西野朗監督が就任して初めての対外試合となる、『キリンチャレンジカップ2018』のガーナ戦が5月30日に行なわれます。その翌日には、ロシアW杯に臨む最終メンバーが発表されることもあって、非常に注目度の高い試合になりますが、私がとくに注…



 

 西野朗監督が就任して初めての対外試合となる、『キリンチャレンジカップ2018』のガーナ戦が5月30日に行なわれます。その翌日には、ロシアW杯に臨む最終メンバーが発表されることもあって、非常に注目度の高い試合になりますが、私がとくに注目しているのはFWの岡崎慎司選手です。


最終メンバーに入り、ロシアW杯で前回のリベンジを狙う岡崎

 photo by Getty Images

 2008年、テレビ朝日に入社して間もない私が、初めてインタビューを担当したサッカー選手が岡崎選手でした。当時は清水エスパルスのエースとして活躍し、A代表に招集されるようになってきた時期。結婚して間もなかった岡崎選手が「奥さんに耳かきをしてもらう瞬間が幸せ」と話してくれた微笑ましいエピソードが、今も印象に残っています。

 岡崎選手は、日本代表では盛り上げ役、ムードメーカーのひとりで、時には”いじられ役”となってチームの雰囲気を明るくする存在。一方、プレーでは肝心な場面でビシッと決めてくれる頼もしいストライカーです。

 代表での通算ゴール数は、ガーナ戦に臨むメンバーのなかで最も多い50。そのことが、ゴールが欲しい場面での”勝負強さ”を証明しています。実績十分のFWとして、西野監督が「代えの利かない選手」と評するのも頷けます。

 しかし、昨年9月のW杯最終予選・サウジアラビア戦を最後に、岡崎選手は代表から遠ざかっていました。その原因について本人は「自分の思うようなプレーができず、確固たる地位が築けていなかった」と認めています。



photo by Yamamoto Raita

 それまでの岡崎選手は、「レスター、日本代表それぞれで求められるプレーの質が違う。その両方に応えないといけない」と考えていました。そう思いつつも、レスターで積み上げてきたプレースタイルと、代表で求められるプレーの違いに悩んでしまい、「どうすればいいのか……」とマイナス思考に陥ったこともあったといいます。

 それでも、一度代表に呼ばれない期間があったことで、「代表でも、レスターと同じプレーをしようと、開き直ることができた」という岡崎選手。レスターでのプレーに磨きをかけ続け、そのことが今回の代表復帰につながったのだと思います。

「サウジアラビア戦後は代表に呼ばれていなかったので、チーム事情が詳しくわからない部分もあります。それだけに、監督交代には正直なところ驚きましたけど、誰が監督になっても、試合で自分に何ができるかを証明しないといけない。ただそれだけなんです」

 代表復帰についてそう語った岡崎選手の最大の武器はハードワーク。ポジションについては「ワントップ、トップ下、サイド、どこを任されても、持ち味を出しきること、そして走りきることが大切」と、どんな状況でも全力プレーを宣言しています。

 レスターでの岡崎選手は、1年目は「パスが出たら走ろう」という意識だったのが、2年目は「パスが来なければ、後ろでセカンドボールを追うように」と変化。そして現在は、「自分がいけると思ったタイミングですぐに走り出し、パスがもらえなくてもあきらめずに走り続けて、味方からボールを引き出せるようになった」といいます。

 考える前に動き出すことで、チームメイトのジェイミー・バーディー選手やリヤド・マフレズ選手の高速パスにも間に合うようになり、今シーズン序盤は好調を維持していました。そうしたプレーでチームを引っ張ることができる岡崎選手のエネルギー、推進力を、西野監督は期待しているのではないかと思います。



photo by Yamamoto Raita

 岡崎選手のW杯への熱い思いを支えるのは、2014年のブラジルW杯で味わった悔しさです。

 当時の岡崎選手はブンデスリーガで活躍してゴールも決め、「W杯でも点が取れる」という手応えを持って大会に臨んでいました。しかし、結果は1ゴールのみ──。日本代表は未勝利に終わり、3試合でブラジルを去りました。「いろいろなことを考えさせられた」岡崎選手は、敗因について、チーム全体に「自分たちはできる」という過信があったと分析しています。

「各国の選手が目の色を変えて、相手のよさ、長所を消そうとプレーをするのがW杯。100パーセントの力を出すのは難しく、出せても5、6割。4年前はそこが理解できていなくて、うまくいかない状況に直面して慌てて、混乱してしまいました」

 結果を残せなかったブラジルW杯では、「何してんねん。俺ら」と悔しさを噛みしめた岡崎選手。大会直後には、本田圭佑選手、長友佑都選手たちと話し合い、「もっと日本代表を強くしてみせる」と決意を新たに再スタートして、4年後のロシアW杯を目指してきたのです。

 ロシアW杯を目標に、不利な状況を打破する気持ち・技術・戦術を磨き、最終的に代表に選ばれないことも覚悟しながら、それでも年齢などを言い訳にせずに全力で準備をしてきた岡崎選手は、今回のW杯への思いをこう語っています。

「4年前の自分とは違うことを証明し、前回以上の結果を残したい」

 こちらの質問に対して、構えることなく全力で答えてくれる姿勢、等身大の自分で勝負する姿勢は、私が初めて取材をしたときと同じで、いまも変わらないのだとあらためて感じました。

 30日のガーナ戦でも、岡崎選手がピッチに立てば、気持ちを前面に出した泥臭いプレーでゴールを狙ってくれるはず。岡崎選手の”らしい”プレーに期待するとともに、西野監督の初戦となる日本代表の躍動に期待しています!