ラグビー日本代表は6月11日(日本時間12日)、バンクーバーのBCプレイススタジアムでカナダ代表と激突する。左WTBのポジションで先発する笹倉康誉は、27歳にしてテストマッチ(国際間の真剣勝負)デビューを迎える。「緊張もしていますけど、い…

 ラグビー日本代表は6月11日(日本時間12日)、バンクーバーのBCプレイススタジアムでカナダ代表と激突する。左WTBのポジションで先発する笹倉康誉は、27歳にしてテストマッチ(国際間の真剣勝負)デビューを迎える。

「緊張もしていますけど、いい感じです」

 試合会場での前日練習を前に、マーク・ハメット ヘッドコーチ(HC)代行から当日に着るジャージィを受け取った。桜のエンブレムのついた、日本代表の背番号11の1枚だ。周りから「チャチャ」と呼ばれる万能BKは、「気持ちが上がった」と実感を語る。

「いままで(いろいろなチームで)11番で出てきましたけど、国の代表として渡されると重みを感じます。これまで代表の11番をつけた人に恥じないように、とも思いました。下手なプレーはできない」
 
 公式サイズを身長186センチ、体重92キロとする。今季は国際リーグのスーパーラグビーに挑戦。日本から初参戦するサンウルブズと契約し、ここまでWTBとして5試合に出場してきた。

 国内ではパナソニックで不動のFBを務め、日本最高峰のトップリーグで3連覇を経験。周囲のプレーに呼応しながらスペースに駆け込むなど、数字に現れぬ無形の強さを誇る。

 一方、サンウルブズでも指揮を執るハメットHC代行からは、「フィジカル」が課題だと指摘された。事実、南半球の強豪クラブとのゲームでは、しばしコンタクトシーンで跳ね飛ばされた。ベンチに入りながらも出番のなかったゲームも2つ、経験。田邉淳アシスタントコーチにも肉体強化の必要性を説かれた。ウェイトトレーニングに集中し、ぶつかり合いへの耐性を身に付けていった。

 4月23日、東京・秩父宮ラグビー場。ジャガーズとの第9節でリザーブ入りした。ビリアミ・ロロヘアの負傷退場に伴い、キックオフ早々にグラウンド入り。前半20分にトライを決めるなど、意気揚々とピッチを駆け回った。

 36-28。クラブ史上初白星を獲得した。

 もっとも、以後は出番から遠ざかった。WTBにフィジー出身のジョン・スチュワートが起用されるゲームを、スタンドの外から見つめた。

「試合別に『お前はここがダメだったから』と指摘があったわけではなく、ジャガーズ戦は個人的にも手応えがあったんですけど…。ただ、その分、気付けたこともあった。試合のメンバーに選ばれちゃうと時間をかけづらいウェイトトレーニングも、たくさんできた」

 開幕前に比べ、いま、実際の体重を「6~7くらい」増やしたという。ハメットHC代行への再アピールの場でもあるカナダ代表戦を間近に控え、「明日は、貴重な日になると思います」。スーパーラグビーでプレーした時にはなかった武者ぶるいに、表情をこわばらせていた。

「何のために戦うかといえば…。いままで支えてくれた人たちに恩返しをしたいです。そわそわしています。当日はもっと緊張すると思うんですけど、頑張ります」(文:向 風見也)