ。ロナウドは誰も手伝ってくれないなら自分がやるしかないと腹をくくったが、メッシは、自分はすべての責任を負わされた犠牲者だと感じてしまった。
アイスランド戦のメッシには20点という低い点数しかつけられない。PKを外したからではない。彼がチームを率いなかったからだ。背番号10に、キャプテンマークにふさわしい仕事をしなかった。彼は終始いらだった様子で、だからこそPKも決めることができなかったのだろう。
この試合の前に、メッシはアルゼンチンのラジオ局のインタビューに「あまりにも多くのプレッシャーをかけられることに、僕はもう耐えられない」と、ロシアW杯を最後に代表から引退することを示唆している。
「僕はこれまで常に全力を尽くしてきたし、代表の勝利のために誠心誠意プレーしてきた。勝てないからといって、僕たちが手抜きしたわけでは決してない。それなのに、人々はそうは思わない。だからもう代表には戻りたくないと思ったんだ。
しかし、今のアルゼンチン代表が本気でロシアで優勝したいと思っているのを知って、僕はその挑戦をともにすることにした。だから、もしここで優勝しなければ、もう次はないと思っている。別に代表チームを見捨てるわけではないが、これまで僕は十分にチームのために頑張ってきた。だからもう、あとに続く選手たちに場所を譲りたいと思う」
一方、ネイマールの場合はC・ロナウド、メッシとは若干、異なるシチュエーションに置かれている。彼もかつてはチームを率いる存在であったが、今は違う。依然としてブラジルのスターではあるが、もうリーダーではない。天才的なひらめきをチームに与えるだけの存在だ。
若い彼にはリーダーのポストは重荷でしかなかった。チッチは監督に就任してすぐにそのことに気がつき、ネイマールに自由に、自分の好きなようにプレーをさせることにした。
ただ、スイス戦でのネイマールの出来は決してよくなかった。チーム内で最低の出来だったと、ブラジルのメディアも口をそろえて言っている。チームメイトのためにスペースを切り開くという仕事を、ネイマールはこなせなかったからだ。おかげでフィリペ・コウチーニョはしばしばトップで孤立していた。
ただし、ネイマールが今大会の試合の中で一番多くファウルを受けた選手だったことも忘れてはならない。つまり、それだけよく動いていたということだ。だから私が彼につけるのは50点。C・ロナウドより活躍していないが、少なくともメッシよりは何かをやろうとしていた。
ネイマールはケガから復帰したばかりだ。大会前のオーストリア戦で数分プレーしたものの、スイス戦は4カ月ぶりのフル出場だった。これからコンディションを上げていく可能性は大いにある。何より彼にはC・ロナウドやメッシのような重圧はない。ブラジルはネイマールなしでも十分にやっていける。調子が悪ければメンバーから外れ、調子がよければプレーすればいい。その気楽さが、ネイマールにとって大いなる助けとなるかもしれない。