世界最高のスタンドオフ、ダン・カーター インタビュー(後編) 元オールブラックスの司令塔で、史上最高のスタンドオフとも評されるダン・カーターが、来季から神戸製鋼の一員としてトップリーグに参戦する。正確無比なプレイスキックも、ダン・カータ…

世界最高のスタンドオフ、ダン・カーター インタビュー(後編)

 元オールブラックスの司令塔で、史上最高のスタンドオフとも評されるダン・カーターが、来季から神戸製鋼の一員としてトップリーグに参戦する。



正確無比なプレイスキックも、ダン・カーターの武器

 前編では日本の印象や、そこでプレーすることを選んだ理由を話してくれた。後編では親しいリーチ マイケルのこと、日本ラグビーを発展させるための”秘策”も語ってくれた。

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――(日本代表キャプテン)リーチ マイケル選手とは話をしましたか?

「いや、していないな。というかその人が誰なのか……ん、あれ? もしかしてマイケル・リーチのこと?

 あぁ、そうか、日本じゃそう呼ばれているんだね(笑)。うん、話したよ。彼と一緒に(公式スポンサーの)マスターカードのW杯向けのプロモーションに参加したんだ。マイケルと僕はアンバサダーを務めているからね。日本でしばらく彼と一緒に過ごした。彼は日本でのプレー経験も長いし、ニュージーランド(※2013年、2015~2017年、スーパーラグビーの強豪、チーフスに所属)でもプレーしていたからいろいろ話が弾んだよ。

 とくに来年のW杯はいかにエキサイティングかという話で盛り上がった。多くの日本の人たちが自国でのW杯を心待ちにしてくれているし、きっと素晴らしい大会になると思う。そんな環境の中でプレーできるなんて最高だと感じているよ」

――日本のラグビーについて、マイケルはなんと言っていましたか?

「彼自身、プレーすることをとても楽しんでいると言っていた。僕にも日本でプレーすることを勧めてくれたし、僕が日本に来て、日本のラグビーを体験できることをとても喜んでくれていた。すごくいい経験ができそうでワクワクしているよ」

――仲間もたくさんいて、日本で寂しい思いをすることはなさそうですね。

「そうだね、友だちはたくさんいる。チームメイトになるアダム・アシュリークーパー、それにアンディ・エリスも神戸製鋼にいる。彼と一緒にプレーするのは本当に楽しみだ。彼とはふだんでもよい友人なんだ」

――リーチキャプテンのゲーム分析を聞くと、プレーや戦術を違った見方で語ってくれることも多く、ラグビーの本場を知る人の意見の貴重さを実感します。その意味でもカーター選手の加入は大いに期待されていると思います。

「マイケルは、僕らがニュージーランドでやっていることを体験している。プロフェッショナリズムも高い。日本代表を率いるのにふさわしい人材といえるね。

 僕が自分のキャリアで得ることができた成功は、すべて、ハードワークの賜物(たまもの)だと思っている。そのためにいろいろなものを犠牲にもしてきた。

 でもこれから先も、それを続けていく覚悟はできている。常にベストな自分を見せていきたいからだ。チームメイトにも、僕のプロフェッショナリズムを示したい。それだけじゃなく、ゲームについても何か僕が教えられることがあれば伝授して、チームを少しでも向上させる力になりたいと思っているよ」

――日本では昔からラグビーは根強い人気はありますが、2015年のW杯後の爆発的な盛り上がりはいったん落ち着いた感があります。来年に迫ったW杯を日本で盛り上げるために必要なことはなんだと思いますか?

「11月の試合でオールブラックスを破ることだね!」

――えっ!?

 絶対に効果てきめんだよ! シンプルなことさ。前回のW杯は日本にとって大成功だった。そしていま、自分たちの国にW杯を迎えようとしている。

 僕自身の経験からも言えるけれど、自分の国で開催されたW杯の時は、国全体が僕たちの後ろでサポートしてくれていることをものすごく実感することができた。

 日本に必要なのもそれだと思う。国中が一丸となってチームをしっかりと支えることだ。そして、それは今から始めることができる。

 このあとビッグゲームが控えているよね。イングランド戦(11月17日、ロンドン)もあるし。11月のオールブラックス戦(3日、日本国内)では、日本チームを全力で盛り立てることだ。

 僕はこれまでのキャリアで何度も目にしてきた。ラグビーではどんなことでも起こりうるということを。その日の試合では、どのチームにだって、いかなる相手をも倒せる可能性がある。

 僕が『オールブラックスに勝つこと』と言ったら君は笑ったけれど、日本はオールブラックスを破らなくちゃならないんだ。もちろん、オールブラックスは僕のチームだから負かされないことを祈るけれど(笑)、でも、試合に臨むときは、絶対に勝てると信じて挑むこと。そんなスペシャルなことだって、起こってしまうんだってことを信じることだ。

 ラグビーのW杯は、オリンピック、サッカーW杯に次ぐ、世界で3つ目に大きなスポーツトーナメントだと言われているよね。それが自国で開催されるんだ。国を挙げて盛り上げて、ラグビーを成長させる格好の機会にしてほしい。

 日本にはよい選手が揃っているから十分可能だと思う。あとは国民のみんながしっかりサポートすることだ。

 代表チームのヘッドコーチ(HC)が、エディー(・ジョーンズ/現イングランドHC)、そしてジェイミー(・ジョセフ)と、引き継がれたのもいいバランスになっている気がする。ジェイミーはしっかりこの先のビジョンを描いているだろうし、なんといってもW杯は国際ラグビーの頂点に立つ大会だからね。そこに最高の状態の日本チームをもっていこうと考えているはずだよ。

 僕もW杯のときは日本にいる。今から待ち遠しいよ!」

 気さくに、しかし熱を込めて語ってくれたカーター選手。日本行きについて語る時には、「ワクワク」「エキサイティング」「待ち遠しい」といった言葉が何度も繰り返された。

 謙虚で親しみやすいスーパースター。この選手のプレーをトップリーグで見られるとはなんたる幸せ。こちらの方こそ、シーズン開幕まで待ちきれない。