3月のインターナショナルマッチウィーク、コロンビアはパリで行なわれたフランス戦に3-2と勝利し、ロンドンで行なわれたオーストラリア戦は0-0で引き分けた。コロンビアの首都ボゴタ在住で、欧州まで取材にきていたサッカージャーナリストのカー…

 3月のインターナショナルマッチウィーク、コロンビアはパリで行なわれたフランス戦に3-2と勝利し、ロンドンで行なわれたオーストラリア戦は0-0で引き分けた。コロンビアの首都ボゴタ在住で、欧州まで取材にきていたサッカージャーナリストのカール・ワーズウィック氏は、こんな印象を持ったという。

「コロンビアが4年前ほどいい状態にないことは確かだが、フランス戦の後半はすばらしかった。2点のビハインドを跳ね返して勝利を収めたことは、失いかけていた自信や信念を取り戻すきっかけになるかもしれない。なにしろ、コロンビアは南米予選のラスト4試合でひとつも勝利がなかったからね。



好調を維持しているハメス・ロドリゲス

 もちろん、テストマッチの勝利にそれほど意味がないことは承知しているが、本大会3カ月前に優勝候補の一角であるフランスに勝利した意味は大きい。手薄な中盤でマテウス・ウリベ(クラブ・アメリカ)が好パフォーマンスを見せたことも前向きな要素だし、4年前、ラダメル・ファルカオ(モナコ)のケガにかなり頭を悩ませたことを思えば、現時点で主力にケガ人がひとりもいないことは特筆すべきことだといえる」

 一方、ベルギーで行なわれた日本対マリ(1-1)も現場で取材したというワーズウィック氏は、日本の戦いぶりについても触れた。

「テストマッチは新しいアイデアや選手を試す場とはいえ、日本の戦いぶりが物足りなかったのは否定できない。後半は何度か前線でのいい動きも見られたが、全体としては攻撃の迫力を欠いており、ラストパスはもれなく的外れだった。

 ゴールを決めた途中出場の中島翔哉が日本ではかなり評価されたようだが、日本が同点に追いつけたのは、マリのGKとDFに明らかに混乱があったから。アフリカ最終予選でグループ最下位に終わった相手との対戦だったことを考えても、あまりに低調な出来だったと言わざるを得ない」

 4年前にブラジル・クイアバで行なわれたW杯の日本対コロンビア戦も取材しているワーズウィック氏は、「日本の成長を見ることはできなかった」と断じた。

 では、コロンビア国内では、日本についてどう報道されているのか。

「報道されたことといえば、W杯2カ月前にハリルホジッチが解任されたことくらいだ。コロンビアで新監督のニシノ(西野朗)はほとんど知られていない。ハリルホジッチは、ピークを迎えてすでに5年以上が経過する本田圭佑や香川真司から、若手にシフトさせようと思ったのだろうが、その判断がロッカールームに悪影響をもたらしたのではないか。

 ハリルホジッチのやり方に問題があったかどうかはわからないが、いずれにしろ問題が深刻化した背景には、本田や香川らに替わるタレントの実力不足があったのではないだろうか。マリ、ウクライナ、ハイチと、いずれもW杯出場を逃した国々に勝てなかったことを考えても、日本はW杯の準備がまったく整ってないと見られている」

 さらにハリルジホジッチの解任について、ワーズウィック氏は続ける。

「解任の理由については、JFA(日本サッカー協会)からも正確には語られていないようだが、このタイミングでの解任には違和感があるし、奇妙に映る。解任するにしても、もっと早いタイミングはあっただろうし、後任のニシノにももっと時間が必要だったはずだ。ニシノは代表選手のことをよく知っていて、日本では尊敬を集めているようだが、現場ではここしばらく何の成果も挙げていない。そのうえ親善試合を数試合こなしただけでコロンビア戦を迎えなければならないのは、どう考えても理想とはほど遠いだろう」

 ブラジルW杯での対戦は4-1とコロンビアの圧勝に終わったが、6月14日にサランスクで行なわれる再戦でも、「コロンビアの優位は動かないとみるのが妥当だ」と、ワーズウィック氏は言う。

「直前での監督交代で日本が混乱のさなかにあることを思えば、『日本にとってコロンビアはあまりに強すぎる相手だ』という私の考えは一層揺るぎないものになった。とりわけ、コロンビアが早い時間帯に先制するようなことがあれば、前回のW杯と似たようなスコアになってもおかしくない。

 コロンビアは、優勝候補に挙げられながら1次リーグ敗退に終わった94年アメリカW杯がそうだったように、大きな期待を背負ったときほど大失敗してきた歴史がある。とはいえ、正直、コロンビアが日本にてこずりそうな要素はひとつも見当たらない」

 たしかに、客観的に見ればコロンビア優位は当然なのかもしれない。だが、コロンビアにつけ入る隙はないのか。

「日本が勝ち点1でも挙げるためには、まずはコロンビアの攻撃を封じることだ。ホセ・ペケルマン監督がこれまで何度も認めているように、コロンビアは南米予選でも組織的に守りを固めてきたチームに対しては打開策を見出すのに苦労してきた。特にそれが顕著だったのは、ベストメンバーにはほど遠い相手を試合終盤まで崩せなかったホームでのボリビア戦であり(最終的には1-0で勝利)、スコアレスドローに終わった3月のオーストラリア戦だ。

 もちろん、コロンビアにはハメス・ロドリゲス(バイエルン)のように、一瞬のひらめきで状況を打開できる選手がいる。日本にとって、ディフェンスラインを低くして守りを固める戦いはリスクをともなう。しかし、コロンビアがカウンターや素早い攻守の切り替えからの攻撃を武器にしていることを考えれば、まずはディフェンスラインを低く設定して、スペースを与えないことが、最も可能性がある戦いになるのではないか。

 失点さえしなければ勝ち点1は手に入るし、何しろコロンビアにとって最大のウィークポイントがGKダビド・オスピナ(アーセナル)だということを考えれば、スコアレスの状態が続けば何が起きても不思議ではないだろう」

 すでに国内合宿を終えたコロンビアは、6月1日にはイタリアのベルガモでエジプトとテストマッチを行ない、0-0に終わった。12日にW杯期間中のキャンプ地であるカザンへ移動するが、その前にもうひとつテストマッチが組まれる可能性がある。また、イタリア合宿からは、新たに元アルゼンチン代表MFエステバン・カンビアッソがコーチングスタッフに加わった。

 南米予選終盤には下り坂だったコロンビアも、ここにきて調子を上げており、戦いは簡単ではないだろう。だが、日本への警戒が薄いことを考えれば、油断や隙が生まれても不思議ではない。前回は第3戦での対戦で、日本には勝利のみが求められた。だが今回は初戦での顔合わせで、状況は異なる。初戦でコロンビアのエンジンがかかり切ってないことも予想され、そこにチャンスがあるとも言えるかもしれない。