最高の賞に笑顔、福島わさな。(撮影/松本かおり) 祝福した仲間の声がパーティー会場に響き渡った。私たちのエースにスポットライトが当たったことが嬉しくて、誇らしくて。 日本体育大学ラグビー部女子が年間女王の座を手に入れて幕を閉じた太陽生命ウ…

最高の賞に笑顔、福島わさな。(撮影/松本かおり)


 祝福した仲間の声がパーティー会場に響き渡った。私たちのエースにスポットライトが当たったことが嬉しくて、誇らしくて。
 日本体育大学ラグビー部女子が年間女王の座を手に入れて幕を閉じた太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ2016。年間総合MVPには追手門学院大学女子ラグビー部の司令塔、福島わさなが選ばれた。今季4大会で16トライ、65コンバージョン、計210得点の活躍。抜群の数字を叩き出し、もっとも価値ある選手と評価された。

 仲間の大きな祝福と、大会で戦った選手たちの拍手の中で壇上に立った福島は、最初は驚いた表情を見せたものの、やがて笑顔になった。今季4大会でチームを優勝に導くことができなかったのは悔しい。でも、自身の姿勢を見てくれていたのは素直に嬉しい。その胸中は、「ありがとうございます。嬉しいです。でも、私たちの目標は日本一。みなさんに追いつけるようにもっと頑張りたいと思います」の言葉に込められていた。

 元日本代表SHで理論家の後藤翔太監督のもと、順調に力を伸ばしている。福島に全幅の信頼を置く同監督は、細部にまで知識と技術を植え付けてきた。大胆な仕掛けと繊細なスキルで敵を翻弄、味方を活かすスタイルは、師匠譲り。福島は祝福の壇上で「(監督は)いつもふざけていますが、本気で教えてくれる人。私が怪我で入院したときは毎日足を運んでくれて、『治ったら頑張ろうな』と声をかけてくれた」と話し、絆の強さを伝えた。
「いつか優勝して、(監督を)胴上げしたいですね」

 今季最終戦となった富士山裾野御殿場大会で、チームはプレート優勝(5位)に終わった(シリーズ総合3位)。決して満足できない成績も、失敗して得られたものもあったと笑顔を見せた。
 カップトーナメント準々決勝でアルカス熊谷に19-21で敗れた。0-21の展開から終盤に猛攻を見せて迫るも、自身のコンバージョンが外れて優勝の目は消えた。福島はキック直後に両腕を膝につき、下を向いてうなだれた。しばらく動けなかった。
「(主将として)みんなに悔いを残さず戦おう、と言って試合に臨んだのに、自分自身が後悔するようなプレーをしてしまった」
 しかしその後、気丈にチームを牽引してプレートトーナメントを制した。まだ大学3年生。すべての経験が成長につながると信じている。

 今季自ら16トライを挙げたことについて、こう話した。
「(第1戦の)保土ヶ谷大会で、あまりいいプレーができなかったんです。だからその大会後、もっと自分で積極的に仕掛けて出るようにしようと思った。(多くの得点を挙げたのは)そんな気持ちでプレーした結果だと思います。本来はもっとまわりを活かすタイプなのですが、それでチームに勢いが出たこともあった。次は、それらを勝利に結びつかせたいですね」
 世界の舞台、五輪出場を視野に入れて過ごす毎日。スキルは高い。勝たせる司令塔へ、階段を昇り続けたい。