【連載】チームを変えるコーチの言葉〜千葉ロッテマリーンズ ヘッドコーチ・鳥越裕介(2)() 昨年、ロッテのチーム失策…

【連載】チームを変えるコーチの言葉〜千葉ロッテマリーンズ ヘッドコーチ・鳥越裕介(2)

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 昨年、ロッテのチーム失策数は89個で12球団ワーストだった。守備率.984のチームはほかに3球団あるのだが、ロッテの場合は内野陣が不安定だったなか、特に7人が守った三塁で18失策、4人が守った遊撃で25失策と、三遊間で合計43失策を数えた。この数字が40を超えたのは両リーグ合わせてもロッテだけで、12球団最少のソフトバンクに比べれば26個も多かった。



現役時代は守備の名手で鳴らした鳥越コーチ

 ゆえに、そのソフトバンクから移籍した一軍ヘッド兼内野守備走塁コーチ、鳥越裕介の手腕にかかる期待は必然的に大きくなる。「基本的には比べることはしていない」と言うが、改善に向けて何から始めたのか。鳥越に聞いた。

「キャンプから選手に言い続けているのは『練習の質を上げよう』ということです。球の扱いひとつでも、練習と試合との差があり過ぎると感じたので……。『練習というのはウォーミングアップみたいなものじゃないよ、全部ゲームと同じなんだよ。シチュエーションが違うから、100%ゲームと同じようにはできないかもしれないけど、近づけることはできる』と。その差がなければないほど、ゲームでのパフォーマンスは絶対に上がる、と僕は思っています。だから球の扱いを疎(おろそ)かにするな、ということです」

 新監督の井口資仁(ただひと)は就任早々、内野陣の改善に着手。まずは昨季、遊撃から二塁に転向しながらゴールデングラブ受賞の鈴木大地を三塁に再転向させる。送球エラーが目立ったポジションには、スローイングに安定感のある鈴木が適任と考えた。

 そして二塁はもともと守っていた中村奨吾に任せ、遊撃は三木亮、平沢大河らを争わせる方針だった。最終的に、遊撃の開幕スタメンを勝ち取ったのは新人の藤岡裕大だったが、新人で固定されるか否かはともかく、今季の内野陣は大幅に再編された。

 もっとも、新任コーチである鳥越が今年2月のキャンプでロッテ内野陣の「球の扱い」に注目したということは、再編しただけでは守備力は向上しない、ということを如実に示している。

「チームの攻撃というのは、どうやって打つかじゃなくて、どうやって点を取るか、なんです。その考えでいくと、チームの守備というのは、どうやって守るかじゃなくて、どうやって点をやらないか、になります。

 どこの球団だって、そう考えてチームの守備をつくり上げていくわけですけど、その基本はキャッチボール。ピッチングも原点はキャッチボールですから、ピッチャーもキャッチボール。野手も基本的には捕って投げる、キャッチしてボールを投げるんですから、キャッチボールですよね」

 石垣島の春季キャンプからチームに合流した鳥越にとって、ロッテの選手の「球の扱い」を初めて目の当たりにしたのが、2月1日、メイン球場。午前9時からのウォーミングアップを終え、キャッチボールが始まったときになる。すなわち、キャッチボールを見ていて「球の扱いを疎かにしている」と感じられたのだ。

「そもそも、野球でいちばん難しいのは打つことであって、ヒットじゃない限りは、ちゃんと捕って、ちゃんと投げればアウトにできる。それが点をやらない守りであって、僕はそうやって勝っていくしかないと思っています。逆に、基本のキャッチボールを疎かにしたらゲームで負けますよ、ということです」

 練習の質をキャッチボールから上げていく――。鳥越がキャンプで選手に求めた質は、キャッチボールで100%、相手が構えたグラブに投げることだった。「ここで100%できなければゲームで負けるよ」という言葉を繰り返し伝えた。

「プロであれば、打つのは3割打ったらすごいんでしょうけど、守備は10割、100%できるはずなんで。だったら、そこを目標にするべきでしょうね。それだけだと思います、僕は」

 現役時代、鳥越自身が残した記録を想起させるような目標だ。1997年、中日に入団して4年目で初めて100の大台を超える124試合に出場した鳥越は、109試合で遊撃を守って失策はわずかに1。同ポジションで守備率.997という日本記録を樹立している。「10割できる」という言葉も決して大げさに聞こえない。

 そんな鳥越が開幕前、マリンスタジアムで守備練習を指導したときのこと。それまで投手コーチに任せていた投内連係を、内野守備担当として初めて見ることになった。

「どんな感じで来るかなあ、と思いながら見ていたら、失敗が多すぎるんです。1回目だったんで、ちょっと甘めにはしたんですけど、それでもやっぱり『ダメですよ、もっとやりましょ』って言いました。『その失敗がゲームで出たら、もう1点、入りますよ。それで負けますよ』って。『練習で100回投げたら、ここに100回ストライク放れよ。それをやってないから試合で焦るんじゃないの? 逆に言ったら、試合で練習通りにやれば成功するんだったら、練習の質を上げればいいだけの話じゃないの?』と」

 その日の投内連係が始まったとき、選手たちの「チャラけた声」が鳥越の耳に入ってきていた。しかし「100回ストライク」を求めて練習を続けるうち、連係プレーに必要な声以外、まったく聞こえなくなっていた。

「変わるんですよね、選手は。だから、みんなわかっているんですよ。やらなきゃダメだということは……。だったらそういう雰囲気をみんなでつくっていかなきゃ。じゃないと勝てないですよ。100%できることを疎かにしたら負けます。

 僕はそういうものだと思うし、以前から選手に言ってきて、やっぱりそうだと思いましたもんね、去年。『やらなきゃダメ』という雰囲気をずっとつくってきたら、エラーしなくなりましたから」

 これは昨年のソフトバンクのチーム失策数のことだ。38失策は1991年の西武に並ぶシーズン最少失策数で(130試合)、チーム守備率.993はプロ野球新記録。同じプロならどのチームでもできる、当然、ロッテでもできると鳥越は考えている。

「みんな、わかっているんですけど、少しだけ疎かになる。やっぱり人間なんで、ラクしたいんですよ。でも、『ラクしたら負けるよ。オレはそう思うけれど、キミたちはどう思いますか?』って言ったら、納得感はあるはずなんですね。だったら、やりましょう。それしかないですよ」

つづく

(=敬称略)