Andy Irons: Kissed By God

彼が急逝して、早いもので今年で8年が経つ。2018年5月、我々の知らなかった本当のアンディ・アイアンズがスクリーンに映し出される。

2002年、2003年、2004年と、3度のWSL(旧ASP)ワールド・チャンピオンに輝いたハワイ出身のスーパースター、アンディ・アイアンズ(Andy Irons)。

レギュラーフッターの彼が描く、大きくて力強いマニューバーは、3度のワールド・チャンピオンに相応しいものだった。ハワイ出身ということもあり、大きな波にもめっぽう強く、豪快に波を切り刻む姿は観ていてじつに爽快だった。

また、フォームにも彼独自のスタイルがあり、当時、強く惹かれたのは「右腕」の肘と手首の角度、そして使い方。メジャースポーツのサッカーで例えるならば、バイエルン・ミュンヘンに所属するアリエン・ロッペンといった感じだろうか。

自らの能力を向上させる独自のスタイルを持ち、一線を超えた結果をしっかりと残していく逞しさ。そんなところにも強く惹かれた。彼が活躍していた当時、筆者のまわりの多くのサーファーたちは彼のスタイルを真似ようと励んでいた。


photo:WSL / KAREN

そんなアンディ・アイアンズ(Andy Irons)に突然の不幸が訪れたのは2010年11月。32歳という若さでの急逝だった。

ワールドツアーを転戦中、WSL(旧ASP)ワールドツアー第9戦『Rip Curl Search』への出場のため、イベント開催地のプエルト・リコ入りしていたが、体調がすぐれずに棄権。地元ハワイへ帰る途中の経由地であったダラスのホテルで亡くなってしまった。

世界中のサーファーに衝撃を与えたあの悲しい事件から、早いもので今年で8年が経過した。彼を失ってしまった悲しみは癒えることはないが、2018年5月、我々の知らない本当のアンディ・アイアンズと再びスクリーンで出会うチャンスがやってきた。

我々は光り輝くスーパースターのアンディ・アイアンズしか知らない。しかし、光があれば必ず影ができる。もがき苦しんだアンディ・アイアンズの影にもフォーカスした、本当のアンディ・アイアンズを知ることができるドキュメンタリー映画だ。また、この映画は、スポンサーからの圧力に左右されることなく実話に仕上げたかったという製作側の意図から、資金をクラウド・ファンディングで募り、上映まで漕ぎ着けた作品だという。


photo:WSL / KIRSTIN SCHOLTZ

すでに今年の5月から、ロサンゼルス、ハワイ、ニューヨークでの上映がスタートしている。残念ながら、日本での公開はまだ決定していないようだが、1日でも早い公開を願っている。

憧れのスーパースターの真実、観ることに少しためらいもあるけれど、それでも同じ時代に光り輝いたアインディ・アイアンズをしっかりと目に焼き付けたい。


photo:WSL / STEVE ROBERTSON