<世界卓球選手権(団体)2018年4月29日〜5月6日・ハルムスタッド>大会4日目、日本時間未明、女子日本代表が1ゲームも落とすことなく予選リーグ突破。そして、昨夜、日本男子も予選最終戦を終えた。いよいよ中国が待つ決勝トーナメントに駒を進め…
<世界卓球選手権(団体)2018年4月29日〜5月6日・ハルムスタッド>
大会4日目、日本時間未明、女子日本代表が1ゲームも落とすことなく予選リーグ突破。そして、昨夜、日本男子も予選最終戦を終えた。
いよいよ中国が待つ決勝トーナメントに駒を進めることになるが、その前に、ラリーズ編集部では予選で一番熱かった試合を独自の視点で分析し、卓球の緻密な駆け引きの魅力をお伝えしたい。
男子予選第2戦・ベラルーシ:張本対サムソノフ
張本対サムソノフのスコア
張本智和 3-2 サムソノフ
9-11/9-11/11-6/12-10/11-9
試合序盤は徹底された張本へのチキータ対策、攻めを封じられていた
男子日本代表予選、対ベラルーシの第1試合、張本智和(4月度世界ランキング13位)大ベテランで世界ランク1位に君臨したこともあるサムソノフ(同37位)との対戦。
第1、2ゲーム目はサムソノフの徹底したチキータ対策が功を奏する。
張本のフォアサイド、手前の位置に短いサーブを徹底して出し、張本が得意とするレシーブ”チキータ”(ボールの横を擦って打つレシーブ技。曲がって返球されるため相手は返しづらい)を打たせないように試合を組み立てていく。
その作戦が見事に効き、サムソノフの得意なストップレシーブ(台から出ないようにバックスピンをかけて短く止めるレシーブ)の展開になり、台上から先手を奪って攻めていく。
時折、張本は無理矢理フォアサイド手前に回り込み、バックサイドをガラ空きにしてチキータを放つも、そこ狙っていたサムソノフ、強烈なバックハンドで張本の空いたバックサイドに攻撃。張本もレシーブで出す手がなくなっていく。
戦術1:サムソノフに打たせて、ブロックやカウンター、攻め急がない張本
第3ゲーム、出だしから0-3と離されたところで日本がたまらずタイムアウト。
倉嶋監督が大会前のテレビ東京のインタビューで「張本の数少ない弱点を挙げるとすれば、それは”焦ってしまうこと”だ」と言っていたように、張本がフォアサイド手前に来たストップレシーブに対して、強打しようとしてミスが続いていた。それにつられるように、ミスが増えていく悪循環に陥っていた。
そこで、倉嶋監督のアドバイスもあってか、戦術を変更。張本は、台上のストップに対して、無理に打ちに行くのではなく、相手に打たせてカウンター、チャンスがあればミドル(相手選手の懐付近)に打つことを徹底し始める。
相手ミドルへの強打が決まり始めると、徐々に張本らしい攻めが復活してくる。サムソノフ自体、そこまで攻めが早い訳ではなく、冷静に守ってから攻めに行く余裕が張本にはあった。
戦術2:ミドル攻撃を徹底、思い切った攻め
2ゲームをサムソノフに連取され、苦しかった張本だが、そこから2ゲームを取り返し、運命の最終ゲーム。
サムソノフがここでギアを上げる。得意のバックハンドで先手を取ると両ハンドのドライブで張本を左右に振り回すことでリードを奪う。
一方の張本はやや消極的になってしまったか、フォアサイド手前にサーブが来ると、ストップが多めになってしまい、そこをサムソノフに狙い撃たれてしまう。
3-8まで離されてしまい、絶体絶命のピンチになった張本。
ここでもう一つの戦術転換を講じる。ストップで繋いでいては勝機がないと判断、フォアサイド手前に来たストップを思い切ってバックで回り込み、サムソノフのミドルを徹底して狙い始めた。この戦術変更が功を奏し、得点を積み重ねていく。
8-8と追いつかれ、サムソノフもフォア手前のサーブはもう効かないと判断し、張本へのバックサイドへ球足の速いロングサーブを出すが、それを待っていた張本。得意のバックハンドが火を吹き逆転に成功する。
10-8の場面ではミドルを的確に攻め、サムソノフが後ろに下がり、張本のスマッシュを大胆にカウンターするが、張本の強烈な前陣のカウンターが炸裂。もうこうなってしまっては誰も止めることはできない。
最後は張本がミドル手前にサーブを出し、返って来たレシーブをサムソノフのミドルに強打。
張本の一環したミドル攻めと、中盤〜終盤の攻めのバランスの取り方は、もはやベテランの域に達しつつあるのかもしれない。
文:ラリーズ編集部
写真:千葉格/アフロ