前日は9回に2点差を追いつき延長でサヨナラという、この春のリーグ戦の勢いを象徴するような、劇的な勝利から一夜。一気に優勝を決めたかった慶大だったが、明大先発の伊勢が立ちはだかった。明大の好守にもはばまれ、3安打の完封負け。名門相手では、大久保監督も語る通りやはり連勝は難しい。強豪の意地を見せられ、勝負は1勝1敗のタイに持ち込まれた。

被安打2で試合を作った菊地

爽やかな五月晴れの下、プレイボールと同時に慶大応援席から流れた応援歌は「孔明」。慶明戦のみで使用される、力強い銅鑼の音と共に昨季王者の攻撃は始まった。しかし明大の先発・伊勢の前に上位打線はあえなく三者凡退。するとその裏、先発の菊地恭志郎(政4・慶應志木)は不運な立ち上がりとなる。先頭の佐野に死球を与えると、明大はすかさず送りバントで手堅くチャンスを演出。2死後、4番・越智のサードゴロを内田蓮(総4・三重)が弾いてしまいランナーが生還。ノーヒットで先制されてしまう。

得点は動いたものの、その後両投手は安打を許さず投手戦の様相を見せる。4回表、1アウトから河合大樹(総4・関西学院)が両チーム初ヒットで出塁し盗塁を決めた。まさに千載一遇、同点のチャンスだったが中軸の柳町達(商3・慶應)、郡司裕也(環3・仙台育英)が連続三振に倒れた。ここは明大先発の伊勢を捉えきれない。その裏、菊地が先頭の渡辺佳に四球を許し、越智の犠打でまたもノーヒットで得点圏に走者を進められてしまう。しかし変化球が冴える菊地は5番・森下智を空振り三振に打ち取ってみせた。続く逢澤のレフト方向への打球を河合がダイビングキャッチで捉え、ピンチを切り抜けた。

河合は攻守で存在感を発揮した

両軍の意地が見られたのが6回だった。表の慶大の攻撃。1死から小原和樹(環3・盛岡三)の打球をレフトがダイビングキャッチ。続く河合が二塁への内野安打で出塁し、またクリーンナップの前に走者が出た。客席の大きな期待を背負った柳町がセンターへ放った大飛球も、フェンスギリギリ高く跳んだセンターのグラブの中へ。マウンド上の伊勢だけでなく明大守備陣の気迫を見せつけられる。その裏、2死から菊地が渡辺佳についに初安打を許してしまう。しかし続く越智の打席で渡辺佳が盗塁を試みたところを、女房役の郡司が強肩で刺す。勝つためにはお互いもう1点もやれない。まさに首位攻防にふさわしい好プレーの応酬だった。

しびれる雰囲気のまま迎えたラッキーセブンの攻防。1死から5番・嶋田翔(環2・樹徳)が放った打球はレフトポールのかすかに左。ホームランとはならずそのあと三振となり、続く内田の打球も相手二塁手の攻守に阻まれてしまう。またも堅い守備が慶大打線にたちはだかった。その裏、マウンド上の菊地はこの回も先頭打者に四球を許し、続く打者の右翼前安打でピンチを迎えたところで援護のないまま御役御免。代わって登板したのは髙橋佑樹(環3・川越東)。しかし完璧な火消しとはならずタイムリーを許してしまう。重い重い追加点がのしかかった。

8回の攻撃も無安打に終わり、裏のマウンドに上がったのは田中裕貴(環4・芝)。2つの三振を奪うなどわずか8球でまとめ、1番から始まる最終回の攻撃へ希望を託した。9回の攻撃、小原、河合が簡単に打ち取られてしまうが、柳町がバットを振ることなく四球で出塁。打ち崩せなかった牙城・伊勢にも疲れが見えたか。そして一塁に柳町を置いて打席には郡司。昨日のサヨナラ勝ちの瞬間と同じシチュエーションだ。誰もが4番の打棒に期待をする中で、郡司は粘りを見せたが、最後はあえなくショートゴロに倒れ、試合終了。3塁を踏むことすら叶わず「完敗」を喫した。

ここまで無失点のリリーフを続ける田中裕

2位につけている明大との一戦、しかも勝てば優勝という大一番だったが、やはり連覇はそんなに甘くはなかった。しかし今月に入ってからの慶大を振り返ると、立大とのカード、初戦は落とすも9回に反撃で意地を見せ、2,3試合目は連続で逆転勝ちを決め勝ち点を奪取。昨日の明大戦も前述した劇的な逆転サヨナラ勝ちを飾った。今のチームには逆境を跳ね返す実力が確かにある。今季のスローガンの一節”I got family”のように、野球部全体がひとつになってこの向かい風を乗り切ってこそ、勝利の美酒に酔いしれることができるというものではないだろうか。

明日の試合は正真正銘の天王山となる。今こそ、陸の王者の誇りを見せる時だ。