「Tリーグを世界一の卓球リーグに」大きな目標を掲げて10月、Tリーグが旗揚げをする。5月にスウェーデン・ハルムスタッドで開催された世界卓球選手権(団体)では日本女子ナショナルチーム(石川佳純、伊藤美誠、平野美宇、早田ひな、長崎美袖)が中国に…

「Tリーグを世界一の卓球リーグに」

大きな目標を掲げて10月、Tリーグが旗揚げをする。

5月にスウェーデン・ハルムスタッドで開催された世界卓球選手権(団体)では日本女子ナショナルチーム(石川佳純、伊藤美誠、平野美宇、早田ひな、長崎美袖)が中国に敗れはしたものの、銀メダルを獲得し、日本中を沸かせた。男子はベスト8で敗れたが、張本智和はこれからの日本男子を牽引する存在であることを証明した。選手それぞれの名前が広く世間に浸透し、卓球人気がジワジワと高まりつつある。

ただ、Tリーグの全貌はまだ見えてこない。スタートに向けての進捗状況は、どうなっているのだろうか。Tリーグの運営やマーティング業務を主とする(株)Tマーケティングの畑山進社長にTリーグの「今」を聞いた。ー取材・文:佐藤俊(スポーツライター)

畑山氏は2018年4月、(株)Tマーケティングの代表取締役社長に就任した。野村証券、野村信託銀行を経て、現職となる。金融業界とスポーツ界は一見するとまったくの異業種に思えるが、Bリーグの立役者である大河正明社長の例もある。畑山氏はどういう経緯で大役を引き受けることになったのだろうか。

――まず、Tマーケティングの社長に就いた経緯を教えてください。

畑山進(以下、畑山):1年半ぐらい前、私は野村グループの野村信託銀行にいたのですが、野村證券が東京五輪のゴールドパートナーになっていました。ただ、それは業種で完全に仕切られていて、私たち銀行業態はまったく参加できない状態だったんです。せっかく東京で五輪があるのに銀行として何もサポートできず、盛り上がることができないのはすごく残念でした。そこで私がかつて人事担当だったことを活かし、選手を社員として採用できないか、あるいは野村信託銀行を所属先にできないか等々を検討していたんです。それがあって松下(浩二・Tリーグ理事)さんと知り合いました。

――具体的なアプローチがあったのはいつごろなのでしょうか。

畑山:昨年の年末ですね。その前にTリーグの立ち上げが見えてきていたので、スポンサーの営業とか、いろいろとご相談を受けたりすることがありました。松下さんからは『お金は払えないんですが、ボランティアで手伝ってもらえませんか』と言われましたので、『時間がある時はいいですよ』と話をしていました。その後、松下さんから『リーグのマーケティングをする会社を始めることになったので社長をお願いできませんか』というお話しをいただき、今に至ります。

――社長就任を打診された時、迷いはなかったのでしょうか。

畑山:事務局では私が一番年嵩なんですが、この年齢になって新しいことに取り組めるチャンスはなかなかありません。しかも自分の好きな卓球の世界で好きな選手がいて、彼らをサポートして待遇や環境をもっと良くしたい。そういう仕事のチャンスは二度とないでしょう。それにBリーグの大河さんも元金融ですし、仕事を調べていくと金融の知識や経験が活かせる局面がかなりあると思いました。放映権や肖像権を資金化するコンテンツビジネスが主ですので、それならお役に立てるのかなと。もちろん経済的な面では金融にいた方がいいのですが、先輩に『これからは世のため、人のためという言葉があるだろう』と呟かれて、決断しました
 
安定した地位を投げ打って、新たな挑戦に踏み出す畑山氏。彼の言葉からは卓球への愛情と情熱が感じられる。昔を紐解くと中高時代、卓球部で活動していたという。野村證券時代は卓球忘年会を開き、卓球に触れる環境にあった。現職に至ったのは一番はやりがいを感じてということなのだろうが、大好きな卓球への恩返しの意味も多分に含まれているのかもしれない。

ここで改めてTリーグについて概説しよう。10月から開幕予定のTリーグには、男子が4チーム(東京、埼玉、岡山、沖縄)、女子が4チーム(神奈川、愛知、大阪2)が参戦。ホーム&アウェイで21試合、上位2チームによるファイナルが開催される予定だ。リーグ期間は10月から3月まで。これは中国の超級リーグ(4月~9月)と時期が重ならないように設定された。中国のトップ選手にTリーグに参戦してもらうため。各チームには「世界ランキング10位内、またはそれと同等レベルの選手の1名以上の所属」が参入条件になっている。

チームは、男子が4チーム(東京、埼玉、岡山、沖縄)、女子が4チーム(神奈川、愛知、大阪2)、ホーム&アウェイで21試合、上位2チームによるファイナルが開催される予定だ。リーグ期間は10月から3月まで。これは中国の超級リーグ(4月~9月)と時期が重ならないように設定された。中国のトップ選手にTリーグに参戦してもらうためだ。

「やるからには世界最高を目指します」

畑山社長の鼻息は荒い。

――社長就任から、まだ間もないですが開幕を100%とすると現在はどのくらい準備が進行しているのでしょうか。

畑山:うーん、難しいですね。それぞれ役割分担して進行している状態で全体の比率を出すのは……。ただ、確実に前進はしています。

――例えばBリーグは、1年前からいろんな告知がなされ、Bリーグの全国認知率は1年前が41%、開幕後が65%、野球(90%)、サッカー(87%)についで3位になりました。開幕から半年前のTリーグは、どのくらいあると考えていますか。

畑山:パーセンテージで表すのはむずかしいのですが、私の家族でさえも知りませんでしたので、まだまだだと思います。それは発信力が弱かったからです。告知計画は立てていたのですが、スキームが変わったり、タイミングがずれたり、うまく発信できていない。今の私のミッションとしては5月末にチーム向けの説明会をすること。そのために放映権やスポンサーを詰めている段階です。公式に発表するのは夏ごろになると思いますが、その前から発信できるものは随時していきたいですね。

――放映権の話が出ましたが、野球やサッカー、バスケットのリーグ戦は地上波では非常に厳しい状況です。Tリーグはどこが主戦場となりそうですか。

畑山:開幕戦、ファイナル等の特別な試合は地上波との組み合わせになると思いますが、リーグ戦は基本的にネット配信を想定しています。ただ、卓球を見せていく点において単に試合だけではなく、付加価値をつけていきたいですね。横浜DeNAベイスターズさんがダッグアウトやロッカーなどバックヤードを映像化して見せていましたが、我々も試合以外の練習風景や試合に向かうところなど選手の素顔を見せられるような映像を提供していければと考えています。また、チームとご相談させていただき、例えば不調だったチームをどう再生していったかなど、そういうのもドキュメンタリー映像化していくのもありかなと思っています

――スポンサーは特別協賛を含めて、どういう状況でしょうか。

畑山:おかげさまでTリーグの魅力、選手の魅力などを感じていただいているようですので、あとは条件次第ですね。メインパートナーさんをはじめトップパートナーと合わせて4〜5社、サプライヤー契約は複数あり、ここはそんなに時間をかけずに発表できると思います。

スポンサーへの営業には松下理事が同行することもあるという。松下理事を企業に紹介する時、「松下はサッカー界でいうカズ、テニス界では松岡修三です。松岡さんよりはずっと強かったですけどね」と言うと、「おぉー」とその場が沸くという。卓球界をリードしてきた男と金融ビジネスを知る畑山社長の二人三脚での営業は最強の2トップと言えよう。

松下理事がTリーグの年間売上目標を20億円に設定していたが、それを達成するには放映権とスポンサー料が鍵になる。アリーナでの入場者数は1試合3000人前後、野球やサッカーとは会場の大きさが違うので入場料収入だけでは立ち行かなくなる。それだけに放映権とスポンサーの2本柱でどのくらいの収入を上げられるのか、畑山社長の手腕が問われることになる。そのためにリーグの魅力が不可欠になるが、果たしてTリーグは何をウリにしていくのだろうか。

後編「卓球の見せ方を変えるTリーグ」に続く。