今年で86回目を迎えた伝統の一戦、ル・マン24時間の公式予選2日目が現地時間6月14日に行なわれ、フェルナンド・アロンソ、セバスチャン・ブエミと共に「TOYOTA GAZOO Racing」の8号車を駆る中嶋一貴が、前日の予選1回目で…

 今年で86回目を迎えた伝統の一戦、ル・マン24時間の公式予選2日目が現地時間6月14日に行なわれ、フェルナンド・アロンソ、セバスチャン・ブエミと共に「TOYOTA GAZOO Racing」の8号車を駆る中嶋一貴が、前日の予選1回目で自身が記録した3分17秒270を大幅に更新。3分15秒377をマークして、見事ポールポジションを獲得した。



予選でポールポジションを獲得したトヨタ。左からフェルナンド・アロンソ、中嶋一貴、セバスチャン・ブエミ

 中嶋のポールポジション獲得は、2014年に続いてこれが2回目となる。

 予選2番手には、同じくトヨタの7号車(小林可夢偉、マイク・コンウェイ・ホセ・マリア・ロペス組)がつけ、悲願の初優勝を目指すトヨタが予選フロントローを独占。今回のライバルであるノンハイブリッドのLPM1勢に対し、トヨタTS050ハイブリッドの「速さ」をあらためて証明した。

 現地時間の午後7時から始まった予選2回目は、アクシデントが続発。セッション終盤の約30分が赤旗で中断になるなど、荒れ模様の展開だった。

 午後9時30分、予定より30分早く最後の「予選3回目」が開始されると、予選アタック用のニュータイヤを装着した中嶋のトヨタTS505ハイブリッドが早々にコースイン。1発目の計測ラップで最速タイムを叩き出す。

「遅いクルマに引っかからないように、できるだけ早めにピットアウトしました。それでも前に3台ほど入られてしまいましたが、インラップできっちりと3台を抜くことができたので、肝心のアタックラップではトラフィックに邪魔されず、ほぼクリアな周回でしたね。去年、可夢偉が記録したコースレコード(1分14秒791)には届かなかったけれど、路面状態も昨日の予選よりかなりよくなっていましたし、とりあえずポールポジションを取れたのはよかったです」(中嶋)

 今回のル・マンで最大の注目を集めるチームメイトのアロンソも「カズキは昨日の予選でもいい走りを見せていたので、今日も予選アタックを託すことにしたんだ。彼は見事に結果をもたらしてくれた。心から祝福したい」と、中嶋のポール獲得を称賛した。

 予選では、アロンソが中嶋に「主役」の座を譲った格好だが、「世界最高のドライバー」のひとりと称されるF1世界チャンピオンが、トヨタでは「チームプレーヤー」のひとりとして「純粋にレースを楽しんでいる」姿が実に印象的だ。



悲願の初優勝へ決勝レースは現地時間土曜の午後3時にスタート

 一方、昨年の予選でコースレコードをマークしたトヨタ7号車の小林可夢偉も、予選3回目の序盤にタイムアタックを行なった。だが、こちらはトラフィックに引っかかるなどでクリアラップを取ることができず、結局、水曜日の予選1回目でマークした3分17秒377がベストタイムで、予選2番手。それでも、予選3位のレベリオン・レーシングとのタイム差は2秒以上ある。

 予選で好タイムが出たが、その結果に浮かれることなく、悲願の初優勝を目指すトヨタの目は、すでに決勝レースへと向けられている。

「もちろんポールポジションを獲得できたのはうれしいですが、ル・マンでの予選の重要度はせいぜい1%ぐらい……。今日の予選でもレースに向けてきっちりと走り込み、必要なデータが取れたことのほうが大きいと思います」(中嶋)

 また、ル・マン初挑戦となるアロンソも、予選3回目の終盤に振り出した雨の中で周回を重ね「夜のウェットコンディションを経験できたことは、有意義だった」と語り、こちらも予選セッションを決勝レースに向けた「最終テスト」と捉えているようだ。

 ちなみに、金曜日は翌日に控える決勝レースに向けた「休息日」。夕方からル・マン市内で恒例のドライバーズ・パレードが行なわれ、サーキットだけでなくル・マンの街全体が伝統の24時間レースに向けて雰囲気を盛り上げていく。

 最大のライバルにして、越えられない「壁」であったポルシェが撤退し、事実上「ひとり横綱」状態で今年のル・マンに臨むトヨタ。だが、優勝候補の筆頭に挙げられながら、苦杯をなめ続けてきた過去2年の結果が示すように、伝統の一戦、ル・マン24時間レース勝利に必要な真髄は「ライバル」ではなく、「自分自身との闘い」になる。

 巨大なプレッシャーに打ち克ち、いかにチーム全体の力を出し切れるか。そして、24時間の中で起きる「想定内」や「想定外」の状況に、いかに的確に、迅速に、冷静に、そして柔軟に対処できるかが、トヨタが「悲願」を達成するための最大のカギになるはずだ。

 決勝レースのスタートは、土曜日の午後3時(現地時間)。そこから「24時間後」の栄冠を目指して、トヨタの「絶対に負けられない戦い」が、まもなく始まろうとしている。