2019年9月に日本で開幕するラグビーワールドカップ(W杯)まで500日を切った今年6月、「ブレイブブロッサムズ(勇敢な桜の戦士)」ラグビー日本代表はイタリア代表(2試合)とジョージア代表、計3試合の国際試合(テストマッチ)を行なう。



代表合宿でもチームの中心となっていたリーチ マイケル

 その桜のジャージーの「大黒柱」と言っていい存在――。それが、キャプテンのFL(フランカー)リーチ マイケルだ。昨秋、2015年のW杯以来となる日本代表キャプテンに復帰。この6月もスキッパーを任された代表53キャップのリーチは今、3度目となるW杯挑戦に何を思っているのだろうか。

 2015年のW杯終了後、心身ともにバーンアウトしてしまったリーチは、日本代表からいったん距離を取った。リーチは当時の心境をこう振り返る。

「(2016年の秋に)代表を断ったときはジェイミー(・ジョセフHC)に怒られたけど、心身ともに疲労があり、モチベーションも下がっていて、がんばっても逆効果でどんどんプレーが悪くなっていた」

 ただ、リーチはやみくもに距離を取ったわけではない。次なる目標を、しっかりと2019年に置いていた。

「W杯はラグビー選手としてトップの大会。4年間のプランを立て、頂点は2019年と思っていた。上がったら、下がる。下げないと、上がらない。休んだことでリフレッシュし、ハングリーになって復活することができた」

 代表復帰の際にこう語ったリーチを、ジョセフHCは昨年10月にふたたび主将に任命した。日本語も英語も堪能で、海外のレフェリーや外国人選手ともコミュニケーションができる。それらの点においても、リーチは主将にふさわしい存在だからだ。

「堀江(翔太)、フミ(田中史朗)、そしてリーチの経験は欠かせない。自国開催のW杯ということで、さらに(彼らの存在は)大きなものになってくる。リーチには身体でお手本になってほしい。彼は勇敢だし、選手にもコーチにもリスペクトされている」

 ジョセフHCはW杯に過去2度出場している3選手の名前を挙げ、リーチに絶大な信頼を置いていると語った。

 2015年から昨年までの3年間、リーチは東芝ブレイブルーパスでプレーしながら、スーパーラグビーに参戦するためにニュージーランドの強豪チーフスにも在籍した。だが、今年からジョセフHCら日本代表コーチ陣がサンウルブズを兼任することになったとき、リーチはサンウルブズ入りを決断する。

 ただ、リーチはケガの影響もあって、今年のスーパーラグビーではなかなか状態が上がってこなかった。「序盤は調子が悪くて、体重が113kgもあった。いいときの映像を見ると運動量が多かったので、体重を絞って108kgに調整した」。その甲斐もあって、現在では調子を取り戻したという。

 また、昨年はスーパーラグビーから日本代表への移行期間まで1週間しかなく、準備が足らなかった経緯があった。その反省を踏まえ、ジョセフHCはサンウルブズでの2試合を残しながら代表の主力選手をメンバーから外し、5月27日からの宮崎合宿前に1~2週間の休暇を与えた。

 リーチはその恩恵に対し、このような想いを抱く。

「代表戦に出る選手は僕も含めて休みをもらえたので、(メンタル的な)切り換えができた。サンウルブズと日本代表は違う。(テストマッチでは)10%はパフォーマンスを上げないといけない」

 日本代表は欧州6ヵ国対抗に属する強豪イタリア代表と2試合(6月9日、6月16日)行ない、そのあとに世界トップクラスのスクラムを誇るジョージア代表と戦う(6月23日)。世界ランキング11位の日本代表は14位のイタリア代表と過去6度対戦して1勝5敗。12位のジョージア代表とは4勝1敗という成績だ。

 もちろん、対戦する両チームとも2019年のW杯に出場する。特徴としてはFWの体格が大きく、セットプレーも伝統的に強い。両チームよりも格上のアイルランド代表(2位)やスコットランド代表(5位)とW杯で対戦する日本代表にとって、ホームのファンの目の前で負けられない相手だ。

 格好の力試しとなる試合に向けて、リーチはこう意気込む。

「この時期に、これ以上いいテストマッチはない。来年のW杯で対戦するチームは、いずれもセットプレーが強い。昨年は目指すラグビーに体力がついていかなかったが、サンウルブズなどで準備してきたので、体力がないとか身体が小さいとかの言い訳はできない。プレッシャーは感じているが、来年のプレッシャーはもっと大きい。勝利して、今のラグビーに対して自信をつけたい」

 イタリア代表やジョージア代表に勝つためには、FWのスクラムやラインアウトといったセットプレーで互角以上に戦えることがカギとなるだろう。だが、リーチはその他にもポイントをふたつ挙げた。

 ひとつ目は、「疲労して体力がきつくなったときに精度を保てるか」である。さっそく宮崎合宿では、フィットネス練習を30分ほどやって身体を疲労させたのち、全体練習を敢行するというメニューを組んだ。チームメイトと一緒にメニューをこなしたリーチは、「過去W杯に出場したことがある選手の精度は高い。一方、W杯に出ていない選手はまだまだレベルアップしないといけない。だが、彼らも伸びる幅はある」と語る。

 そしてふたつ目は、組織的なディフェンスだ。「イタリア代表に対しては、キックで相手を走らせて攻めたい。ただ、ディフェンスでイージートライからの失点が多いので、それをなくしたい」。

 リーチに個人的に伸ばしたい点を聞くと、「スピードチェンジの回数」を挙げた。リーチのポジションはFLだが、攻撃のときは両サイドの端にBK(バックス)と一緒に立ってアタックラインを形成する。「CTB(センター)の選手と比べるとトップスピードになる回数が少ないので、もっと増やしたい」という。

 2019年のW杯に出場すれば、リーチにとっては3度目のW杯となる。しかも今回は、日本開催という特別な大会だ。リーチは今、このような気持ちを抱いている。

「前の2大会とは全然、思いが違う。経験値と体力を合体させてピッチに立ちたい。日本代表のベストパフォーマンスを出して、前回大会(9位)を上回りたい。2015年は世界に日本のラグビーをリスペクトしてほしいと思って臨んだ。今回の大会では小さいチームが大きいチームに勝って、他の競技や日本全体に影響を与えたい」

 また、最近になって父親がラグビー選手だとわかってきた5歳の愛娘(アミリア真依ちゃん)に、「W杯で勝利した姿を見せたい!」とも語る。

 前回のW杯で日本代表を率いたエディー・ジョーンズHCは、トップダウン的な指導が多かった。だが、今のジョセフHCは選手の意見をよく聞くタイプだという。練習を見ていると、ジョセフHCとリーチがコミュニケーションを取っている姿をよく見かける。

「ジェイミーのいいところは、すごく正直なところ。ダメだったらダメ、よかったらよかったと言ってくれる。マネージメントに優れており、ひとりひとりの選手のことを考えてくれているのでやりやすい。ゲームプランはコーチ陣が決めますが、細かいところは選手たちでやっています」

 最後に、「2019年が最後のW杯になるのか?」とリーチに聞いてみた。

「そんなことはないです。もし代表に選ばれれば、2023年のW杯フランス大会も出たい! すごく今、ラグビーが楽しい。自分のなかには、まだ伸びしろがたくさんある」

 初めて桜のジャージーに袖を通してから10年――。29歳になったリーチのラグビーと日本代表に対する強い情熱は、まったく変わらない。