国立精神・神経医療研究センター 三島和夫 平日は朝早く起きて出勤、週末になるとお昼頃まで寝ているという人は意外と多いと思います。20~30代の働き盛りの世代は金曜日の夜は遅くまで酒を飲んだり、遊んでだりして夜更かしをしてしまう。…


国立精神・神経医療研究センター 三島和夫

 平日は朝早く起きて出勤、週末になるとお昼頃まで寝ているという人は意外と多いと思います。20~30代の働き盛りの世代は金曜日の夜は遅くまで酒を飲んだり、遊んでだりして夜更かしをしてしまう。その結果、翌朝の休日に朝寝坊をしてしまう。これは「社会的ジェットラグ」と呼ばれる現象で、心身に不調が生じる危険信号なのです。

 「社会的ジェットラグ」とは、個人の体内時計(生体リズム)にマッチしない社会時刻(生活スケジュール)を強いられることによって心身の不調を生じる状態のことを指します。ドイツの研究者が10年前に名付けました。睡眠不足を抱えながら日常生活を送っていると、結果として睡眠時間帯のズレ、睡眠時間の長さが2週間で大きく変動していきます。

 例えば、平日は深夜の午前1時に寝て、朝は午前6時に起きる生活を送る人がいます。ただ金曜日や土曜日は午前4時まで起きていて、翌日は昼過ぎまで寝ている。計算すると平日と休日の時差ボケは5.5時間ということになります。これはインドの先くらいまで旅行して、また週末終わったら戻って来るのと同じことなのです。毎日少しずつ体に負荷がかかっているのです。

 「社会的ジェットラグ」は最近10年間の治験で、生活習慣病のリスクが高くなるとことが証明されています。食欲を増進させる働きがあるグレリンの上昇、糖尿病の発症につながるインスリン抵抗性の増大。これだけではありません。肥満度を示すBMI値が増えるメタボリックシンドローム、コレステロール値の上昇、認知機能の低下、抑うつ気分なり、不安が高まる気分障害と様々な健康リスクに陥る危険性があるのです。

 ではどのような方法でこの「社会的ジェットラグ」から脱却できるのか。次回以降に説明させて頂きます。


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[文/構成:ココカラネクスト編集部]

三島 和夫(みしま・かずお)


国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所・精神生理研究部 部長

日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。社会保障審議会統計分科会専門委員、JAXA宇宙医学研究シナリオワーキンググループ委員、厚生労働省国民健康・栄養調査企画解析委員、東京都健康推進プラン21推進会議中間評価部会委員など。

これまでに、睡眠薬の適正使用と休薬のための診療ガイドライン、睡眠障害治療薬の臨床試験ガイドライン(治験ガイドライン)を作成した。今年度から「向精神薬の適正使用ガイドライン」に関する厚生労働科学研究班の主任研究者を務めている。