3歳牝馬クラシック第2弾のオークス(東京・芝2400m)が5月20日に行なわれる。 前評判では、クラシック第1弾の桜花賞(4月8日/阪神・芝1600m)を制したアーモンドアイと、同レースで2着に屈したものの、巻き返しが期待される2歳女…

 3歳牝馬クラシック第2弾のオークス(東京・芝2400m)が5月20日に行なわれる。

 前評判では、クラシック第1弾の桜花賞(4月8日/阪神・芝1600m)を制したアーモンドアイと、同レースで2着に屈したものの、巻き返しが期待される2歳女王ラッキーライラックの「2強」と見られている。

 桜花賞までは他馬を圧倒していたラッキーライラック。それを、桜花賞で一蹴したアーモンドアイ。確かに2頭は抜けた存在で、すでにこれらと対戦済みのメンバーは、おおよそ「勝負づけは済んでいる」と認識されるのも仕方がない。

 そうなると、逆転が期待されるのは「2強」と対戦していない馬たち。その未知なる能力に、大きな希望を抱いている”穴党”は少なくないはずだ。

「2強」と未対戦の馬で、まず注目されるのは、オークストライアルを勝ち上がった面々だろう。フローラS(4月22日/東京・芝2000m)を快勝したサトノワルキューレと、スイートピーS(4月29日/東京・芝1800m)を勝ったランドネである。

 しかしながら、両レースの勝ち馬によるオークスでの戦績は芳しくない。過去20年の結果をみると、フローラSの勝ち馬は20頭が出走して、1勝、2着3回、3着3回、着外13回。スイートピーSの勝ち馬は18頭が出走して、1勝、2着0回、3着0回、着外17回と、勢いに乗ってオークスで大逆転、というイメージが大きく膨らむほどの成績ではない。

 翻(ひるがえ)って、桜花賞当日に行なわれる忘れな草賞(4月8日/阪神・芝2000m)の勝ち馬には、「2強」の逆転候補として心を惹かれるものがある。過去20年で19頭がオークスに駒を進めて、3勝、2着0回、3着1回、着外15回と、3度も戴冠を果たしているからだ。

 そして今年、同レースを制したのはオールフォーラヴだった。はたして、同馬は「2強」を逆転できる器(うつわ)なのか。



忘れな草賞を制したオールフォーラヴ(緑帽)

 オールフォーラヴは、父がディープインパクト、母が2012年のGIII中山牝馬S(中山・芝1800m。※2011年は阪神開催)で連覇を果たしているレディアルバローザ。母の妹には、GIIIクイーンS(札幌・芝1800m)を勝ったキャトルフィーユや、GIIIフラワーC(中山・芝1800m)を快勝したエンジェルフェイスらがいる良血馬だ。

 1月にデビューして、ここまで3戦2勝、2着1回。唯一の敗戦は、新馬戦を勝ったあとに臨んだ500万特別のアルメリア賞(3月4日/阪神・芝1800m)だが、そこでは最後の直線で大きな不利を受けた。デイリー馬三郎の吉田順一記者が同レースを振り返る。

「アルメリア賞では、直線で満を持して抜け出そうとしたところで、前にいたパンミコードにぶつけられて腰が流れてしまい、大きくバランスを崩したのが痛かったです。四肢をしっかり伸ばした走りで、一瞬の切れ味というより、少しずつギアを上げて長くいい脚を使えるタイプだけに、一度スピードが落ちると、トップギアに戻すのには時間がかかってしまう。ゆえに、立て直したところで、もうひと伸び見せるまでには至りませんでした」

 この敗戦で賞金を加算できず、クラシックに向けては厳しい状況を強いられた。オークス出走を目指すうえで、条件戦、トライアルと連戦するのは負担が大きい。あるいは、トライアルの一発勝負にかけるのも、相当なリスクがあったからだ。

 しかしオールフォーラヴは、オープン特別の忘れな草賞に出走すると、一発回答。4コーナー手前から外目を回って進出し、直線半ばで抜け出すと、追いすがるリュヌルージュをハナ差振り切って快勝した。

 骨のあるメンバーを相手にして、まさに”横綱相撲”でのレースぶりは光っていた。さらにその後、ここで負かしたランドネがスイートピーSを勝ったことで、オールフォーラヴの強さが一層際立つことになった。

 この結果、オークス出走がほぼ確定。加えて、ゆとりを持って本番を迎えられるようになったことは、同馬にとって何より大きかった。

「デビューからレースごとに8kgずつ馬体重を減らして、陣営からも『カイ食いは……』と不安視する声が出ていましたからね。馬体維持は同馬の課題だったことは間違いありません。そうした状況にあって、本番まである程度間隔が開いたレースを勝って出走を決められて、陣営もホッとしたのではないでしょうか」(吉田記者)

 しかも、忘れな草賞後の調整は、そうした馬体面での心配が杞憂に終わるほど、順調に進んでいるそうだ。吉田記者がその様子を伝える。

「オールフォーラヴは、4月29日からすでに追い切りを開始。過去、新馬戦や2戦目のアルメリア賞に出走するにあたっては、再調整が余儀なくされるほど体質が弱かった馬が、この中間は坂路の4F追いも敢行しました。この充実した攻め過程が馬体のよさを誇示しており、初めての長距離輸送を加味しても、オークスにはデビュー以来最高の状態で臨めそうです。

 1週前に撮影されたフォトパドックからは、体をふっくらと見せて、トモの丸みも十分。それでいて、あばらを薄っすらと見せているあたりは、理想的と言っていいでしょう。もうワンランクのレベルアップも可能ですが、キ甲も抜けてきて完成度は高まってきています」

 オールフォーラヴを管理するのは、2歳王者ダノンプレミアムなども手がける新進気鋭の中内田充正厩舎。若きトレーナーが一気にクラシック制圧となるのか、まずはオークスの行方に注目である。