セネガルをはじめとする西アフリカのサッカー事情に詳しく、フランスの『Jeune Afrique』や『Le Monde Afrique』に寄稿するジャーナリストのアレクシス・ビルボール氏は、W杯グループHの日本対セネガル戦(6月24日、…

 セネガルをはじめとする西アフリカのサッカー事情に詳しく、フランスの『Jeune Afrique』や『Le Monde Afrique』に寄稿するジャーナリストのアレクシス・ビルボール氏は、W杯グループHの日本対セネガル戦(6月24日、エカテリンブルク)についてこう話す。

「スタイルは対照的だ。セネガルはパワフルで身体能力が高いチームに、サディオ・マネ(リバプール)やケイタ・バルデ・ディアオ(モナコ)、イスマイラ・サール(レンヌ)らのテクニックが加味される。日本は賢くて、速くて、テクニックのある選手がいるが、フィジカル面には課題を抱えている。どちらが勝ってもおかしくない」

 グループリーグの力関係を考えれば、日本がグループリーグを突破するためには、セネガルにはどうしても勝っておきたいところ。セネガルから勝ち点を奪うには、何が必要になるか。



ルクセンブルク戦を見つめるエースのサディオ・マネ(左)とアリウ・シセ監督

「私の考えでは、総合力ではセネガルが少しリードしていると思うが、日本にもセネガルからいい結果を出せるだけの力はある。昨年ミランからパチューカに渡った本田圭佑が調子を上げていると聞いているし、日本らしく速いテンポで、空中戦ではなく地上戦で、少ないタッチ数でプレーを進めれば、セネガルは相当苦しめられるはずだ。

 セネガルの売りは守備だが、身体能力に頼り、ラインが統率されているとは言い難い部分もあり、裏を取ったり、サイド攻撃をしかけたりして揺さぶることで綻(ほころ)びも見えてくることだろう。

 特に右サイドバックのラミーヌ・ガサマ(アランヤスポル/トルコ)は後方のスペースを空けて前に飛び出る傾向があり、右CBのムボジ・カラ(アンデルレヒト)もスピードがあるタイプでない。さらにムボジ・カラは、昨年末に故障して以来、しばらく実戦から離れていて、シーズンの最後の最後で復帰はしたものの、調子がどこまで戻っているかは定かではない。

 その点を考えれば、日本の左サイド(セネガルの右サイド)深い位置からの攻撃はひとつ生命線になるかもしれない。もちろん、その後ろではマネと長友のマッチアップが見られるだろうし、マネに簡単にスペースを与えるようだと、日本はそもそも攻撃どころではなくなってしまう。身体能力の差を考えれば、日本がコンディションを万全にして臨めるかどうかも重要だろう」

 セネガルは5月31日にルクセンブルクとテストマッチを行ない、チャンピオンズリーグ決勝を戦ったばかりのエースのマネらを欠いて0-0で引き分けた。このあとはクロアチア(8日)、韓国(11日)と戦いながら調整し、本番に備えるとのことだが、チーム状況はどうなのか。

「3月の代表ウィークはウズベキスタン、ボスニア・ヘルツェゴビナと戦い、1-1、0-0でともにドローだった。

 4-4-2の布陣を使ったこともあるが、ロシアでの本大会では予選を戦ってきた3-5-2や4-3-3のシステムが基本になるだろう。アリウ・シセ監督はまずしっかり守ることに重点を置いており、メンバーのなかにはクラブでレギュラーでない者もいるが、予選を戦った多くの選手を信頼している。その証拠に、トルコのギョズテペ・イズミルで華麗な復活を遂げたベテランFWデンバ・バの招集も見送った。

 現在のところ、チームにケガ人は出ていないため、メンバーを追加で招集する必要もなさそうだ。テストマッチの結果だけを見れば芳しくないが、テストマッチはあくまでテストマッチ。セネガルにとってW杯初出場だった2002年日韓大会でも、誰もが初戦でフランスに勝利するとは思っていなかっただろうし、結果的にはベスト8まで勝ち進んだ。蓋を開けてみなければわからないのがセネガルだ」

 かつてプレミアリーグのニューカッスルやチェルシーで活躍したFWデンバ・バは、2015年に中国の上海申花へ移籍して以降、長くケガに苦しめられてきた。しかし、今年1月にギョズテペに移籍すると13試合で7ゴールと結果を出した。4月にはシセ監督が招集を示唆したこともあったそうだが、最終的には見送られたという。日本にとってはもし長身FWデンバ・バがいれば、厄介な存在になっていたと思われるだけに、果たしてシセ監督の判断がどう出るか、興味深い。

 ビルボール氏によれば、セネガルのチームスタッフは、コロンビアやポーランドと同様に日本のことも警戒しているとのこと。試合が近づけば日本対策についてもチーム内で共有されることになるだろう。だが、現時点でセネガルの選手が日本について細かくコメントすることはないという。

 日本代表が3月に行なった欧州遠征の結果も、セネガルのメディアに大きく報道されることはなかった。ただ、ハリルホジッチ前監督の解任のニュースは、インパクトが強かったようだ。

「そもそもテストマッチは選手やシステムを試す場だし、日本にはケガ人も何人かいたはずだから、そこまで本大会に向けて参考になるようなものではなかったと思う。一方で、驚いたのはハリルホジッチの更迭だ。

 監督と選手との関係がうまくいっていないことはニュースなどで伝わってきていたが、W杯開幕を2カ月後に控えたなかでの指揮官交代は相当リスクがある。日本はハリルホジッチの指揮のもとでアジア予選を突破したわけだし、ここまで引っ張ったのならクビを切るのではなく、指導の仕方をもう少し柔軟にしてもらうなどの処置はできなかったのかと考えてしまう。

 とにかく、日本サッカー協会の田嶋幸三会長はずいぶんと大きな賭けに出たね。W杯で結果が出なければ、会長自身の進退が問われても不思議じゃない。場合によっては、その行方がセネガルとの戦いで決まる可能性だってある」

 日本とセネガル。客観的にグループHを見れば、この両者が敗退するだろうとの見方が一般的かもしれない。しかい一方で、この対戦で勝ち点3を獲得できれば、初戦の結果はどうであろうと第3戦に望みをつなぐことができる。生き残りをかけた運命の一戦になりそうだ。