ラグビー日本代表の松田力也が、後半20分に登場するや白眉を示す。

 敵陣ゴール前右のラインアウトから味方FW陣が前に出るなか、対するイタリア代表の反則に伴いアドバンテージを獲得。その後のプレーが未遂に終わっても、相手が反則した位置で自軍ペナルティキックから攻め直せる。

 追い風が吹くなか、田村優に代わって司令塔のSOに入った松田は冷静だった。

 おとり役の後ろで、球の出どころから左へやや遠ざかるよう動き出す。その流れでSHの流大から球を受け取ると、さらにその左で飛び出す相手防御の背後を通すようパス。CTBのウィリアム・トゥポウのフィニッシュを促した。自らゴールキックを決め、3-19から10-19と点差を縮めた。

「9番(SHとして途中出場の流大)にいいボールをもらえるようしっかりと(立ち位置などを)伝えていた。アドバンテージもあったので(大胆な)キックパスの選択肢もあったのですけど、パスのほうが確実だった。イメージ通りです」

 身長181センチ、体重92キロ。大学選手権9連覇中の帝京大では8連覇時の副将を務め、昨季はパナソニックの主力インサイドCTBとして国内トップリーグ準優勝を果たしている。京都・伏見工時代から勝負強さとスキルを買われており、日本代表のジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ、トニー・ブラウン アタックコーチからは「12番(インサイドCTB)もFBもカバーできるSO」と目されている。

 兵庫・ノエビアスタジアム神戸でイタリア代表と戦ったこの日の日本代表は、松田の登場後に一時17-19と迫った。結局は22-25と敗戦も、若きコンダクターには好意的な評価が集まっただろう。試合があった6月16日、会場に設置された取材エリアでは報道陣に次戦以降の先発も期待された。

 もっとも当の本人は冷静だ。先発した田村の方が「ゲームコントロール」の面で長けると自覚。シニア組とのコミュニケーションを通し、プレー選択の正確性などを磨きたいという。
 
「(点差や時間帯など)あらゆることを想定してリザーブとしての準備をしています。スタートから出てきょうのパフォーマンスができるかと言えば、まだわからない。どういう(試合の)流れがいいのかなどをふみさん(SH田中史朗)、優さんと話したりして、最後のテストを勝ちたいと思っています」

 23日には愛知・豊田スタジアムでジョージア代表とぶつかる。ツアー最終戦でもあるこの日に向け、悔いのない準備をしたい。(文:向 風見也)