4月のアイスショー「コンティニューズ・ウィズ・ウィングス」で、ノービス時代からのプログラムを演じた羽生結弦が、再び元気な姿を見せてくれた。



ショー冒頭でトリプルアクセルを跳ぶなど、順調な回復をうかがわせた羽生結弦

 4月のショーのあと、いったん本拠地のトロントに戻ってリハビリを続けていたが、今年も昨年に続いて「ファンタジー・オン・アイス」に出演するためにもふたたび日本へ。その開幕となる5月25日の千葉・幕張公演では、ジャンプも入れた演技を披露し、ジャンプを抜いた滑りだった先月の演技と比べて、着実に回復していることを感じさせた。

 羽生がオープニングでいきなりトリプルアクセルをきれいに決めると、満員の観客は大歓声。昨年はシーズンインへ向けてショートプログラム(SP)の『バラード第1番ト短調』を演じていたが、今年はまだそこまでの準備ができていない状態のようだった。

 ハビエル・フェルナンデスやエフゲニー・プルシェンコ、エフゲニア・メドベデワ、テッサ・バーチュ&スコット・モイヤーらが第1部と第2部で2回の演技をするなか、羽生は第2部の大トリとして、昨年からグループとしての活動を再開したケミストリーが歌う『ウィング・オブ・ワーズ』とコラボレーションの演技を見せた。

「ジャンプはまだ練習での種類を制限している状態で、アクセルとトーループ、サルコウをリハビリとして跳んでいる段階です。本当に難しい入り方とか難しい降り方などにはまだ着手できていません。右足首のケガの状態としては、ループとルッツ、フリップと、五輪の時に一番痛みを感じていたジャンプをやらない限りは、痛みが出ない状態です」

 演技後にこう話した羽生だが、公演初日に見せた演技は、少し思い切りできるようになった嬉しさが表に出ているような溌剌(はつらつ)としたものだった。

 大トリの演技では、最初のジャンプだったトリプルアクセルをオープニングよりきれいに跳ぶと、体の上下の動きもうまく使ってノビノビとした滑りで、3回転トーループもきれいに決めた。そして、キレのいい滑りでステップシークエンスを見せると、最後はチェンジフットコンビネーションスピンで締めくくった。

 羽生は、話題になっている来季のルール変更についてはこう語った。

「まだ完全に決まっているわけではないので、明確なコメントはできませんが、僕にとってはどんなルールになってもフィギュアスケートが好きだという気持ちは変わらないです。

 フィギュアスケートという勝負の世界にいるからにはトップに立ちたいという気持ちがあるので、どんなルールでもそれに対応して勝てるという自信をつける練習をしていきたい」

 さらに、気になるコンディションについては、「右足のつま先に強い衝撃を加えて跳ぶルッツとフリップは、まだ動作もやっていませんが、ループに関しては軸を取る練習などで1回転をやったり、上がるだけのジャンプもやっています。それも本当に1日に1回か2回やるようになってきたところ。それ以外のアクセルとトーループ、サルコウに関しては3回転までできるようになっています」と、少しずつ上向きになってきているようだ。

 いまの羽生は、アイスショーの演技で、自分ができる最大の表現を追い求め、その中から次につながる感触を得ようとしているのだろう。

「ファンタジー・オン・アイス」初日は、キレのある動きで軽快な滑りだったが、2日目の滑りにはそこに気持ちの昂(たかぶ)りや力強さが加わっているようにも見えた。同時に、そんな気持ちが大きくなりすぎたのか、つなぎの部分で転倒し、苦笑するシーンもあった。

 だが、それも羽生がその日、その時の感情を、プログラムに目一杯反映させたいという思いゆえに他ならない。これから続く公演で、その日その日にどんな気持ちを込めた滑りをするのかも楽しみになってくる。アイスショーでの演技のひとつずつが、彼の完全復活へ向けての道程になるからだ。