WEEKLY TOUR REPORT米ツアー・トピックス PGAツアーの、なんとも粋な計らいである。「第5のメジャー」と言われるプレーヤーズ選手権(5月10日~13日/フロリダ州、TPCソーグラス)の予選ラウンドで、タイガー・ウッズ(ア…

WEEKLY TOUR REPORT
米ツアー・トピックス

 PGAツアーの、なんとも粋な計らいである。

「第5のメジャー」と言われるプレーヤーズ選手権(5月10日~13日/フロリダ州、TPCソーグラス)の予選ラウンドで、タイガー・ウッズ(アメリカ)とフィル・ミケルソン(アメリカ)が同組でプレーすることになった。



プレーヤーズ選手権の予選ラウンドで同組でラウンドしたウッズとミケルソン

 メジャー14勝を含めてツアー通算79勝を挙げている42歳のウッズ。片や、47歳のミケルソンも、メジャー5勝を含めてツアー通算43勝をマークしている。

 ミケルソンがアマチュアでPGAツアーを勝ったのは1991年、ウッズがプロに転向したのが1996年。それから、およそ20年以上もの間、紛れもなくこのふたりが”よきライバル”として、華やかなゴルフ界を引っ張り、一時代を築いてきた。

 一時は”不仲説”が取り沙汰されたこともある。ふたりがチームメイトとして参戦したライダーカップやプレジデンツカップでは、夜の卓球大会など宿泊先でチームの仲間同士が打ち解ける時間があっても、「ふたりは口をきかなかった」と吹聴されたりした。

 数字の上では、断然にウッズが勝っている。プロデビュー早々にメジャー制覇を果たして、次々にメジャータイトルを手にしていくウッズに対して、ミケルソンはメジャーでは勝利を挙げられず、「無冠の帝王」と言われる時期が続く。マスターズを制して、ようやくメジャーチャンピオンの称号を得たのは、2004年だった。

 また、ミケルソンはこれだけの実力を誇り、殿堂入りも果たしているが、実は世界ランキング1位の座に就いたことがない。それは、ミケルソンのプライムタイム(一番いい時期)に、ウッズというまさに”無敵のライバル”が存在していたからに他ならない。

 ウッズは1997年~2014年まで、通算683週も世界ランキング1位に君臨し、ミケルソンの前に大きく立ちはだかっていたのだ。

 ウッズが当時を振り返る。

「僕らが世界1位、2位だった頃、絶対に(ふたりは)同組にはならなかったんだ。それは、ファンが(その組に)集中しないように、ツアーがあえてそうしていたからだった。だから、僕たちは同じ試合に出場していても、いつも反対側にいた。だけど……」

 ウッズはそう言って、ミケルソンとの関係が最近「変わった」と打ち明けた。

「この数年、お互いにキャリアの終盤になってきて……、ふたりの関係は大きく変わった。ずっと近い存在になった」

 きっかけは、やはりチームで戦うライダーカップとプレジデンツカップだった。近年、腰の手術などによって戦列を離れていたウッズは、副キャプテンとしてアメリカチームをサポートしていた。一方のミケルソンは、まだアメリカチームの戦力としてプレーを続けていた。

 その際、ふたりはいろいろなことを語り合ったという。ウッズがその秘話を明かす。

「(アメリカチームで活動しているとき)フィルと、長い会話をしたんだ。ゴルフの話だけじゃなくて、さまざまなことを話した。僕が抱えている腰の痛みの話もした。しっかり治して『まだ(第一線で)プレーしたい』と言ったと思う。

 そのあと、だっただろうか。僕が一度復帰して、だけど、チップショットですごく苦労していたときがあった。その際、僕は極めて神経質になっていて、腰の影響でうまくチップを打てないことに悩んでいた。

 ちょうどその頃、フィルから携帯電話にメッセージが送られてきたんだ。それは、僕のチップショットへの技術的なアドバイスだった」

 ウッズに対して、ミケルソンは「いつでも助けになる」とオファーをくれたという。

「僕たちふたりは、ゴルフへの取り組み方がまったく同じだった。あのときのフィルの言葉は……、本当にありがたかった。そして今、僕はいい感触を取り戻すことができた。しかも、またこのツアーのトップレベルで戦えている、そう感じている」

 ウッズは感慨深げにそう語った。

 翻(ひるがえ)って、ミケルソンも「僕が最もタイガーの恩恵を受けている」と話す。その理由について、自らの前にウッズが常に立ちはだかっていたからこそ、「自分の技術が磨かれてきた」とミケルソンは言う。

「タイガーがゴルフ界で成し遂げてきたことは、本当に尊敬している。15年前の、僕とタイガーの記録や成績を比べると、ひどい差があった。でも、今のふたりを比べてみると、僕の記録や成績もそんなに悪くはないだろ? タイガーに追いつくために、僕は少しずついい選手に成長していった――今はそんなふうに感じているんだ。

 そして、最近の僕たちふたりは、すごくいいプレーをしている。だから(同組となった)予選ラウンドで、ともにいいプレーができれば、きっと週末も上位で一緒にプレーができるだろう。そんな1週間になれば、最高だ」

 そう心底うれしそうに語るミケルソンの表情は、とても穏やかだった。

 今週、ふたりの戦いは大きな注目を集めている。しかしその結果は、おそらく重要なことではないだろう。

 ゴルフというスポーツを通じて、ふたりのよき人生が築かれ、ともにわかり合えたこと。互いに切磋琢磨し、勝利の喜びも、苦戦を強いられた悲しみも、一緒に乗り越えてきたこと。そうして、両者ともプライムタイムは過ぎ去ってしまったが、今なお戦い続けていること。

 そんな深い”友情”で結ばれたふたりが、どんな戦いを見せてくれるのか、しっかりと見届けたいと思う。