ラグビー日本代表は5月27日からの6日間、宮崎・シーガイアで合宿をおこなった。「疲れたことはないんですけど…疲れましたね」 打ち上げた6月1日にこう話したのは、左PRの稲垣啓太だ。2015年のワールドカップイングランド大会などで通算19キ…

 ラグビー日本代表は5月27日からの6日間、宮崎・シーガイアで合宿をおこなった。

「疲れたことはないんですけど…疲れましたね」

 打ち上げた6月1日にこう話したのは、左PRの稲垣啓太だ。2015年のワールドカップイングランド大会などで通算19キャップを獲得。代表と連携を図ってスーパーラグビーに挑むサンウルブズにも、チームが発足した2016年から参画している。

 国際舞台でもタフさと知性で鳴らしてきた身長186センチ、体重116キロの28歳だが、今度の合宿では負荷を感じたという。この時期の首脳陣は、実戦練習とフィットネストレーニングを交互に実施。疲れた状態での戦術遂行を課していた。稲垣は言った。

「意図的に疲れさせるという部分では、スタッフの狙った通りにできたのではないでしょうか」

 6月にはイタリア代表、ジョージア代表の2チームと計3試合をおこなう。いずれの相手も、2019年のワールドカップ日本大会で日本代表とプールステージ同組となるアイルランド代表、スコットランド代表に似た特徴を持つ。FWが組み合うスクラムなど、セットピース(攻防の起点)を強みとしているのだ。
 
 だからスクラムの最前列に入る稲垣は、今度のテストシリーズへ「個人的には、そこ(セットピース)にフォーカスを当てています」と意気込んでいる。

「スコットランド代表、アイルランド代表はどちらもセットピースが強いチームです。イタリア代表は(欧州6か国対抗で)スコットランド代表と五分五分で組んでいますから、そこを押せればワールドカップへいいイメージができる」

 5月までのスーパーラグビー期間中は故障離脱した時期もあっただけに、宮崎合宿では「昨日(5月31日)は感覚を取り戻すみたいな感じで組んで、きょう(6月1日)は割とフィットできた」。どんなメンバー構成でもチームの目指すスクラムを組めるよう、各選手と連携を取りたい。

 そのうえで表明するのは、内容よりも結果を求める態度だ。

 エディー・ジョーンズ前ヘッドコーチ(HC)時代の日本代表は、2015年のワールドカップで歴史的な3勝を挙げた。大会前もウェールズ代表、イタリア代表に勝利して話題を集めてきた。

 もっともジェイミー・ジョセフ現HCが率いるいまの日本代表は、発足したてだった2016年11月にウェールズ代表に30-33と惜敗し、翌年11月のフランス代表戦でも23-23と引き分けてきた。ティア1と呼ばれる列強国には、善戦こそすれ白星をつかめずにいる。

 かような歴史を踏まえてか、稲垣は改めて「1点差でも何でも、テストマッチは勝つことがすべてです」と決意を新たにする。

「プロセスは大事だと思いますが、勝つことがすべて。エディーの時からそう教えられてきました。負けても次につながる収穫があったとか、そういったことを言うのはあまり好きではない。じゃあ、本番でそのセリフが言えるのか、となるので。プロスポーツになるほど結果がすべてになるし、特に代表のテストマッチであればどんなに内容がひどくても勝つことが大事になる。もちろん、そこで自分たちのやってきた戦術を出せればもっとスムーズに事が運ぶとは思いますが」

 6月4日からは東京で、9日のイタリア代表戦(大分・大分銀行ドーム)に向けた調整に入った。「基本的に戦術等々は理解しているので、スムーズには入れているなと思います」。強い日差しのもとでおこなった5日の練習後は、大男をなぎ倒す態度をこう表明する。

「イタリア代表はサイズの大きいチームです。こういう天候のなかではまず、バテバテになるでしょう。それに対して僕らがスローペースな試合に付き合っていたら、相手からしたら楽といえば楽。疲れたら倒れ込んでくるような相手に対し、自分たちでテンポを上げていきたい」

 守っては、ジョン・プラムツリー ディフェンスコーチの唱える鋭い出足の防御を遂行したい。「コミュニケーションが取れている時はハイプレッシャーで前に上がれています」と手応えを明かしながら「どんどんこれから良くなりますし、良くしないと通用しない」と厳しさも示す。試合直前まで、質向上に努める。

「速いセットができるかどうか、ですね。疲れてくるとどうしてもボールウォッチして、膝に手をついてしまう。そうなると出足が遅れる。その出足の1、2歩で、このディフェンスの結果は変わってくる」

 世界ランキングは日本代表の11位に対し、イタリア代表は14位でジョージア代表は12位。もっとも稲垣は「(力関係上は)そんなことはない。いままで楽なテストマッチなんてなかったです。もう少し張りつめていきたい」。当日は厳しい戦いになることを覚悟したうえで、かつ勝利を目指す。
(文:向 風見也)