4000km──。NBAファイナル第1戦と第2戦が行われたカリフォルニア州のオークランドと、第3戦と第4戦が行われるオハイオ州クリーブランドの間の距離だ。飛行機で約5時間。その距離を移動する間に、クリーブランド・キャバリアーズは昨季の王者ゴ…
4000km──。NBAファイナル第1戦と第2戦が行われたカリフォルニア州のオークランドと、第3戦と第4戦が行われるオハイオ州クリーブランドの間の距離だ。飛行機で約5時間。その距離を移動する間に、クリーブランド・キャバリアーズは昨季の王者ゴールデンステイト・ウォリアーズに33点差で負けたチーム(第2戦)から、30点差で勝ったチーム(第3戦)に変貌を遂げていた。
第2戦と第3戦でそれだけ両チームの立場が入れ替わった理由として、もちろん、コート上での戦術やラインナップの修正、戦術の遂行力、さらには両チームのハッスルや気合いの変化があった。と同時に、コート上での変化の前には、そのきっかけとなる出来事があった。ここでは、オークランドを発つ前と、クリーブランドに戻った後にキャブズの中で起きた2つの出来事に注目したい。
ひとつ目は、キャブズが第2戦に110−77で敗れた直後のこと。キャブズの選手たちがロッカールームに戻り、いつものように、ヘッドコーチのタイロン・ルーの掛け声で円陣を組んだときのこと。アシスタント・コーチのフィル・ハンディーが、ルーHCの許可を得て、チームに発破をかけた。いつもはおとなしく、選手たちとジョークを言い合うようなハンディだが、この時は、ウォリアーズにやられっぱなしで、何もやり返さなかったことを厳しく指摘したのだった。ハンディー自身、オークランドの出身。地元に戻って、NBA最高の舞台での戦いに、自分のチームがあまりにふがいない戦いをしたことや、2試合に負けただけなのに、シリーズに敗れたように落ち込んだ雰囲気に我慢できなかったようだ。
「あのスピーチは、みんなにとって的確な指摘だった。大人の男同士の言葉で、口に出して言われる必要があったことだった。まだこのシリーズで自分たちにチャンスがあるということを理解するためにも、聞く必要があるスピーチだった」と、カイリー・アービングは振り返る。2連敗し、しかも2試合目は33点差の大敗を喫して落ち込み、現実から目を背けていた選手たちが、ハンディの厳しい言葉で目覚めたのだった。
この一件を最初に報じたCleveland.comに対して、リチャード・ジェファーソンはこうコメントしている。
「彼(ハンディー)は、いつもはそういったことをやる人ではない。でも、時に、言うべきことを伝えるためには、普段の自分から外れなくてはいけないこともある」
ふたつ目の出来事は、クリーブランドに戻ってからのことだった。第2戦で後頭部にウォリアーズ選手の肘鉄を食らい、脳震盪を起こしたケビン・ラブが、脳震盪からの出場規定のテストをパスできず、第3戦に出場できないと判明したときだ。
試合に出られないと告げられ、落ち込んでいたラブに、チームメイトたちが励ましの声をかけた。レブロン・ジェームズやアービングが、ラブを抱きしめ、「心配するな。今夜は僕らで君のために勝から」と約束したのだという。
「彼の顔を見ただけで、何も言わなくても、『みんなを失望させてしまった』と感じているのはわかった」とジェームズ。「チームというのは、そういうものだ。こういうときに兄弟(チームメイト)を励ますものだ。彼が一人で責任を感じすぎないように、僕らでちゃんとやるからと告げた」
ラブとの約束通り、第3戦でシリーズ1勝目をあげ、ロッカールームに戻ってきたキャブズ選手たちを待っていたのは、満面笑顔のラブだった。一人一人にハイファイブをし、ラブの代わりにスターターを務めたジェファーソンには「ハグさせてくれ! すばらしいプレーだった」と言って喜んだ。
追い詰められたとき、窮地に追い込まれたとき、チームの本当の姿が見えてくる。2連敗と、主力のラブの欠場という窮地を前にしたときの叱咤と思いやり。キャブズの選手たちの競争心や、結びつきの強さがうかがえた出来事だった。
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■6/14(火)午前9:45〜生中継/WOWOWライブ
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ゲスト:五十嵐圭(元日本代表) ほか