2戦連続でホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ・チーム)が優勝を飾った。前戦の第6戦・イタリアGPでドゥカティ移籍以来初めての勝利を挙げたロレンソは、今回の第7戦・カタルーニャGPでも前戦同様に、終始一貫したハイペースで後続をぐいぐい引き離す…

 2戦連続でホルヘ・ロレンソ(ドゥカティ・チーム)が優勝を飾った。前戦の第6戦・イタリアGPでドゥカティ移籍以来初めての勝利を挙げたロレンソは、今回の第7戦・カタルーニャGPでも前戦同様に、終始一貫したハイペースで後続をぐいぐい引き離すという得意の勝ちパターンで連勝を達成してみせた。



かつての圧倒的な速さを取り戻して2連勝したホルヘ・ロレンソ

 前戦の優勝後には、「形状違いの燃料タンクを投入したことで、バイクを押さえ込む疲労感がなくなり、レース終盤まで体力を温存できるようになった」と話していたが、その効果は今回もてきめんにあらわれて、自分の持ち味を存分に発揮した格好だ。

 第5戦までの苦戦傾向がウソのようなここ2戦の高パフォーマンスだが、来季からのファクトリー契約更改がないことはシーズンの早い段階でほぼ明らかになっており、第6戦の優勝後には「別のバイクで走ることになる」と話してドゥカティ離脱を明らかにしていた。

 その時点では、パドック内のほとんど全員がロレンソはヤマハの新サテライトチームに移籍するものと推測していた。だが、レースから3日後の水曜に、レプソル・ホンダ・チームと2年契約を交わしたことを発表。ロレンソとホンダはおよそ接点がない組み合わせと皆が考えていただけに、このニュースは文字どおり世界中を驚かせた。

 ヤマハのファクトリーチームで9年間走ってきたロレンソは、旋回性能に優れたヤマハYZR-M1のマシン特性を最大限に引き出せるライディングスタイルで、最高峰クラス3回のチャンピオンを獲得した(2010年、2012年、2015年)。一方、昨年から乗ることになったドゥカティ・デスモセディチは、卓越した動力性能を備えながら旋回性を常に課題としてきたマシンだ。そのために、コーナリングスピードを稼ぐロレンソのライディングスタイルとは合わないという見方が移籍初年度から大勢を占め、ロレンソ自身もバイクの特性にあった乗り方を探る試行錯誤が続いた。

 ホンダRC213Vはドゥカティに近いタイプで、高い旋回速度でタイムを削り取っていくのではなく、動力性能を活かしながらコーナー手前でしっかりと止めてクルッと周り、素早く立ち上がる〈メリハリの効いた〉乗り方でタイムを稼ぐバイクだと言われてきた。

 ロレンソの移籍先として大勢の人々がホンダを想像しなかったのは、この理由によるところも大きい。

 ただし、この2連勝からもうかがえるように、ロレンソはエンジンパワーで乗るマシンの走らせ方を確実に体得しているのかもしれず、それが事実なら、ドゥカティ首脳陣は今更ながら逃した魚の大きさを痛感しているのかもしれない。また、そうであるとすれば、来シーズンのホルヘ・ロレンソがホンダのファクトリーマシンでどのようなパフォーマンスを発揮するのか。これは大いに関心を集めることになるだろう。

 さて、ロレンソがレプソル・ホンダ・チームと契約したことで、にわかにその去就に大きな注目を集めることになったのが、ダニ・ペドロサだ。

 ペドロサは125cc時代から一貫してホンダのマシンで戦い続け、2004年と2005年に250ccを連覇した後、2006年からはレプソル・ホンダ・チームのライダーとして、13年間ファクトリ−マシンで戦い続けてきた。

 少年時代にペドロサの才能を見いだし、世界のトップライダーとして育成してきたアルベルト・プーチは、今シーズンからレプソル・ホンダのチームマネージャーに就任しているが、かつて師弟関係にあったこのふたりも、実は近年はぎくしゃくした間柄になっているともいわれている。そのために、ペドロサのチーム離脱は既定路線とも一部では言われていた。

 事態はそのとおりに推移したわけだが、第7戦・カタルーニャGPのレースウィーク前日にペドロサの記者会見動画中継が予定されていたために、これが引退発表になるのではないか、との憶測が一気に広がった。走行が始まる前の木曜に選手たちはいつも囲み取材を行なうが、通常は紙媒体などの質疑応答が中心で、それがライブ配信されることはよっぽどのことがないかぎり行なわれない。そのよっぽどのこととは、今回の場合、引退会見だろう、というのがその推測のロジックだった。

 実際に、ペドロサは引退する方向で話が進んでいたとも言われている。だが、木曜の記者会見でペドロサは、「来年以降に向けたいいオプションがいくつかあり、今はまだ何も話せる状態にない」と話すのみで、何らかの重大な発表を期待していた人々は大いなる肩すかしを食らわされることになった。ただ、当初にささやかれていた引退ではなく、現役続行を匂わせたという意味では、その段階での新情報だったといえるかもしれない。

 そのペドロサの移籍先だが、もっとも有力視されているのは、当初ロレンソの行き先と思われていたヤマハの新しいサテライトチームだ。

 ヤマハ・モーター・レーシングのマネージング・ダイレクター、リン・ジャーヴィスは来季のサテライトチームについて、おそらくあと2週間ほどで明らかにできるだろうと話しており、その際にあくまで噂に対する個人的な印象として、「ダニがサテライトチームに来てくれれば、面白いことになると思う」と肯定的な見解も述べている。

 2週間後に行なわれる第8戦のオランダ・ダッチTTのレースウィークが始まる前後には、おそらくこれらの情報の詳細が明らかになってくるのではないだろうか。