チャンピオンズリーグ(CL)3連覇を成し遂げたのもつかの間、レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督が5月31日に会見を開き、突然の辞任を表明した。そして、昨オフに解体したバルセロナのMSNに続いて、来季はチームの象徴であるBBC…

 チャンピオンズリーグ(CL)3連覇を成し遂げたのもつかの間、レアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督が5月31日に会見を開き、突然の辞任を表明した。そして、昨オフに解体したバルセロナのMSNに続いて、来季はチームの象徴であるBBCもなくなりそうな気配だ。



CL決勝で喜びを分かち合うベンゼマ、ベイル、ロナウド

 リバプールとのチャンピオンズリーグ(CL)決勝を3-1で制したあと、レアルのガレス・ベイルはマン・オブ・ザ・マッチの記者会見で去就について2度も質問された。

「当然、自分は毎週プレーする必要があると感じている。今季はいろんな理由でそれが実現しなかった。(ウェールズがワールドカップに出場しない)今年の夏はたくさん時間があるので、エージェントとひざを突き合わせてゆっくり話し合いたい」

 決勝では61分に投入され、その2分後に見事なバイシクルシュートを決めると、83分にはブレ球の強烈なミドルでリバプールのGKロリス・カリウスを正面から打ち破った。4年前のアトレティコ・マドリードとのファイナルでも決勝点を奪ったウェールズ代表は、またしても至高の大一番で”違い”を見せつけた。ただし、リスボンでは先発して延長まで戦い抜いたが、キエフでは30分ほどしかプレーしていない。

「(先発ではないと告げられた時は)もちろん、すごく残念だった。最近はいいプレーもしていたし(リーグ戦では過去4試合で5得点)、自分は先発にふさわしいと考えていた。でもプロフェッショナルとして、チームは11人だけで成り立っているものではないと理解している。出番がくれば、チームの力になれるように全力を尽くそうと思っていた」

 口ぶりは明るかった。CL決勝史上屈指の鮮烈なゴールを決め、レアルの歴史に再び名を刻んだのだから当然だ。しかしそのすっきりした表情は、新たな旅立ちを決意した人のそれに見えなくもなかった。これ以上ないほどの置き土産を残し、自ら最高の花道を作って。

 ベイルとジダン監督の関係は、ずいぶん前にこじれてしまったと言われている。

『タイムズ』紙によると、指揮官は28歳のウイングに守備時のさらなる貢献を求めたが、ベイルは「アタッカーがそんなことをする必要はない」と反論したという。以降、先発の機会が激減していった。決勝後に監督から活躍を讃えられる言葉を受けたかと問われると、「ノー」と言って頭を振った。

 一方のジダン監督は会見で、次のように話した。

「(ベイルのことについては)少し複雑なシチュエーションだ。誰にも自分の意向があり、自分の未来について考えている。だが、最終的にはチームが優先されねばならない。私はそのためにベストを尽くしている。

 確かにもっと多くの出場機会が必要だと感じる選手はいるだろう。けれども、それを決めるのは監督だ。ベイルはCL決勝で大きな違いをつくり、素晴らしいゴールを決めた。それは彼が、より長くプレーすべき選手であることを証明したことになるが……」

 ジダン監督の辞任によって状況は変わるかもしれないが、ベイルの新天地は、マンチェスター・ユナイテッドか古巣トッテナムが有力視されている。英国メディアが伝えたところによると、前者はすでに7000万ポンド(約101憶6100万円)を用意しているが、レアル側は少なくとも2億ポンド(約290憶3200万円)を要求するはずだという。また後者は2013年にベイルをレアルに売却した際、買い戻しのオプションを条件に盛り込んでいたと報じられている。

 一方、クリスティアーノ・ロナウドも移籍をほのめかす発言をした。

 試合直後のピッチ上で、「マドリーでの日々は最高だった」と、別れの準備をしているとも取れるような言葉を口にした。こちらはかねてから契約更新についてフロントと意見が合わず、フロレンティーノ・ペレス会長との不仲説が流れている。ロナウドと彼のエージェントは、リオネル・メッシとネイマールを超える世界最高の待遇を求めているのだという。つまり、こちらはいい条件を引き出すための戦略なのかもしれない。

 ロナウドの発言について尋ねられたジダン監督は、「彼はここ(レアル)にとどまらなければならない。答えはイエスしかない」と返答した。またスペインメディアによると、主将のセルヒオ・ラモスは、「クリスティアーノにとって、レアルよりもいい場所はない」と話している。

 現実的に考えて、ロナウドの高給を支払えるクラブは数少ない。また、そんな金満クラブであっても、33歳のアタッカーの獲得に喜んで数億ユーロを払ったりはしないだろう。ロナウドは今季も多くの得点記録を塗り替えたが、クライマックスでは強引な突破やシュートミスが目立った。超人的な肉体を持っているが、言うまでもなく彼も人間なのだ。

 現時点では、移籍の可能性が高いのはベイルだろう。さすがに2人とも同時に放出するようなことはないはずだが、ワールドカップのある夏は移籍市場も熱くなりがちだ。

 今季、BBCがそろい踏みした試合は数えるほど。それでも、ここ数年のレアルは充実する控えの力によって難局を乗り越え、タイトルを掴んできた。スペイン出身の若手の成長は心強いが、BBCのいずれかを欠くことになれば、代役を獲得すべきと騒がれるはずだ。それはパリで不満を溜め込んでいるブラジルのエースになるのだろうか……。