勝者であるジュビロ磐田の名波浩監督の試合後会見は、謝罪から始まった。「まず、スポーツ選手としてあるまじき行為を試合…

 勝者であるジュビロ磐田の名波浩監督の試合後会見は、謝罪から始まった。

「まず、スポーツ選手としてあるまじき行為を試合中にしたというその厳然たる事実、これはチームを預かる身として、マリノスの選手たち、サポーター、関係各位の皆さま、それからジュビロに関わるすべての皆さまにお詫びしたいと思います。申し訳ありませんでした」


今年の目標を

「トップ5」と語るジュビロ磐田の名波浩監督

「あるまじき行為」をしたのは、ブラジル人サイドバックのDFギレルメだった。80分に2枚目の警告を受けて退場となると、突如怒りの導火線に着火し、対戦相手である横浜F・マリノスのMF喜田拓也に左足キックをお見舞い。さらに乱闘を止めに入った相手スタッフにも殴りかかる暴挙に出たのだ。

 もはやスポーツとは言えない”暴行事件”は、サッカーを汚し、ファンを裏切る背徳行為である。5月2日に日産スタジアムで行なわれた横浜FMと磐田の一戦は、実に後味の悪い結末を迎えた。

 ひとりの愚か者によって試合内容以外の部分がクローズアップされることとなったが、試合自体は白熱した好ゲームだった。とりわけ勝った磐田のパフォーマンスは称賛に値するもので、そこには蛮行を働いたギレルメも含まれる。もちろん、事件が起きるまでは、であるが。

 2試合勝ちがなかった磐田に対し、横浜FMは前節、鹿島アントラーズに快勝(3−0)を収めていた。順位こそ劣っていたが、その攻撃スタイルやホームゲームであることを踏まえても、横浜FMのペースで試合は進んでいくかと思われた。

 ところが、立ち上がりから積極性を示したのは磐田のほうだった。ボール支配率こそ譲ったものの、ボールホルダーに対する素早いプレス、球際の攻防、あるいは切り替えの速さで相手を上回り、シンプルなショートカウンターから次々にチャンスを生み出していく。

 そして37分に、高い位置でのボール奪取からカウンターを仕掛け、MF山田大記のクロスをMF松浦拓弥が合わせて先制点を奪うと、42分にもふたたびカウンターを発動させ、右サイドを駆け合ったDF小川大貴のシュートのこぼれた球をMF田口泰士が押し込んで2−0。

 後半立ち上がりはやや横浜FMにペースを譲ったが、58分に三度、高い位置でのボール奪取を実現し、田口が飛び出していたGK飯倉大樹の頭上を抜くロングシュートを沈め、試合を決定づけた。74分にPKのこぼれ球を押し込まれて1点を返されたものの、アウェーで3−1と快勝を収めた磐田が3試合ぶりに勝ち点3を手に入れた。

 高いラインを保ち、リスクを負った攻撃を仕掛けてくる横浜FMに対し、ソリッドな守備で流れを掌握する。磐田にとってはまさに”ハマった”試合だった。

「『分析がハマりましたね?』というクエスチョンを皆さん(記者)はしたいと思うんですが、実際には1日しかトレーニングする日はありませんでした」

 名波監督が振り返るように、前節から中3日の一戦であり、相手を分析する時間は限られていた。そのなかで特殊なサッカーを展開する横浜FMに対策を施すのではなく、これまでの積み上げを体現しただけである。そう指揮官は主張する。

「日本のチーム、特にタレントが揃っているチームは、前後の出し入れからゲームを組み立てて、相手の弱いところにボールを刺していく。それから、オープンなスペースにボールを運び、最後は個の突破であったり、コンビネーションで崩していく。そして、クロスやマイナスのボールからアイデアを出していく。そういった常が、今のJリーグにはある」

 その分析を踏まえたうえで、「それをケアしていくための守備を4シーズン以上やり続けた結果が、今日のゲームになったと思う」と、継続の成果であることを強調した。

 パスを回しながら隙を探り、ボールサイドに人数をかけて攻め込んでくる横浜FMは、まさに名波監督が取り組んできた対戦相手のイメージそのものだった。だからこそ、特別な策を講じなくとも、普段通りの戦いで結果を生み出せたのだ。

 先制点を決めた松浦も、同様の意見を口にする。

「相手を分析したというより、チームとしてやるべきことをやっただけ。中(のエリア)を締めること、前から行くこと、チャンスがあればアグレッシブに行くことは、どの試合でもジュビロが目指していること。相手がマリノスだからって、特別なことはないですね。それをチームとしてやれたというのはよかったと思います」

 多くの主力を故障で欠くなかで、このクオリティを保てたのも、横浜FM戦での大きな成果だろう。MF中村俊輔という稀代のアーティストを擁する磐田だが、その特長は攻撃ではなく、組織的でオートマティックな守備であり、4年かけて積み上げてきた継続性こそが、なによりこのチームの強みである。

 名波監督が就任したのは、J2での戦いを余儀なくされた2014シーズンの途中から。同年は4位と昇格を逃したものの、2015年にJ1昇格を実現し、J1復帰1年目となった2016年は年間13位。そして昨季は6位と躍進を遂げ、その成績からも着実な上積みが感じられる。

 そして2018年、開幕前の目標は「トップ5」である。現在は6位だが、優れた指導力と求心力を備える指揮官のもと、その組織力にさらなる上積みが見込まれれば、目標は上方修正されることになるかもしれない。