「今はともかく、長いシーズンが終わってホッとしています」 北海道北見市のアドヴィックス常呂(ところ)カーリングホールで行なわれた『全農 2018パシフィック・アジア・カーリング選手権(PACC)日本代表決定戦』で、3連勝して代表の座を保…

「今はともかく、長いシーズンが終わってホッとしています」

 北海道北見市のアドヴィックス常呂(ところ)カーリングホールで行なわれた『全農 2018パシフィック・アジア・カーリング選手権(PACC)日本代表決定戦』で、3連勝して代表の座を保持したロコ・ソラーレ北見(LS北見)のリード・吉田夕梨花は、率直な感想をそう口にした。彼女のこのコメントは、チーム全体の総意と言えるだろう。



富士急との日本代表決定戦を制したLS北見

 ちょうど1年前の昨年5月、LS北見は例年よりも早くオフを切り上げて、今季に向けて始動。陸上トレーニングと氷上練習を並行して重ね、夏には道内で行なわれたカップ戦に続けて出場し、9月の平昌五輪トライアル(中部電力との代表決定戦)に備えた。

 トライアルを制すと、すぐにカナダへ飛んだ。11月のPACC(開催地:オーストラリア・エレナ)に向けて、ワールドツアーに参加しながらチーム力の底上げを図った。

 そして、PACCを準優勝で終えて、日本の世界選手権の出場枠獲得という最低限のタスクをこなすと、再びカナダに戻ってツアーに参戦。11月下旬にチーム史上最高の成績を引っ提げて帰国し、12月の軽井沢国際で優勝して2017年を締めくくった。

 年末年始に短いオフを過ごしたあとは、コンチネンタル杯(カナダ・ロンドン)に出場するなどして、平昌五輪に向けてシーズン3度目のピークを作った。その結果、銅メダルを獲得。日本カーリング界初の快挙を達成した。

 その後も、カーリングフィーバーに沸く日本に戻って、3月には藤澤五月、吉田知那美、吉田夕らはミックスダブルスの日本選手権に出場。さらに4月には、ツアー最高峰タイトルのグランドスラム(カナダ・トロント)に招待され、日本のチームとして初めてクオリファイ(プレーオフ進出)を果たす。

 その間、ミックスダブルス日本選手権で優勝した藤澤は、スウェーデン・エステルスンドで行なわれたミックスダブルス世界選手権にも出場。日本勢史上最高の5位という結果を残した。

 そこから、連休前に帰国したチームの面々は、今度は今回のPACCトライアルへの準備に入った。

 その今季最終戦。疲れはあった。LS北見の全選手が、それを認めた。

 それでも、リードからスキップまでのショットは、対戦相手の富士急を上回った。ポジションごとに上回っていないエンドやゲームがあっても、他の選手が好ショットを決めてカバーしたり、ミスした本人がスイープやウエイトジャッジなどの違う面で貢献したりして、相手につけ入る隙を与えなかった。

 富士急のスキップ・小穴桃里(こあな・とうり)が、「向こうにもミスはあったけど、そのミスも最低限のもので、即失点に結びつかない。そして、ミスしたあとの修正が早い」と大会を振り返ったとおり、ミスをミスにしない総合力を備えるLS北見が、富士急よりも一枚上手だった。

 片や、3月に初めて世界選手権に出場した富士急も、その成長ぶりを存分に発揮した。特に、小谷優奈(サード)と有理沙(リード)の姉妹が見せたパフォーマンスは出色だった。

 世界のアイスを経験して、ショットやスイープの精度に対する意識が変わった印象だ。詳細にコミュニケーションをとって、よりよい形を作ろうと、どのゲームでも尽力していた。

 また、小穴は「私たちは、昨年の日本選手権で負けて(平昌五輪出場を逃して)から、(2022年の)北京五輪を目指してこの1年やってきた」と語った。それについてLS北見の主将・本橋麻里は、「まだかなりの先の話なのに、『北京を目指して……』とはなかなか言い切れない。あの意志の強さと、チーム内のグッドコミュニケーションで、(自分たちの)いいライバルになってくると思う」と警戒しつつも、好敵手の存在を歓迎した。

 北京へのレースは静かに、しかし確実に始まっている。

 これで今季(2017-2018シーズン)、五輪イヤーのシーズンは閉幕する。LS北見や富士急をはじめ、多くのチームが2~3カ月ほどの長期間のオフに入る。現状では来季(2018-2019シーズン)、富士急が7月のアドヴィックス杯(北見市常呂町)、LS北見は9月のワールドカーリングツアーに照準を合わせて始動していく予定だ。

 来季は五輪こそないが、9月から世界ランキング上位チームを集めた新設のW杯が開幕する。また、11月のPACCでLS北見が世界選手権(2019年3月)の出場枠を得れば、年明けの日本選手権(札幌/2019年2月)がそのトライアルとなる。

 世界への扉は常に開いている。1チームでも多くのチームが世界に挑戦し、そこで結果を残して国内に還元することが、カーリングを一過性のブームで終わらせない最良の道となるのではないだろうか。