2015年から日本ツアーに参戦し、今年で4年目のシーズンを迎えているジョン・ジェウン(29歳/韓国)が好調だ。 一昨季に続いて昨季も賞金シードを逃し、今季はQTランキング7位の資格でツアーに参戦しているが、ここまで13試合に出場して(…

 2015年から日本ツアーに参戦し、今年で4年目のシーズンを迎えているジョン・ジェウン(29歳/韓国)が好調だ。

 一昨季に続いて昨季も賞金シードを逃し、今季はQTランキング7位の資格でツアーに参戦しているが、ここまで13試合に出場して(6月12日現在)、3戦目のTポイントレディスで4位タイ、4日間トーナメントのヤマハレディースオープン葛城で3位タイ、フジサンケイレディスクラシックで7位タイと、トップ10入りが3回。過去2年とは”別人”のようなゴルフを見せて、リランキングによる後半戦の出場権獲得も確実にしている。

 さらに現在、賞金ランキング23位。3年ぶりのシード復活も見えている。



日本ツアー参戦4年目の今季、いい状態を維持しているジョン・ジェウン

 女子ゴルフ界における韓国勢の活躍ぶりは、もはや説明は不要だろうが、日本ツアーにおいては、世界でも頂点に立った申ジエがスポット参戦するようになった2008年以降、その勢いは増すばかりで、今なお衰えることがない。アン・ソンジュ、イ・ボミらが賞金女王となり、近年もキム・ハヌル、イ・ミニョンらが女王の座を争い、今季もアン・ソンジュ、申ジエ、ユン・チェヨン、そしてイ・ミニョンが賞金ランクのトップ10前後に名を連ねて、存在感を示している。

 そんな韓国勢にあって、ジョン・ジェウンはやや陰に隠れた存在といえる。

 そもそも彼女は、アマチュア時代に韓国代表として2006年のアジア大会に出場。団体戦で金メダルを獲得し、将来を嘱望された逸材のひとりだったが、2008年にプロに転向して以降、なかなか結果を出すことができなかった。

 2013年にはシード権を失って、2014年には下部ツアーでの戦いを強いられた。その下部ツアーで賞金女王となったものの、これまでトップツアーでの優勝は一度もなく、表舞台で脚光を浴びることは皆無に等しかった。おかげで、日本ツアー本格参戦となった際も、大きく取り沙汰されることはなかった。

 しかし今季、その不遇の時代から脱しつつある。

 何より、彼女の様子がこれまでとは明らかに違う。調子のよさは表情にも出ていて、発する言葉も生き生きとしている。自然と笑顔になるのは、精神的にも安定している証拠だろう。

「今の成績がいい、というよりは、一昨年と昨年があまりにも悪かったから、そう見えるだけですよ(笑)」

 ジョン・ジェウンはそう言って笑った。それでも、シードを獲得できなかった一昨年や昨年との違いは確かにあるようだ。

「昨年までと明らかに違うのは、精神的な部分です。私は成績がいいと、自らに一層のプレッシャーをかけてしまうんです。『ここで、もっとがんばらなきゃいけない』とか、『絶対にミスしたらいけない』って。それが、かえって自分を追い込んでしまっていることに気づいたんです」

 こうして、いい精神状態を保てるようになったことは、今季の開幕戦ですぐに結果として表れた。

 実は、話を聞いて驚いたのだが、日本ツアーに本格参戦を果たした2015年以降、意外にも彼女は「ダイキンオーキッドレディスでは、一度も予選を通過したことがない」という。苦手意識が刷り込まれると、そこから脱出することは非常に困難だ。しかし今季、彼女は見事に予選通過を決めて43位でフィニッシュした。

「開幕戦でいい結果を残したいというのは、当然誰もが思うこと。でも、『今年も予選を通過できないかも……』と、どこかでそう思っている自分がいて……。ならば、今年は開き直って、予選落ちしたら『それはそれで、自分の運命だと受け入れよう』と考えるようにしたんです。そうやって目標を下げて、自分へのプレッシャーがなくなると、不思議なことにショットの感覚もよくなってきたんです」

 以来、ジョン・ジェウンは試合に臨む際、常に「できない自分を受け入れるようにした」という。

「私はあまり感情を表に出すタイプではありませんが、誰よりも勝負に対する”欲”は強いと思っています。実は、かなりの負けず嫌いなんです(笑)。

 そんなですから、試合の結果が40位~50位だとして、そういう状態がずっと続くと、やはりメンタル的にはよくないですよね。『私はこれくらいの実力じゃないのに』『もっと上にいけるはずなのに』って、考えれば考えるほど、さらにしんどくなってしまって……。

 そこで、『自分もがんばっている。けれども、私よりももっと努力している人がいて、もっと上手な人がいる』と、考えを改めるようにしたんです。そうすると、気持ちがすごく楽になったんです」

 ジョン・ジェウンは、自分の実力を客観的に見つめ直し、現実を直視することによって、余計なプライドは完全に捨て去った。目の前で起きている自らのゴルフの内容を素直に認めることで、コースで冷静さを取り戻すことに成功した。だからこそ、今も決して欲張ることはない。

「もちろん、優勝はしたいです。ですが、まずは賞金ランキング30位以内に入ることが今の目標です」

 目標は低く――というのが、今年の彼女のモットーだ。そこには、日本で長くプレーしたいという強い思いもある。

「慣れてきた日本ツアーで、まずはプロとしてしっかりと結果を残していきたいです」

 余談だが、「美女ゴルファー」と言われるように、端正な顔立ちのジョン・ジェウン。日本に来た1年目から、熱心に追いかけ続けている日本のファンも少なくない。今季は上位に顔を出すことが多くなり、彼女の応援について回るファンの数はさらに増えてきている印象だ。

「日本の方が、韓国人である私を積極的に応援してくれることは、とてもありがたく、感謝しないといけない」

 そう言って、ジョン・ジェウンは笑顔を見せた。彼女にもう迷いはない。優勝という結果を出して、ファンの期待に応える日も、そう遠くはないだろう。