東京六大学春季リーグ戦 4月28日 神宮球場

 8回表、1死一塁。5番・吉澤一翔(スポ2=大阪桐蔭)の振り抜いた打球が左翼席へと突き刺さる。湧き上がる三塁側ベンチと応援席。それは待ちに待った白星へと導く、鮮やかな逆転本塁打だった。投げては小島和哉主将(スポ4=埼玉・浦和学院)が粘りの投球で2失点完投。優勝戦線に踏みとどまるためには絶対に負けられない明大戦を、最高のかたちで先勝した。

 試合を動かしたのも、吉澤の一発だった。2回表、先頭打者として迎えた打席。「真っすぐを狙っていた」(吉澤)。相手先発・森下暢仁(3年)の高めに浮いた直球を言葉通り振り抜くと、打球は左翼ポール際へ。自身リーグ戦初となる本塁打を放つ。第1週の立大戦では2試合とも先制点を奪われ、劣勢の展開を強いられた早大。それだけに、大きな1点を手に入れた。ところが直後の2回裏、初回を完璧に抑えた小島が突如崩れる。「1点を守らなくてはと神経質になりすぎた」という小島。1死から2つの四死球で走者を背負うと、8番・森下暢に中前へ運ばれ同点に追い付かれてしまう。3回からは両投手が粘りの投球を見せ、試合は膠着(こうちゃく)状態に。均衡が破れたのは6回裏。2死二塁から5番・越智達矢(4年)の中前適時打で二塁走者が生還し、明大が1点を勝ち越した。昨秋から終盤に勝ち越され、接戦をことごとく落としてきた早大。また同じ展開になるのではないか--。そんな不安が、三塁側応援席を襲った。

暗雲を振り払ったのは、この男の豪快な一打だった

 しかし、この日は違った。8回、1死走者なしの場面で4番・加藤雅樹(社3=東京・早実)が一、二塁間を破る鋭い当たりで出塁する。ここで迎えるは吉澤。2回に放った本塁打の残像があるだけに、球場のボルテージが上がる。3ボールからの4球目。真ん中に甘く入った直球を迷わず強振した。高々と舞い上がった打球はまたも左翼席へ。その行方を確認した吉澤は、右手で握りこぶしをつくった。劇的な一打で逆転に成功した早大。その後は小島がエースの神髄を見せる。調子が上がらないながらも要所を締め、明大打線に反撃を許さず。およそ一年ぶりとなる完投勝利で、待望の一勝をもたらした。

完投勝利を収め、笑顔を浮かべる小島

完投勝利を収め、笑顔を浮かべる小島

 圧巻の2本塁打を放った吉澤。試合後には「最高の結果になってよかった」と振り返った。その活躍ぶりには「本当に吉澤のおかげ」(小島)、「吉澤につなげば打ってくれるという思いで打席に立っていた」(加藤)と、チームメイトも絶賛。入学以来、期待され続けていた逸材がついにブレークを果たそうとしている。いいかたちで久々の勝利を収めた早大。笑顔で試合を終えたナインだが、全く気は緩めていない。「大学野球は2勝して初めて勝利だと思う」(加藤)。その言葉通り、連勝で勝ち点を手に入れられるかが重要となってくる。もう一つも負けられない。巻き返しへ、この勝利を足掛かりとできるか。まずは2回戦での戦いぶりに注目だ。

(記事 吉田優、写真 岡田静穂、吉岡篤史)

☆勝利に飢えた若き獅子、吉澤

2本のアーチで観衆の度肝を抜いた吉澤

2本のアーチで観衆の度肝を抜いた吉澤

どうしたら勝てるのか。負け続けていたワセダを暗闇から救ったのは、吉澤一翔(スポ2=大阪桐蔭)であった。「真っすぐを狙っていた」。2回、森下暢仁(3年)の高めの直球を捉え、先制点を挙げる。それだけでとどまらないのが、この吉澤である。1点ビハインドで迎えた8回、1死一塁の場面で、またも森下暢の直球を左翼席にたたきこんだ。六大学屈指の好投手から放った衝撃の2発に、神宮球場ではスタンディングオベーションが広がり、吉澤は大歓声に包まれた。課題としていた守備でも軽快なプレーを見せ、攻守共にチームをもり立てた。
「あした勝たないと、きょうのホームランも意味がない」。チームの全打点をたたき出し、低迷していたワセダを救った吉澤だが、試合後には一切の慢心を感じさせなかった。きょうの活躍もあくまで通過点。勝つことに飢えた若き獅子は、目標とする三冠王へ歩みを進める。

(記事 江藤華、写真 岡田静穂)