アマチュア時代に高く評価した濵口遥大、京山将弥(ともにDeNA)などがプロで活躍し、評論家として慧眼(けいがん)ぶりを発揮している山本昌氏。50歳まで現役生活を続け、通算219勝を挙げたレジェンドが、春のセンバツ大会で光った高校生11投手を分析。第100回記念大会となる夏の甲子園大会に向けて、注目ポイントを語った。



昨年夏の甲子園でも活躍した大阪桐蔭のエース・柿木蓮

柿木蓮(かきぎ・れん/大阪桐蔭/181cm・87kg/右投右打)

体は大きいし、球の走りもいい。さすが全国から逸材が集まる大阪桐蔭でエースナンバーをつけるだけのことはありますね。楽しみな投手なのは間違いありませんが、少し気になるのは力を入れる際に左肩がわずかに下がるクセがあること。少しシュート回転が入るのはこのためでしょう。ボールを押してリリースするタイプなので、緩いボールを投げるのは苦手なはず。スプリットやシュートなど、速い変化球を磨くとより投球に生きるでしょうね。



センバツ決勝の智弁和歌山戦で先発完投し、優勝投手となった大阪桐蔭・根尾昂

根尾昂(ねお・あきら/大阪桐蔭/177cm・78kg/右投左打)

投手としても野手としても注目されている選手ですが、いずれもドラフト上位指名を受けるだけの可能性を持った逸材です。まさにセンス抜群の選手ですね。投手として際立つのはバランスの良さ。落ちるボールもありますし、高校生としては比較的早い段階でプロの一軍で投げるイメージが湧いてきます。課題は体重移動の際に左肩が上がって、上下にあおる動きが入ること。時折ボールが抜けたり、リリースがブレるのはこのためです。ただ、それも体の力がついてくれば解消されていくでしょう。大谷翔平選手に続く、プロでも投打二刀流の可能性を感じさせる楽しみな選手ですね。



センバツでは初戦で近江に打ち込まれたが、能力の高さを証明した松山聖陵の土居豪人

土居豪人(どい・ひでと/松山聖陵/190cm・80kg/右投右打)

今季一軍で活躍し始めているアドゥワ誠投手(広島)の後輩なんですね。彼もアドゥワ投手に負けず劣らずの、素晴らしい素材です。非常に身長が高く、上から投げ下ろす角度がある上に、ボールの走りもいい。また、縦に大きく変化するカーブの質がまたいいですね。昔で言う「ドロップ」のような、最近はあまり見ない、きれいな変化をします。まだ体は弱いし、アウトステップ気味という課題はあります。実際に春のセンバツでは近江高に打ち込まれましたが、将来性はピカイチだと感じます。



サイドから140キロ台後半のストレートを投げ込む明徳義塾のエース・市川悠太

市川悠太(明徳義塾/184cm・75kg/右投右打)

非常に完成度が高い投手という印象ですね。サイドスローとスリークォーターの中間くらいの横の角度から投げ込む投手ですが、球の走りは強烈だし、コントロールもいい。こういうピッチャーがプロに入ると、すぐに中継ぎ投手として使えるイメージが湧いてきます。左右の違いはありますが、2年前に見た堀瑞輝投手(日本ハム)のようなタイプ。高校生ながら即戦力の可能性を秘めた投手です。



甲子園では制球を乱し初戦で敗退したが、長身から投げ下ろすストレートが魅力の東邦・扇谷莉

扇谷莉(おうぎや・らい/東邦/187cm・94kg/右投右打)

甲子園では結果を出せませんでしたが、素材としてはとても面白いと思います。まだ粗削りでも体に力があるし、ボールに角度もある。縦に大きく曲がる変化球もいいですね。体の使い方からしてフォークボールを得意にしそうなタイプ。これからコントロールがまとまってくれば、いいセットアッパーになる予感がします。



センバツ準優勝の智弁和歌山に初戦で敗れたが、堂々の投球を披露した富山商の沢田龍太

沢田龍太(富山商/183cm・82kg/右投右打)

投球フォームは理想に近いと感じます。投手らしい、ほどよい肉づきの体型で、股を割って前でリリースできる。キレのいいボールを投げるし、スライダーはアウトコースへのコントロールがいい。縦に落ちるフォークもありますし、高校生でこれだけ投げられれば、そうは打たれないでしょう。上のレベルで活躍するには、ストレートを磨いてほしいですね。シュート回転して外から真ん中に入るケースが見られますが、体に力がついてくれば体が早くほどけることなく、強いボールが投げられるようになるでしょう。



甲子園で自己最速の144キロをマークした乙訓・川畑大地

川畑大地(乙訓/173cm・63kg・右投右打)

上背はないけれど、最速144キロとスピードがあり、体全身を使ってキレのいいボールを投げる好投手。センバツでは富山太樹投手との二枚看板で1勝を挙げましたが、十分に勝ち上がるだけの要素を持っています。課題は左肩が少し早く開いてしまうため、右肩を回す時間が取れないこと。ボールもシュート回転する傾向があります。その点では、まだ伸びしろを感じさせる投手ですね。



センバツ3回戦の花巻東戦では9回を無安打無得点に抑えるも、延長10回にサヨナラ負けを喫した彦根東の増居翔太

増居翔太(彦根東/171cm・64kg/左投左打)

私は神奈川(日大藤沢)の高校球児でしたので、センバツでは慶應義塾に勝った投手として注目していました。左腕から140キロ近い球速を出せる投手は貴重ですし、体が細いので成長の余地を残しています。ストライクゾーンに向かって体を持っていける投げ方で、コントロールが荒れないのは大きな武器ですね。縦のカーブもあるし、大学で体を作ればますます楽しみな投手になりそうです。



最速143キロのストレートと多彩な変化球が魅力の由利高のエース・佐藤亜蓮

佐藤亜蓮(あれん/由利工/174cm・77kg/右投右打)

チームは21世紀枠で出場しましたが、体に力のある投手に見えます。カットボールなど、鋭い変化球を器用に扱ってストライクを取れるのもいいですね。もう少しテイクバックでバックスイングを大きく取れると、より伸びのあるボールが投げられるようになるはずです。



最速147キロを誇る来年のドラフト上位候補の日大三・井上広輝

井上広輝(日大三2年/180cm・74kg/右投右打)

初めて見ましたが、これは強烈なボールを投げる2年生ですね。まだ粗削りでフォームに安定感はないですが、何より腕が振れるというのがいい。まだ2年生になったばかりなのに、150キロ近いボールをバンバン投げているのは驚異的です。体はまだ大きくなりそうだし、伸びしろは大いにあります。とても楽しみな投手ですね。



宇ノ気中学時代に全国制覇を達成した星稜の奥川恭伸

奥川恭伸(星稜2年/182cm・81kg/右投右打)

中学時代には軟式野球で全国制覇した投手と聞きましたが、体のブレがないのでストライクを取るのに困らない投手に見えました。2年生でも体は大きいし、腕の振りも強い。あとは体を作って、もっと体重移動をして捕手寄りでボールを投げられるようになれば、シュート回転するクセが徐々にやわらいでいくはずです。股関節が硬いというより、体重移動する意識が薄いように感じるので、伸びる余地は大いにあります。

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 現時点で私が特に面白い投手だなと感じたのは、根尾くん(大阪桐蔭)、市川くん(明徳義塾)、土居くん(松山聖陵)の3人です。

 プロでもすぐに使えそうなのは市川くん。将来性の高さなら土居くん。伸びしろがあり、さらに比較的早く出てくる可能性もある根尾くん。それぞれに個性があって楽しみです。

 高校生は2年の冬から3年の夏にかけて、別人のように伸びる投手がいます。今夏の甲子園は100回記念大会で出場校も55校と増えますし、まだ見ぬ逸材も登場するでしょう。驚くような好素材のピッチングが見られることを期待したいですね。

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