6月13日に東京ドームで行われるXリーグ東日本選手権パールボウル決勝は、創部40周年で初出場のIBMビッグブルーと、クラブチームとなってからは初出場のLIXILディアーズが激突する。ここ3年間の戦いは3勝1敗でIBMが勝っている。2013年は当時鹿島ディアーズとして最後のシーズンにIBMが56-35で勝利。2014年は2ndステージとファイナルステージで2連続対戦。2ndステージでは38対10、ファイナルステージでは69対54とIBMが連勝し、JXBへと駒を進めた。しかし、昨秋の1stステージ最終節ではすでに一敗を喫し、後がなかったLIXILがIBMを33対25で下している。

近年3年間はハイスコアリングなエキサイティングなゲームばかりで、パールボウルも好ゲームが期待できる対戦カードだ。

この両チームの共通点は、あらゆる意味でここ数年、変化と進化を遂げてきたことにある。

LIXILは2014年の69失点をして以来、ディフェンスは大きく考え方を変えた。Bend but don't break(やられそうになっても何とか持ちこたえる=壊れないという意味)フットボールで言うと、レッドゾーンまではある程度進めるが、そこからがなかなか進めないようなスタイルに切り替えてきた。じりじりと進むことは許してFGは奪われるかもしれないが、一発TDだけは許さないスタイルになり、大量失点するゲームが減ってきた。

象徴的だったのは富士通戦の最初のシリーズだろう。富士通はレッドゾーンまでは容易く進んだが、レッドゾーンに入ってから苦しみ出した。最後は富士通QBキャメロンが無理な体勢で投げたパスをインターセプトに仕留め、シリーズを断ち切った。

この種類の守備の怖いところは、相手の攻撃に『いつでも攻め込める』という錯覚を起こさせることにある。圧倒的に攻めているのに点差が開かないという展開は、攻めている手応えのある方からプレー数と集中力を奪っていくのだ。

攻撃はQB加藤と前田、永川、宮本の日本代表トリオを筆頭にしたレシーバー陣のタイミングが素晴らしく合ってきている。前田、永川は加藤と6年目、宮本も5年目と、それほど複雑なことはせずに、阿吽の呼吸で『分かっていても止められない』高い精度でパスを通してくる。逆転勝利した富士通戦、オービック戦は本当に重要な場面でことごとくパスを決めており、決勝進出の原動力になっている。

この点においても富士通戦のLIXIL最初の攻撃に象徴的なシーンがあった。

第1ダウンでロスを強いられた第2ダウン15ヤードの場面。QB加藤はWR前田にパスを投げようとしたが、CBが前に反応するのを見て前田は迷わず、縦に進路を変更。加藤も一瞬投げる素振りを見せかけたが、前田の動きに素早く対応し、パーフェクトな軌道で前田のスピードを緩めることなく、リードボールを送り込んで84ヤード先制TDを奪った。一見、これはデザインされたヒッチ&ゴーのプレーに見えるが、これはCBが下がればストップする。上がってくれば奥に走るというオプションルートであろう。加藤と前田の絶妙な阿吽の呼吸が生んだビッグプレーだった。

一方のIBMはクラフト頼みのパスオフェンスからランニングゲームの確立を昨年から徹底的に取り組んでいる。本来、レシーバーを多く配置したスプレッド体型の最大の利点は、守備の配置を分散させることによってランを出しやすくなることにある。2015年日本代表のRB高木、2011年日本代表のRB末吉というタレントを擁するIBM攻撃の変化としては自然な流れといえるだろう。上位チームに対していかにランでゲームを構築できるか。パールボウル決勝はIBMにとっては大きなチャレンジと言える。クラフト加入以降、課題視されていたOLも人材が整ってきている。大舞台で実績を残したいところだ。

課題の守備についても積極的な補強を行ってきた。LBには早稲田出身で、大学世界選手権日本代表でも中心的役割を担っているコグラン、関学で活躍した作道が春の試合から活躍している。DLは福岡(関大)ら即戦力新人を揃えている。

最も大きな変化は新人QB政本の加入だ。準決勝の相模原ライズ戦は、クラフトが先発。最初の3シリーズはいずれも好ポジションから始まったにも関わらず得点はFGの3点どまりと、空回りしている印象だった。しかし、4シリーズ目に政本を投入すると、ラン、パス、スクランブルと小気味良いテンポで攻撃を指揮してあっという間にTDを演出。次のシリーズもTDを奪い、モメンタムを掌握した。次の攻撃はクラフトが戻ったが、クラフト自身も視野が広がり、タッチダウンを演出。攻撃コーディネーターを勤めるクラフトにとって、フィールドの外から守備を見る時間を稼げることは、とても大きな意味を持つ。これまでは一度歯車が狂うと立て直しがかきかなかったことがIBM攻撃の最大の課題だったが、クラフトをベンチに下げても攻撃を機能させられる政本が加入したことで、立て直せる可能性が高くなったのだ。

LIXILとIBM。進化と変化を遂げた両雄が激突するパールボウルは、伯仲の好ゲームになることは必至だ。以下に勝敗を分けるポイントを整理したいと思う。

1/IBMのラン攻撃対LIXILパス守備

LIXIL守備がクラフトのパスを警戒しているのは当然だが、パス守備重視の布陣で末吉、高木を止めることができるかが鍵を握る。仮にLIXIL守備がパス体型をとっている時に展開されるランを止めることができると、クラフトを混乱させることができる。昨年の対戦時はこの要素でLIXILが上回った。

しかし、IBMには政本というオプションがある。

2/LIXILのパス攻撃対IBMのパス守備

IBMクラフトとレシーバーのコンビネーションと比べてLIXIL加藤とレシーバーのコンビネーションは、完成度、成熟度が全く違う。クラフトのほうがパッサーとしての能力(=パスのスピードや遠投力)は高いが、レシーバーとのタイミングやコミュニケーションはLIXILのパスユニットのほうが完成度は高い。LIXILの統率のとれた精度の高いパス攻撃をIBM守備がいかに止めるかが鍵を握る。ポイントはパスラッシュ。IBMの大型DEブルックスが鍵を握るが、当然LIXILも対策を練ってくるだろう。そうなってくると他の選手のパスラッシュが鍵を握る。逆サイドのDEである森田、新人福岡や副将の藤井らが真のキーパーソンになりそうだ。

3/キッキングゲーム

リクシルはオービック戦、絶体絶命のピンチを前田の逆転パントリターンTDでひっくり返した。昨年のIBMとの対戦でも、LIXILの最初のTDはWR永川のキックオフリターンであり、どんな状況からでもビッグプレーを作り出すことができる選手が揃っている。LIXILにキッキングゲームでビッグプレーが出るとモメンタムは一気にLIXILに傾く。一方でIBMはK/Pに早稲田大出身の新人・佐藤が加入し、昨年よりもパントが安定してきている。ノジマ相模原戦では自陣25ヤードからのパントをゴール前1ヤードで抑え、IBMのセーフティに結びつけて試合を決定づけた。またIBMにはリターナーの栗原がおり、常にビッグプレーを狙える。キックを制したものがゲームを制すると言っても過言ではないだろう。

アメリカンフットボールは「変化」と「進化」を繰り返し、発展する。2012年にクラフトが来日して以来、日本のアメリカンフットボールのパッシングゲームが変わった。しかし、その時代も終わり次のフェーズに向かっていると言える。2016年のパールボウル決勝戦は新たな時代の幕開けを意味するゲームになりそうだ。

著者紹介

Dr.D(ドクターD)

幼少の頃からフットボールに取り組み、米国でのプレー経験、国内での長いコーチ経験も持っている。どちらかというと守備マインド。