毎年5、6月、インディカーシリーズはハードスケジュールとなる。5月の第2週末に行なわれるインディカー・グランプリを皮切りに、2週間ほぼ休みなしのインディ500、デトロイトでのダブルヘッダー、さらにはテキサスのオーバルレースと続く。 し…

 毎年5、6月、インディカーシリーズはハードスケジュールとなる。5月の第2週末に行なわれるインディカー・グランプリを皮切りに、2週間ほぼ休みなしのインディ500、デトロイトでのダブルヘッダー、さらにはテキサスのオーバルレースと続く。

 しかも、インディカーGPは常設のロードコース、インディ500は全長2.5マイルの超高速オーバル、デトロイトは一般道も使ったストリートコース、そしてテキサスはコーナーに急なバンクがつけられた1.5マイル・オーバルと、すべて異なるキャラクターのコースで行なわれる。

 カナダとの国境を流れるデトロイトリバーに浮かぶ島、ベル・アイル・パーク内に特設されたサーキットは、そのバンピーさとグリップの低い路面が特徴だ。デトロイトでは金曜日に2回のプラクティス(練習走行)を行なった後、土曜、日曜ともに、予選と決勝が1セットずつ行なわれる。

 土曜日に行なわれたレース1。予選のマシンセッティングでライバルをリードしたのはアンドレッティ・オートスポートだった。マルコ・アンドレッティがポールポジションで、アレクサンダー・ロッシ、ライアン・ハンター-レイが予選4位、5位につけた。



デトロイト・レース1で5位となった佐藤琢磨

 彼らに対抗したのはチップ・ガナッシ・レーシングのスコット・ディクソンと、ストリートで速さを見せているルーキーのロバート・ウィッケンズ(シュミット・ピーターソン・モータースポーツ)。それに続いたのが昨年のデトロイトでの2レース両方で優勝したグレアム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)と彼の新チームメイトの佐藤琢磨で、以上はすべてホンダ勢だ。

 一方、インディ覇者のチーム・ペンスキーはシボレーのお膝元で意外な苦戦を強いられた。インディカーGP、インディ500と連勝して波に乗っているはずのウィル・パワーの予選6位が最上位。シモン・パジェノー、ジョセフ・ニューガーデンは予選13、14位と中団に埋もれた。

 レースはアンドレッティ勢とディクソンの対決になった。ポールからマルコが逃げ、ロッシも上位で戦い続けた。一方、ハンター-レイは序盤の早い段階でピットストップを行なう3ストップ作戦に打って出た。孤軍奮闘のディクソンは、序盤はマルコの背後にピタリとつけて燃費をセーブ。1回目のピットストップまで相手より1周長く走り、ピット作業の速さも味方につけてトップに立った。

 レース中盤からはディクソンが逃げる展開になった。そこに異なるピット戦略のハンター-レイが、燃料セーブが不要で、タイヤも新品を投入できる点を武器に、全ラップを予選アタックのように走って優勝争いへと加わってきた。

 ディクソン対ハンター-レイ、2人のベテランによるバトルは見応えあるものになった。

 ディクソンは、予選こそ攻め過ぎた走りが仇となってポールポジションを逃したが、レース、それもトップに立つ展開でミスを犯すことは稀だ。冷静な戦いぶりで4回もチャンピオンになった。ハンター-レイの走りも気迫に満ち溢れたものだったが、ディクソンは今季初優勝へと逃げ切った。3位にはロッシ、4位にはマルコ・アンドレッティが続いた。

 インディカーGPで2位、インディ500で3位と、ジワジワ調子を上げてきたディクソンは、ビクトリーレーンで「この勝利は大きい。今年もまずは1勝を挙げることができた。1回目のピットストップでマルコの前に出たのがカギだった。ピットストップの速さなど、チームの力で勝利を掴んだ」と笑顔を見せた。

 今シーズン8戦目で5人目のウィナーとなったディクソンは、これで通算42勝となり、インディカー歴代3位のマイケル・アンドレッティに並ぶこととなった。彼より上は、もうAJ・フォイトの67勝とマリオ・アンドレッティの52勝しかない。

 2位フィニッシュしたハンター-レイは2012年のチャンピオンだが、2015年8月のポコノ以来、勝利から遠ざかっている。「マシンは速く、作戦もよかった。レース終盤、ターン1からターン4では僕のほうが速かったと思うが、ディクソンはミスをしてくれるタイプのドライバーでない。優勝にあと一歩届かなかった」と、語った(ハンター-レイはその後、翌日のレース2で勝利)。

 そして5位には佐藤琢磨(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)が入っている。トラブルや不運の多いシーズン前半戦となっているが、トップ5フィニッシュをようやく記録した。

「まだマシンは本当にいいセットアップにはできていないのですが、しっかりとした結果を残すことができました。昨年、このチームが勝ち取った成績を考えれば、大きな期待を持ってデトロイトに臨んで当然だと思いますが、苦しい戦いを強いられていますね。初日はマシンにトラブルがありました。その状況から挽回できたことは嬉しいですね」

 マシンセッティングのレベルの高さを期待してレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングへと移籍した琢磨だが、シーズン前半戦はマシンが思うように仕上げられていない。初のトップ5フィニッシュで悪い流れを断ち切り、シーズン中盤戦からはコンスタントに上位で戦ってポイントを積み重ねたいところだ。