インディカーシリーズ第8戦。デトロイトでのダブルヘッダー、2レース目の予選はウェットコンディションだった。予選前にほぼ雨はやんでいたが、路面が乾き切らないうちに予選は終了した。レインタイヤでのタイムアタックで最速だったのはアレクサンダ…

 インディカーシリーズ第8戦。デトロイトでのダブルヘッダー、2レース目の予選はウェットコンディションだった。予選前にほぼ雨はやんでいたが、路面が乾き切らないうちに予選は終了した。レインタイヤでのタイムアタックで最速だったのはアレクサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポート)。今季2回目、キャリア4回目のポールポジションを獲得した。

 予選2位はルーキーのロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)。以下、3位ウィル・パワー(チーム・ペンスキー)、4位エド・ジョーンズ(チップ・ガナッシ・レーシング)、5位はスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、6位はジェームズ・ヒンチクリフ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)と続いた。

 雨での速さを自他共に認める佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)は、このチャンスを完全にムダにしてしまった。タイヤの内圧設定が間違っていたようで、”レインマスター”は実力をまったく発揮できず、ほぼ最後尾の予選20位に沈む。前日のレース1でトップ5フィニッシュを果たし、いい流れを掴みかけていただけに、勢いを削ぐようなチームのミスは痛かった。



デトロイト・レース2で今季初優勝を飾ったライアン・ハンター-レイ

 天気予報の通り、レースはドライコンディションでスタートした。ロッシがポールからレースをリードし、多くのチームがレース1より早いタイミングで攻撃的な動きに出た。

 レース1で2位フィニッシュしたライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)は10番手スタート。そして2日続けて3ストップのギャンブルに出た。驚いたことにシュミット・ピーターソン・モータースポーツも、予選5位だったヒンチクリフだけでなく、予選2位のウィッケンズにまで3ストップ作戦を取らせた。

 ロッシの後ろにつかえて燃費走法を続けるより、早めのピットで安定感の高いブラックタイヤに換え、3ストップ作戦で猛チャージしたほうが勝利のチャンスは大きいと考えたのだが、普通、このような作戦はもっと後方からスタートするチームが選ぶものだ。実際、後方スタートだった琢磨やトニー・カナーン(AJ・フォイト・レーシング)、中団スタートのジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)らもこの作戦にトライしている。

 3ストップ作戦のドライバーのなかで最も輝いていたのがハンター-レイだった。レース1での速さも目覚ましいものがあったが、レース2では前日以上にスピードがあった。
 
 面白いのは若手のロッシがポールスタートからオーソドックスに戦い、ベテランのハンター-レイが奇襲作戦的な3ストップで逆転優勝を狙ったところだ。チームメイト同士による勝負の行方が注目された。

 70周のレースの46周を終えたところで、ロッシはピットストップ。残り周回では燃費セーブが必要だ。一方のハンター-レイは52周でピットに入り、3セット目のブラックタイヤをつけて、ロッシに遅れること8秒でコースに戻った。1回多くピットストップをこなしてもこの僅差。燃費の心配が要らないうえに、ハンター-レイのマシンの仕上がりも非常にいいのは間違いなかった。

 ロッシのペースも悪くはなかったが、その差は急激に縮まり、残り10周を切ったところで、ハンター-レイはロッシの背後1秒につけた。

 チームメイトの先輩は自信に満ちた走りでロッシにプレッシャーをかけ続けた。すると65周目、ターン3へのハードブレーキングでロッシはタイヤをロックさせ、エスケープゾーンまでオーバーランしてしまう。ハンター-レイの気迫に押され、プッシュトゥパス(追い抜き時などに使う出力を上げるボタン)を少し長く押しすぎたのだ。少し前からブレーキがロック気味だったロッシは、トップの座を明け渡した。

 ハンター-レイはそのままゴールし、今季初優勝。2015年8月のポコノ以来となるキャリア17勝目を挙げた。

「ロッシは速い。将来チャンピオンになる器だ。しかし、今年はタイトルを獲らせない。僕が獲るからだ。2012年にはシーズン半ばに3連勝を記録した。また同じことをやるつもりだ。それが今の僕らにならできるはずだ。見ていてほしい」

 意欲的にそう語るハンター-レイは今季6人目のウィナーだ。今年のインディカーはかなりの混戦模様で、まだまだタイトルの行方は見えてこない。

 ロッシのミスによってパワーが2位でゴール。ポイントリーダーに返り咲いた。3位でフィニッシュしたのは雨の予選で奮闘し、ドライのレースでも確実性の高い走りを続けたジョーンズ。4位はディクソン、5位はグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)だった。ウィッケンズの3ストップ作戦は実らず、順位を4つ落として6位でゴールした。

 佐藤琢磨は20番手スタートから3ストップ作戦で戦ったが、遅いマシンの後ろにピットアウトするパターンが続いたために、後方集団から抜け出せないままゴール。17位でのフィニッシュとなった。ここ数年、好調だったチームの戦略やエンジニアリングに、今シーズンはなぜか冴えが見られない。開幕前には勢いが感じられたのだが……。