ラグビー日本代表は6月、3つのテストマッチ(国際間の真剣勝負)をおこなう。 11日にはバンクーバーのBCプレイススタジアムでカナダ代表と激突。帰国後は18、25日にそれぞれ愛知・豊田スタジアム、東京・味の素スタジアムでスコットランド代表と…

 ラグビー日本代表は6月、3つのテストマッチ(国際間の真剣勝負)をおこなう。

 11日にはバンクーバーのBCプレイススタジアムでカナダ代表と激突。帰国後は18、25日にそれぞれ愛知・豊田スタジアム、東京・味の素スタジアムでスコットランド代表とぶつかる。

 ジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチは着任前。選手の招集も直前にばたばたと決まった様子で、困惑する選手も多い。それでも田村優は、「僕は、(競技を)やるだけ」と断ずる。気持ちのベクトルは外部ではなく、自分たちに向ける。

 今季は日本から初参戦するサンウルブズの一員として、国際リーグのスーパーラグビーに挑戦する。SOやインサイドCTBの主力格としてプレーし、持ち前のパスやキックで空間をえぐっている。今度のカナダ代表戦では、同じサンウルブズの立川理道がゲーム主将を務めそうだ。田村は「ハル(立川)はリーダー向き。しっかりしているので」と話している。
 
 身長181センチ、体重92キロの27歳は、2012年から4年間で35キャップ(テストマッチ出場数の証)を獲得してきた。ナショナルチームの一員としての矜持を、日を追うごとに高めている。だからこそ、諸問題を勝敗の理由にしたくないという。

「日本協会がちゃんとして欲しいといったことは、もちろん思うは思うんです。だけど、それが自分のパフォーマンスに影響していいことにはならない。結局、僕らはラグビーで評価をされるので」

 昨秋のワールドカップイングランド大会では、歓喜と辛苦を味わった。

 9月19日の初戦では、後半32分から登場した。過去2回の優勝を誇る南アフリカ代表から大会24年ぶりの白星を奪った。ブライトンコミュニティースタジアムの得点板に「34-32」の数字を刻み、大いに喜んだ。

 しかし、4日後のグロスター・キングスホルムスタジアム。スコットランド代表戦に先発も、失点を食らった。

 14点差を追う後半23分だ。敵陣深い位置でフェーズを重ねるなか、インサイドCTBに入った田村が、アウトサイドCTBのマレ・サウへパスを放つ。

 捕ったのは、インターセプトを狙った相手WTB、トミー・シーモアだった。

 そのまま走られ、スコアは10-31となった。

――あの瞬間、覚えていますか。

 投げた本人は言った。

「はい。一瞬、(インターセプトされたことが)わかりませんでした(サウがボールをもらって)トライかな、と思ったら…」

 結局、スコットランド代表には10-45で屈した。この一戦を最後に、大会での出番から遠ざかった。

「あの試合はスタッツ(プレーごとの数値)とかを見れば互角で、要所でいろんなことが重なった試合。運と言ってしまえば簡単ですが、流れをつかんでいたのは、スコットランド代表でした。ひたむきなチームでした。(次は)勝ちたいですね」

 この人にとっての6月のツアーは、魂を示す場所でもあり、リベンジの舞台でもある。

「(ジャパンは)言い訳のできないチームです。日本代表として戦うマインドセットを、どの試合でも持つ。ギアを上げられるよう、皆とコミュニケーションを取っていきたいです」(文:向 風見也)