欧州の『ワンダーボーイ』はNBAで通用するか?

スロベニア出身のルカ・ドンチッチの実力は、すでにリーガACB、ユーロリーグという欧州の大舞台で証明されている。13歳でスペインリーグの強豪レアル・マドリーとプロ契約を結んだ天才は、2017年夏、スロベニア代表として出場したユーロバスケットでも大会ベスト5に選出され、母国のヨーロッパ初制覇に貢献した。

昨年の国際大会での活躍後、同じくスロベニア代表としてユーロバスケット優勝に尽力したヒート所属のゴラン・ドラギッチは、次世代の代表エースを「生まれながらの勝者」と絶賛。あれから約1年、ついに欧州の『ワンダーボーイ』が大西洋を渡り、アメリカでプレーする姿が見られるかもしれない。

プロバスケットボール選手としてスロベニア、セルビア、フランスで活躍した父サシャ・ドンチッチの息子として生まれたルカは、レアル・マドリー史上最年少の16歳でプロデビューを飾った。デビュー後も年々レベルアップし続け、2017-18シーズンにはユーロリーグ初優勝を成し遂げた他、オール・ユーロリーグ・ファーストチームに選出され、史上最年少でユーロリーグMVP、ファイナル4 MVP、リーガACBのMVPも獲得。

ドンチッチの実力を疑問視するNBA関係者の声もあるようだが、現在までにNBAで活躍した欧州出身選手と比較しても、これだけの実績を19歳で残した選手は彼しかいない。

アメリカの大学レベルは言うまでもなくプロ級に準ずるものだが、フィジカルの強さ、スピードでユーロリーグのレベルはそれ以上だ。そこで10代後半からスター選手としての地位を確立させ、次々に最年少記録を更新しているドンチッチは、正真正銘の逸材だ。

NBAドラフトにエントリーした後もマドリーでのプレーを優先したドンチッチは、アメリカでのドラフト・コンバインにも参加しなかった。そして、ドラフト前のワークアウトを受ける予定もない。

そのドンチッチを最も知るNBAチームのヘッドコーチは、元スロベニア代表ヘッドコーチで、先日サンズの指揮官に就任したばかりのイゴール・ココスコフだろう。ココスコフは先月末に出演したポッドキャスト番組内で、ドンチッチについて「この世界で25年指導してきたが、彼が最も才能のある選手かもしれない」と語った。

欧州リーグよりフィジカルが強く、世界中から優れた選手が集まるNBAでは、彼の身体能力とクイックネスはトップクラスには及ばないとの意見もある。仮にNBAで来シーズンプレーすることになっても、試合数やスタイル、文化の違いなどの影響により1年目は期待に応えられないかもしれない。それでも、ドンチッチがトップ5で指名されるだけの力を持つのは間違いない。

レブロン・ジェームズや、ラッセル・ウェストブルックのような『超』が付くほどのアスリートではないにしても、彼にはNBAレベルでやっていけるだけの身体能力と知性が備わっている。現役選手の中からドンチッチに近い選手を挙げるとすれば、今のフィジカルレベルは数年前のゴードン・ヘイワード級かもしれないが、バスケットボールIQの高さはすでにマヌ・ジノビリ級に到達しているという意見もあるほど。

もっとも、ドンチッチが確実に来シーズンNBAでプレーするかは分からない。指名を受けたとしても、そのチームでプレーすることを本人が望まなければ、マドリーに残るという選択肢もあるからだ。このリスクを考え、上位指名権を持つチームの中にはドンチッチの指名に踏み切れないチームもあるだろう。ドンチッチ本人も、まだNBA挑戦を明言したわけではないのだ。

今の段階では、2位指名権を持つキングス、4位指名権を持つグリズリーズ、5位指名権を持つマーベリックスによる指名が有力だが、サンズがアリゾナ大学出身のディアンドレ・エイトンではなくドンチッチの指名に方針を変える可能性もゼロではない。また、現時点では憶測でしかないものの、スパーズがトレードを球団に要求したと報じられたカワイ・レナードと交換でサンズから1位指名権を獲得し、ドンチッチを指名するのでは、という噂もある。

果たしてどのチームがドンチッチを指名するのか。そして彼は本当にアメリカにやって来るのか。欧州の若きスーパースターがNBA挑戦を決意するかどうかは、間もなく分かる。