すでに前節、ブンデスリーガ1部昇格を決めているフォルトゥナ・デュッセルドルフにとって、残されたミッションは2部優勝となる。ホームでのラストゲームとなった第33節のキール戦は珍しくチケットが完売。快晴のスタジアムに5万5000人が詰めか…
すでに前節、ブンデスリーガ1部昇格を決めているフォルトゥナ・デュッセルドルフにとって、残されたミッションは2部優勝となる。ホームでのラストゲームとなった第33節のキール戦は珍しくチケットが完売。快晴のスタジアムに5万5000人が詰めかけた。
結果は1-1で引き分け、優勝を決めることはできなかったが、それでも試合後にはファンがピッチになだれ込み、カオス状態に陥った。まだ1試合を残し、優勝の可能性も残っているというのに、とりあえず1部昇格を果たしたことで大喜び。帰りのトラム(路面電車)では、戦利品である剥ぎ取った芝を手に抱えて騒いでいる人を何人も見かけた。
この試合、原口元気、宇佐美貴史のふたりはそろって先発。しかし試合後の表情は対照的だった。
ホーム最終戦となるキール戦に先発、体を張ったプレーを見せていた原口元気
「(2位だった)ニュルンベルク勝ったでしょ? (優勝するには)最後、勝つしかないので……」
浮かない表情の原口は、優勝を争う相手の状況を気にしていた。ニュルンベルクが勝ったことで勝ち点は60で並んだが、得失点差でニュルンベルクが首位に躍り出た。最終節はそのニュルンベルクとアウェーでの直接対決となる。
「最後は勝ちにいきますけど、(今日)勝てれば一番よかった。もったいないですね。粘り強くやっていたとは思うんですけど」
原口は考えながら試合を振り返る。
「しっかり粘り強くやっていたし、そのなかでうまく1点を獲って、守り切れたらよかったんですけど、やっぱり(キールは)3位のチームだけあって、最後に決めてくるのは他のチームとは違うなと思います。キールはボールをすごく大事にして、だけど前にくるチームなので、守備に追われる時間が長かった。後半、ある程度ボールを持ち始めてからは自分たちの攻撃もうまくいったけど、まあ、こんなもんじゃないですか」
原口は、デュッセルドルフを1部昇格に導き、優勝させるために1部ヘルタ・ベルリンから移ってきたと自認している。それだけに結果に対する責任感は強く、第28節でダルムシュタットに敗れたときは「敗因は俺」と自らを責めたほどだ。ホーム最終戦で勝ち切れなかったことに、終始、納得がいかないという顔だった。
一方、宇佐美はすっきりした表情で現れた。
「キールは、前半戦でやったときも相当いいチームだなと思いましたし、わりとボールを保持されることも想像しながら、攻撃力、破壊力があるチームなので、そういう部分を警戒しながらやろうと思っていました。前半に関しては両サイドでボールを触って、という展開でしたけど、後半の最初から中盤くらいにかけてはほとんどボールを触ってなかった。トップ下に移ってからボールも触れるようになって、少し押し返すことができたかなと思います。
昇格を決めた後の試合はモチベーション的には難しいというところがやっぱりあった。昇格を決めた日とその次の日は、町全体で気を抜いているような感じだった(笑)。難しい試合になるだろうなとは思っていたので、予想通りの展開だったと思います」
宇佐美の話は自然と、この試合を訪れていた西野朗日本代表監督のことになった。
「これまでも会ってはいましたけど、でも技術委員長だったからドシっとしていたというか。え、西野さんを待ち伏せしちゃう? 面談した直後の温度で話を聞きたい? そうですよねえ」
そう言って報道陣を茶化す余裕も見せた。
残されたのはあと1試合。最終節での優勝争いも見ものではあるが、2人にとってより切実なのは、ロシアW杯日本代表のメンバーに入るかどうかだろう。限られたアピールのチャンスのなかで何を見せてくれるのか、楽しみである。